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コロナで増え続ける貧困

■コロナの解雇・雇い止めが8万人を超える

新規感染者数の高止まりが続いている新型コロナウイルスは、雇用に大きな影響をもたらしています。厚生労働省によりますと、新型コロナの影響による解雇や雇い止めは、去年の1月末から今月6日までの時点で、見込みも含めると8万121人にのぼるということです。去年5月に1万人を超えたあと、7月に3万人、11月には7万人に達しました。

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この集計は全国のハローワークなどで把握している人数にとどまっているため、実際のコロナによる雇用への影響はさらに深刻とみられています。

■解雇・雇い止め・派遣切りの違い

〇解雇 「一方的に使用者が契約期間の途中に契約を解除すること」
〇雇い止め 「契約期間の満了を持って、契約を更新しないこと」
〇派遣切り 「国の定義では、存在しない。その言葉を使う人によって解雇・雇い止め、いずれの意味も含まれる場合がある」

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■1回目の緊急事態宣言で職を失った30代男性は

私が取材した当時33歳の男性は、飲食店でアルバイトをしていましたが、緊急事態宣言が出された去年4月、働いていた飲食店がお店を閉めることになり、職を失いました。住む場所もなく、ネットカフェを転々としていましたが、所持金がなくなり、とうとう路上生活を経験。この男性は1週間ほど公園で生活をしました。

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男性は、支援団体の助けもあり、現在はアパートを借りて暮らしています。ただ、食事も節約のために1日1食、部屋にある冷蔵庫の中もほぼ空っぽ、服も限られたものしかないなど、ギリギリの生活を送っています。

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■所持金300円 SOSを訴えた20代男性は

当時27歳の男性は、元々「派遣社員」としてパソコン工場や警備会社で働いていましたが、去年4月、新型コロナの影響で職を失いました。勤務先の寮も出ることになり、路上生活を経験。所持金が300円になり、これ以上は生きていけないと追い詰められたところで、支援団体に助けを求めました。

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■生活困窮者の支援を続ける瀬戸さんが見た現状は

こうした人たちの支援を行っているのは反貧困ネットワークの事務局長・瀬戸大作さんです。瀬戸さんは、経済的に困窮する人を支援する活動を長年続けていて、いつ来るかわからないSOSに対応する日々を送っています。

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瀬戸さんは、日本の現状について「コロナで、貧困の人たちが生まれたのではなく、貧困の問題が浮き彫りになった」と話し、「格差は広がっていると思う」と厳しい状況を指摘します。明日も暮らすことができないというSOSを訴える人に対しては、その日を凌ぐための金銭的な支援も行っていますが、それも「一時的なつなぎにしかならない」と、苦しい胸の内を明かしました。根本的な解決には、まだまだ時間がかかるのが現状です。

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■編集後記

2人の男性に共通していたのは、周囲との接点がなくなっていることでした。仕事がなくなり、お金がなくなったことで携帯電話は止まり、それを相談できる人もいません。このことが、貧しい生活から抜け出せない現状に繋がっているように感じました。
また、取材の中で30代男性が話した「普通の生活がしたい」という言葉が印象に残っています。少しでも早くコロナウイルスの感染が収束し、「普通の日常」が戻ってほしいと強く思います。


デジタル編集部 樋口翼

2015年入社。報道局社会部に配属され、警視庁・東京消防庁担当、神奈川担当を経て、2020年7月からデジタル編集部へ。ニュースを伝える新たな形を日々模索しています。