2019/5/5 風をよむ「令和の“国力” 」
●経済・政治・外交・技術から考える令和
●今後の国力はどうなっていくのか
●試される私たち日本人の智恵
新たに幕開けした「令和」の時代。
日本中が祝賀ムード一色に包まれました。
この新たな時代は、「平成」が残した課題と、どう向き合っていけばいいのでしょうか…
平成の30年間、バブル崩壊、リーマンショックと激しい波に翻弄された日本経済。その今後を考える時、思わず不安を覚えるデータがあります。
平成元年、世界の企業の株式時価総額トップ50のうち、32社が日本企業だったのに対し、平成30年は、トヨタ自動車1社のみ。こうした現状を寺島実郎さんは…
寺島実郎さん「平成がスタートした頃、世界に冠たる工業生産力をリードする製造業の企業群を育てたことは確かだった。ところが、インターネットの登場をテコ にして、新しい企業群が生まれてきた。 世界の流れが変わる中で日本は 『工業生産力の優等生』としての枠組みから出られなかった」
さらに今後を不安視させるのは、急激な人口減少。日本の人口は「令和35年」、2053年には1億人を割り込むと予想されるなど、「国力」の低下が懸念されます。
そこから脱する鍵は「アジア」だと、寺島さんは言います。
寺島実郎さん「多数のアジアの人を引き込んで、物流、人流、お金の流れもそうだと思います、日本という国の『活力』を持たせていかなくてはならない。アジアのダイナミズムをどれだけ賢く吸収して日本という国を発展させていくのか、令和に変わった日本の大きな課題になってきている」
かたや「政治」に目を転じると…
小泉「聖域なき構造改革に取り組みます!」
大胆な規制緩和や選挙制度改革が行われた平成の時代。この間の政治に危機感を持つのは、田中秀征さんです。
田中秀征さん「平成を一言で言えと言われると、残念ながら『停滞の時代』。バブルの後始末とかに手間取っていた間に停滞した。それをさらに加速させたのが『小選挙区制』。自分が属している所の指導者にモノを言える政治家がいなくなっている。そうすると政策論争がなくなるんですよ。
忖度ばかりする、これは全く劣化の極致」
政治家の劣化を強く訴える田中さん。これからの時代に日本の政治が果たすべき役割については…
田中秀征さん「日本がなかったら、世界が成り立たないというくらいの信頼感。そういう必要とされる国になる。それは軍事的に政治的に大きくなることでも、強くなることとも、ちょっと違う。最後に頼れる国、知恵を出せる国、そこに国力を求めていく。そういう方向に軌道を敷いていくのが、この『令和の時代』だと思う」
しかし、こうした日本の道筋には、大きな懸念も…
トランプ「あの勝利の日を覚えてる?今も、アメリカファーストを望んでいるでしょ?」
平成の時代、世界では戦争や内戦が続き、湾岸戦争やイラク戦争では、日本外交は「アメリカ追随」といった批判にさらされます。藪中三十二さんは、そこからの変化を訴えます。
藪中三十二さん「令和の時代。今までと同じように惰性で、アメリカは大丈夫だよねと、頼めば良いよねという時代ではなくなってきたという認識は、はっきり持たなきゃいけない」
背景にあるのは、「アメリカファースト」を掲げるアメリカの変質。「自国第一主義」の台頭です。
藪中三十二さん「いつもアメリカの言いなりではないんだと。日本っていうのはこういう風に平和を創り上げていくんだと、世界中にある『日本の信頼力』をベースに、きっちりしたメッセージを発信する。平和を作る外交力。そういう格好で日本の外交を進めていけば、これは大きなチャンスだと思います」
そして平成の時代に進んだIT革命。さらにAI=人工知能の進化によって、今後私たちの仕事の多くが奪われるのではという不安もあります。
こうした「令和」の時代について、AI研究の第一人者、新井紀子さんは、
新井紀子さん「昭和、平成の時代に築き上げてきた『働き方』というのが根底から覆っていく。『AIに出来ないことが出来る人』は、引く手あまたになるんだけど『AIに出来るようなことしか出来ない人』は、なかなか職に就けない。その格差が広がる社会になることが、令和の時代の一番大きな課題」
テクノロジーが生み出す“新たな格差”を前に、新井さんは…
新井紀子さん 「日本の人口が減っている中で、国力をあげていく可能性というのは『人材の質』、量ではなくて質にかかっている。人材育成とかそういうことができないと、デジタル時代を日本がどうやって迎えれば良いのか、誰も見通しが立たない」
令和の時代の新たな課題に、どう向き合って行けばいいのか。日本人の「知恵」が試されています。