東京都モニタリング会議~専門家の判断は?(7月15日)
東京都では7月15日、新型コロナウイルスについての感染状況などを評価するモニタリング会議が開かれました。
専門家からは、感染状況について、4段階の中で最も深刻な「感染が拡大している」との認識が示されました。
モニタリング会議に出席した国立国際医療研究センターの大曲センター長と杏林大学の山口教授の発言を中心にまとめました。
以下 国立国際医療研究センター 大曲 貴夫 国際感染症センター長の発言
感染状況について
(東京都のモニタリング指標)
実数と増加比が含まれるが、感染状況をモニタリングする①②③の項目について、先週の同じ値と比べても、いずれも上がってきていることから、「感染が拡大している」と判断。
おさえるべきポイント
いわゆる第1波(3月から緊急事態宣言の解除までの時期)と、今回は違うものだということを明確にしておくことが重要。
年齢層、重症度など、患者の特徴にかなり違いがある。
新規陽性者数は先週と比較すると1.5倍。これは緊急事態宣言下での最大値。
年齢構成
第1波(3月から緊急事態宣言解除まで)と7月12日の年齢構成が重要である。
60代以上が全体の約1割を占めていることや、10歳未満の増加が見られるなど、年齢層が広がっているといえる。
感染経路について
接待を伴う飲食店等での感染が多かったのは事実だが、
・施設の中での感染
・同居している家族から感染
・職場での職域での感染
・個人での会食レベルでの感染
・劇場での感染
など、日常生活の場で感染している。また、高齢者やハイリスク者への家族内感染も見られる。
感染が広がっている地域について
地域に関しても広がりが見られ、これまでは新宿といったところがいわれてきたが、中野区、世田谷区、港区、豊島区、あるいは隣接する板橋区、杉並区、練馬区、渋谷区といった地域まで広がりが見られる。60代以上の発生地域は、ほぼ都内全域。
介護施設やデイケアの場所、そして今回の特徴は、幼稚園や保育園といった、多くの人を収容する施設での感染が見られている点。施設内での感染防止対策の必要性を示している。
感染経路不明者について
感染経路がわからない人は、7月13日までの7日間平均で77名。前の週の2倍となった。週に2倍になっているということで、これを4週間継続すると、約16倍。一日あたりにすると、約1200人となる。これがさらに4週間続くと、現在の256倍になる。
感染状況を総合的にみて
前回の流行と今回の流行はだいぶ様相が違うということで、分析については大変な議論になった。若者が多く、重症例が少ないというところで、違う波を見ているという印象が強かった。
単純に数でとらえると、一番上の段階、「感染が拡大している」と言わざるを得ない。ただ、今後の対策を考える上でも、中身を考えていくことが非常に重要。
以下 杏林大学医学部救急医学教室 山口 芳裕 主任教授の発言
医療提供体制について
医療提供体制については、重症者が横ばいで推移しているため、前の週と同じ上から2段階目の「体制強化が必要」としました。
(東京都のモニタリング指標)
検査の陽性率について
検査の陽性率は3週連続で増加。また検査数も前週に比べて増加している。一般的に検査数が増加すると陽性率が低下する傾向が見られるのが普通だが、今回陽性率の増加が続いた背景には
・陽性患者が増加している
・非常に陽性率の高い特定の地域や対象に対して積極的な検査が行われた
この2つの要因が考えられる。
入院患者数について
医療提供体制の中では、今週最も重要な項目。入院患者数は先週と比べて、約2倍に増加していまして、東京都から医療機関への実質的な「医療アラート」として当初出されたレベル1、1000床の確保病床では対応できない状況に至っている。
また入院調整本部への保健所からの入院調整件数要請依頼も、先週に比べて3倍になり、7月12日には90件を超えた。これは保健所が管内で収容先を確保するのが難しくなり、都に依頼している状況。都が入院医療機関に対して、要請を依頼するが、この依頼の電話がなかなか一回ではつながらない。平均して1.8回、2回近くを電話をしないと収容先が見つからない状況となっている。
重症患者数について
重症患者数は横ばいで推移しているが、重症化するリスクの高い年齢層に患者発生が広がって、地域的な広がりがあるということで非常に警戒している。第1波の場合でも、入院患者数の増加から約一週間遅れて重症患者数も増加に転じてきていることもあり、現時点の横ばいをもって安心はできない。
また、圧倒的に入院患者は若い軽症者が多いが、医療機関にとっては軽症でも重症でもかかる手間は同じ。軽症者が病床を次々に埋めることで、結果的に重症度の高い患者の収容に苦慮するという事態を非常に心配している。
実際、第1波の場合には最も重症な患者の収容依頼をかけたときに救命センターが引き受ける率が、1回の電話では50%くらいまで低下したという現象があった。入院患者が増加すると、より重症な患者の受け入れそのものに支障をきたす事態が起こるのではないかということが危惧される。
医療提供体制を総合的にみて
「体制強化が必要」とする評価。
放っておいても感染は広がるが、医療は放っておいてベッドが増えることはない。
実際にベッドを、都が医療機関に対し出している実質的な「医療アラート」のレベル1の1000床から、3000床近くのレベル2まで広げているが、これはすでに6月30日にあらかじめ準備をお願いし、7月7日に通知をして実際に今日から体制をとってもらえるように各医療機関にお願いしている。しかし現実には約1500ほどの確保状況になっている。
私の心情的にはもっと厳しいことを知事には申し上げたい気持ちだが、委員の専門家のモニタリングのコメントを総括して、この判断。
大曲センター長は・・・
国立国際医療研究センターの大曲 貴夫国際感染症センター長は会議の中で、行動や営業自粛の議論になりがちだが、どういう状況でどういう対策をするべきか、ということを明確にすることで、自粛要請にいたらないようにすることが重要だと指摘しました。また以下のように語りました。
「事業者もある意味ゼロからのスタートですので、事業者の方々の感染対策のレベル、質をあげていくための支援ということは、非常に大事ではないかと思っています。人と人との距離の取り方や、手洗いのタイミング、なぜマスクをするのか、そういう根本的な意味が伝わらないと、原則に基づいた確実な(感染症)対策っていうのが近づきにくいのかなとすごく思いました。もう1点は、やはり利用される方々のモラルといいますか、批判意識あるいは実際に感染の防止につながるような行動をもたらすような方策も重要ではないかと思っています」