3月29日「風をよむ ~スタグフレーション~」
人通りの絶えた町並み…。
全米の感染者の4割以上を占めるニューヨーク州では、事実上の外出制限令が出され、住民のほとんどが自宅で過ごすことを余儀なくされています。
トランプ大統領「経済がひどい状態だと、それで自殺者も出てくるだろう。その死者数はおそらく…いや確実に、このウイルスによる死者数よりもずっと多くなるだろう。我々には責任がある。二重の責務がある」
新型コロナウイルスの感染者が急増するアメリカ。
全米50州のうち、およそ3分の1の州で外出制限令が出され、その結果、店舗が閉鎖、職を追われる人も…
解雇された労働者「今の状況にどう対処すればいいのか、今後何に期待していいのかも分からない…」
アメリカのFRB=連邦準備制度理事会を構成するセントルイス連邦準備銀行の総裁は、失業率が現在の3.5%から30%まで悪化する可能性を指摘。
こうした事態に、トランプ政権は過去最大、2兆2000億ドル=およそ237兆円規模の経済対策法を成立させました。
さらに、アメリカ以外でも・・・
イギリス・ジョンソン首相「私は検査を受け陽性でした。隔離状態で仕事をしています・・・」
ジョンソン首相の感染が判明したイギリスでは、23日から国民の外出を大幅に制限。
飲食店などに対しても、持ち帰り用サービスを除き、速やかに休業するよう要請したのです。
こうした状況に対し、イギリス政府は総額300億ポンド=およそ4兆550億円の新型コロナウイルス対策を発表。
またドイツでも、総額7500億ユーロ=およそ90兆円の経済対策を発表しています。
そうした中、日本では・・・
日本百貨店協会理事「今回のウィルス問題は、リーマンショックや東日本大震災を超える大逆風と考えています」
3月の百貨店の売り上げ高は、一部加盟企業への聞き取りで前年比40%の減少。
このまま推移すれば過去最大の落ち込みになるといいます。
またトヨタ自動車は、受注の落ち込みなどから国内5つの工場の7つの生産ラインを来月3日から最大9日間、一時停止すると発表。
ホンダも部品供給の遅れから、埼玉県狭山市の工場を来月中旬に2日間、生産を一時停止するとしています。
日銀・黒田総裁「新型コロナ拡大の影響を踏まえ、金融緩和の強化を決定した」
こうした中、日銀は株式市場を下支えするため、当面、上場投資信託の買い入れ額を、今の倍の、年12兆円に増やす追加の金融緩和を決定。
政府与党も、所得制限を付けた上で、国民に現金給付を行うことを検討するなど、最大規模の緊急経済対策を実施するとしました。
自国経済を支えようと必死の対応に追われる世界各国。
26日開かれたG20=主要20か国の首脳によるテレビ電話会議でも、5兆ドル=およそ550兆円を超える経済財政措置をとるとしたのです。
ところが、今、世界各国が行っている、ばく大な額のお金の投入に対して懸念の声が上がっています。
「コロナウイルスが過ぎ去ったあと、“スタグフレーション”が心配だ」(19日・米CNBC)
「このような状況下での需要刺激策は“スタグフレーション”につながってしまう可能性もある」(17日・英ガーディアン)
メディアが指摘する「スタグフレーション」。
一体何なのでしょう?
今、世界各国が行っている過剰ともとれる財政政策に対して、“スタグフレーション”の発生を危惧する声が挙がっています。
“スタグフレーション”とは、「不況下で起こるインフレ」のこと。
不況下では需要が落ち込みますが、モノの供給がそれ以上に落ち込んだ場合、物価が上昇することをいうのです。
代表的な例として、1970年代のオイルショックが挙げられ、世界同時不況の中、先進国は軒並み2ケタ台の率の物価上昇に見舞われました。
こうした“スタグフレーション”の可能性について専門家は・・・
帝京大学 宿輪純一教授「この様な状況での金融緩和は『緊急時の輸血』のような効果がある。ただし今、製品の分野、工業用品の分野で部品不足になっています。不景気でお金が大量に金融緩和で供給されていて、しかもモノが供給されない。この2つの状況があるときに、世界的にスタグフレーションのリスクが高まると思います」
お金が大量に供給される中で、モノの生産が滞った時に起きるとされるスタグフレーション。
実際、今回の感染拡大で、世界の工場・中国による部品供給にブレーキがかかり、各国の生産活動は大幅に停滞。
お金がありながらモノがない、品不足の状態に、世界各地でパニック買いも発生しています。
今後、コロナウィルスの感染拡大によって世界経済はどうなっていくのか。まさに予断を許さない状況です。