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新型コロナウイルス~離島・伊豆大島に広がった複雑な思い(2020年5月緊急事態宣言解除直後の取材)

5月25日に緊急事態宣言が解除となり、県をまたいでの移動も可能になりましたが、東京都では7月に入って以降、再び感染者が増えている状況です。

緊急事態宣言が解除された直後の5月半ば、感染者がゼロの東京都の離島・伊豆大島では島民たちは複雑な思いを抱えていました。

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伊豆大島をはじめとする離島には、コロナウイルス患者を受け入れる医療体制が整っていません。自然が豊かで、人が密集しているわけではありませんが、高齢者が多く、狭い生活圏で人と接触する機会はいくつもあります。

観光客が来てくれないと経済は大ダメージを受ける、でも大島で感染者が出たら、あっという間にたくさんの人が感染するのではないか。未知のウイルスに対する島の人たちの複雑な思いを聞きました。(2020年5月中旬取材)

※6月18日に「来島自粛」要請は解除されています
※伊豆大島では現在も感染者はゼロです

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島民はどう感じているのか

■大島でゲストハウス「青とサイダー」を経営している吉本浩二(38)さんは

2019年4月にオープンしたゲストハウスですが、9月の台風15号で大きな被害を受け休業。2020年4月に再オープンを予定していましたが、コロナウイルスの影響で再び休業を余儀なくされました。緊急事態宣言が解除された今も、6月末まで島外からのお客さんは取らないと決めています。

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吉本さんは、「早く営業したい」と話しますが、新型コロナウイルスへの不安もあるといいます。

休業していて、今はまだ耐えられているけど、これから夏の繁忙期になるときつい。観光客には来てほしいけど、あまり接触したくないと思ってしまう。緊急事態宣言が出ている間も、観光客をちらほら見かけたが、マスクをしていなかった。島に来たらマスクをはずしたくなる気持ちも分からなくないが怖い。できるだけ接触したくない。

うちはお客さんをとっていないが、お客さんをとっている宿もある。感染者が出たらどうするのか?それも踏まえた上で、苦肉の策かもしれないと思うと複雑。
自分自身は1日に10~20回手洗い、マスクをするなどできる限り対応しているし、感染しても自分が重症化することはないと思うが家族にうつしたら、という心配がある。糖尿病を患っている80歳の母が近所に暮らしているので、感染したら命の危険があるかもしれない。喘息の子供も感染したら、と不安。

大島では感染者はでていない。熱などコロナの疑われる症状がある人はヘリコプターで都内の病院に運ばれる。これまで夜にヘリの音を聞くことはあまりなかったが、コロナが広がりだしてからは夜にヘリが飛んでいる。ということは大島でも疑われる人がいたのではないか。

今後のゲストハウスの見通しについては・・・

7月から営業再開のつもりだが、状況をみて検討する。すでに7月分の予約が入ってきているが、感染者がまた増えたら事情を説明して、キャンセルするかもしれない。

青とサイダーのHPはこちら


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■吉本浩二さんの母、初子さん(80)

血圧が高く薬を飲んでいる。糖尿病もある。老人ホームに入所しているお父さん(85)のことが心配。老人ホームで感染者がでたら大変。

初子さんの旦那さんは脳梗塞をわずらい、初子さんだけでは介護が難しいことから、老人ホームに入所することになったといいます。コロナの前は週5日、旦那さんと面会していたといいますが、5月中旬にお話を伺った際は、10日に1回ほどだといいます。自身が感染することについて聞いてみると・・・

自分の身体がどうこうより、孫やお父さんにうつすわけにはいかない。正直いって、大島で最初の感染者になりたくない。大島には隔離する施設もないので、向こう(都内)に送るしかないが、受け入れ先など、力があるのか・・・。お父さんより先に逝くわけにはいかないので、家にいて、大島で換気をしても意味があるのかわからないが、玄関や窓を開けて換気をして、絶対に感染しないようにがんばるしかない。


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■大島医療センターの事務職員として働く男性(41)

