2020年 米大統領が選ばれるまで
その長さ、過酷さからマラソンにも例えられるアメリカ大統領選挙。共和党と民主党の2大政党の候補が4年に一度、将来の方向性を国民に問う一大政治イベントです。50の州で構成される「連邦」としての表情を覗かせる複雑な制度ですが、これが分かると「マラソン観戦」の醍醐味も増えるかもしれません。ということで、世界最高の権力者とも言われる「President of the United States of America」の、選ばれ方です。
まず2つのステップがあります。
■ステップ1:共和党・民主党それぞれが、最終的な候補者1人を決める 「予備選・党員集会」
■ステップ2:2党の候補者が争う「本選挙」
■ステップ1:「予備選・党員集会」
党内の複数の候補者が、全米50州や自治領などで、予備選や党員集会によって、その地域の「代議員」を獲得していくプロセスです。有権者が投票する「予備選」か、話し合いなどによって決める「党員集会」かは、州によって異なります。また予備選や党員集会の方法も、そして、その州の「代議員」がどう配分されるかも州により異なります。
民主党の場合、過去の選挙実績などに応じて5000人近い代議員が全米の各州に配分されています。例えば、アイオワ州は49人の代議員がいます。アイオワ州では1700近い「党員集会」が開かれますが、それぞれが支持する候補を決めます。そして人口などに応じた係数が反映され、49人の代議員が各候補に配分されるわけです。極めて複雑で、アメリカの大手メディアも4年ごとに「どうやって州の代議員を配分するの?」という特集を組むほどですが、これがアメリカという民主主義国家の「草の根」なのです。
(※余計混乱するかもしれませんが・・・49人のうち8人はアイオワ州の民主党幹部5人と下院議員3人であり、この人たちはそれぞれの判断で、候補に投票できる仕組みです)
いずれにせよ候補者は、投票や話し合いを通じて、より多くの代議員獲得を目指します。
一連のイベントは、2月3日の中部アイオワ州「党員集会」、2月11日の北東部ニューハンプシャー州「予備選」から始まり、6月まで続き、候補者は獲得代議員を積み上げていきます。そして、特に3月3日の火曜日は、西部カリフォルニア州など代議員が多い州の予備選が予定されていて、「スーパーチューズデー」と呼ばれています。指名争いの「大きな節目」です。民主党は上位5人ほどの候補による大接戦が続いており、スーパーチューズデーで、果たして方向性が見えるのか、まだ分からないというのも実情です。
最終的に、全米の過半数の「代議員」を獲得した候補者が、党の候補となります。正式には夏の全国党大会で、各州の代議員が集まり指名されることになります。(つまり5000人近くが一堂に会します)
共和党では現職のトランプ大統領が党内で圧倒的な支持を集めていることから、予備選・党員集会を取りやめる州もあります。
(過半数を獲得する候補者がいない場合、話し合いなどによる指名の可能性もあります)
⇧「全米州議会議員連盟」が作成した各州の予備選・党員集会の日程(英語)
■ステップ2:「本選挙」
共和党、民主党の候補者が、全米50州と首都のワシントン(コロンビア特別区)に割り当てられた538人の「選挙人」の獲得を争う選挙です。考え方は似ていますが、前出の「代議員」はあくまで私的な"党“のルール。こちらはアメリカ合衆国の公的な"国”のルールです。
今回の選挙は11月3日に予定されていて、この日、過半数を超える270人の「選挙人」を獲得した候補者が選挙に勝利し、アメリカ大統領となります。
各州の「選挙人」の数は、州の人口に比例する各州の連邦下院議員の数と、どの州も2人いる上院議員の数の合計です。大多数の州では、投票で1票でも上回った候補者が全ての「選挙人」を総取りします。このため、人口が多く(=選挙人が多い)党派性がはっきりしていない州を、どちらの党の候補が制するのかが重要なポイントです。