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大島唯一の診療所で事務職員として働く男性(41)は、観光業の人には申し訳ないけど、もうしばらく観光を自粛してほしいといいます。(妻、息子、娘の4人家族。)

感染対策や在宅勤務、学校の再開について、島の中でも考え方は分かれている。マスクの着用を徹底している人もいれば、していない人もいる。会話するときに話しにくいからと、マスクをはずしてしまう人もいる。こういう状況を見ていると島でコロナ感染者が発生したら一気に広がってしまうのではないか。

島はまだまだこれから気をつけていかないといけない。国によって緊急事態宣言が解除されても、都にはしばらく継続してもらいたい。withコロナの考え方を説明して、マスクや手指消毒はルーティーンにし、ソーシャルディスタンスも可能な限り守る、不要不急の離島はしない。観光業の人には申し訳ないが、6月いっぱいは観光を自粛してほしい。町からも声をあげてもらいたい。

特別定額給付金の申請用紙が郵送されて、さっそく役場には申請方法がわからない高齢者が押し寄せて、3密が発生してしまった。

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■伊豆大島・大島町議会議員の清水光一さん

大島の町議として活動している清水さん。SNS上でハッシュタグを使った発信をするなど、自粛を呼びかけてきました。

人口約7400人のわが大島町で、万が一にもコロナ感染者が発生したとすれば、医療崩壊、経済崩壊、地域コミュニティ崩壊の、3つの崩壊が起こり、町長の言葉をお借りするならば、この島は沈んでしまいます。

幸いなことに我が大島町は今日まで、町民・観光商工事業者・大島町・大島支庁の行政職員の皆様方のご協力により、コロナウイルス感染者ゼロを更新しております。このことは、何といっても三辻町長が大島町感染症対策本部を立ち上げ、本部長として「大島からコロナウイルス感染による死者を一人も出さない!島民の命を守り抜く!大島を守り抜く!」と力強いリーダーシップを発揮して頂き「観光客来島自粛要請の宣言」という大島町のリーダーとして政治決断をされ、この未曾有のコロナ危機を乗り越える為に日夜、町職員の皆様と共に、大島町独自のコロナ対策を協議・実行し続けて頂いたおかげだ」と考えています。

島内でもお弁当のテイクアウトを始める飲食店が増えたことから、テイクアウトできる飲食店のマップ作りを仲間に呼びかけ

テイクアウトマップ

ハッシュタグでの呼びかけも行った清水さん。

ハッシュタグ

#伊豆大島を食べよう
#がんばんべえ伊豆大島
#島人は島にいんべえよ

など、島の方言でコロナ対策を呼びかけました。

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■島内の飲食店で働く女性は

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自粛期間中、お弁当やSNSで話題のフルーツサンドを作るなど、工夫をしながらしのいでいるといいます。

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うちのお店はどちらかというと地元のお客さんが多いので、もう少し様子をみたほうがいいんじゃないかと思っている。怖さのほうが大きい。宿をやっている人は早く再開してほしいと思う。

島外から人が来るようになることははっきり言って怖い。都内に住んでいる人にとっては当たり前の生活なのかもしれないが、こういう田舎に感染していないと言い切れない人がたくさん来ることは非常に怖い。娘を中学に行かせて大丈夫なのか?という不安もある。でも生活もある・・・。

観光客など島外からの人を受け入れることだけではなく、学校が再開されることについても不安があったようです。

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増山顔3

(伊豆大島 裏砂漠にて)

デジタル編集部 増山 智子

高校卒業までの18年間、伊豆大島で育ちました。島内では当たり前なことでも、島外の人には想像もつかないことだと、今回改めて実感しました。大島にはコンビニすらありません。医療施設も小さな医療センターしかなく、大きな病気やけがをした場合にはヘリコプターで本土の病院に運ばれます。家族と夕食時に「あ、ヘリの音がする。誰か運ばれたかな。」という会話をすることもありました。

離島出身の人にとって、故郷の島はとても大切なものです。島外の人にはなかなか理解できない感情かもしれないのですが、島民がただ拒絶しているだけではなく、「島を守りたい」と思っているということを島外の人にも知っていただけたらなと思います。