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認知・理想・現実・帰属が導く不満と意欲

仕事において発生した出来事に対して個人が不満を感じるのか、意欲を高めるのかは人それぞれです。

同じ出来事があったとしても、それに対して強く不満を感じる人もいれば、まったく不満を感じないどころかニコニコしながら難題に対して意欲をみなぎらせる人もいます。実際、過去の経験を思い起こすと、他者が全く反応しないような些細な出来事でも不満を抱き、烈火の如く怒る人もいれば、他者が頭を抱えるような難題に対しても嬉々として笑顔で取り組む人もいました。また、このような両極端な例だけではなく、人の反応は多様です。

そこで、不満に関する個人差を生み出す要素を認知・理想・現実・帰属に分解し、整理してみます。

認知

認知

個人が職場で発生した出来事をどのように解釈するかによって、その出来事の意味や影響が変わります。たとえば、同じ状況でも人によってポジティブにもネガティブにも解釈されます。

基本的な物事の認識について楽観的で他者や環境に対して好意的な解釈をする人もいれば、悲観的で他者や環境に対して攻撃的な解釈をする人もいます。また、基本的な考え方とは別に個人的にこだわっている価値観に関わる領域の出来事に対しては普段よりも敏感に反応し、偏った解釈をすることもあります。それ以外にも、その出来事に関してどれくらいの前提情報を持っているのか、また、仮に前提情報が不足している場合も他者が抱える前提に思いを巡らせることができるかどうかなども認知に影響を与えます。

理想

理想

個人が抱く「本来はこうあるべき」という理想が高いほど、理想と現実とのギャップが大きくなり、不満の原因になる可能性があります。一方、理想が現実に近い場合、ギャップが小さくなり、不満が生じにくくなります。ただし、理想と現実のギャップは必ずしも不満につながるとは限りません。理想とのギャップを改善への好機として捉え、難題を楽しむ人もいて、そういった人にとってはギャップの大きさはむしろ意欲になることもあります。

理想の高低について、例えば、他者に完璧を求め、自分が求める理想から少しでも不足があれば不満を持つ人もいます。100点を求めていて、相手が30点の位置にいる場合、100点になるまでは35点になろうが、80点になろうが許せないような考えです。「なぜこの人は100点を取れないのか!努力しない相手が悪い」というような考えをする感じです。
一方で、人は成長が可能であり、誰もが完璧というわけではないという考えから、他者のありのままの現状を受け入れ、そこから一歩でも前に進めているのなら、その進展を共に喜ぶような人もいます。先程の例で考えると30点から35点への変化を喜ぶ、ということになります。「この人の現状は30点かな?ここから5点でもいいから前に進むためにはどんな協力をできたらいいかな?」というような考えをする感じです。

現実

現実

発生した出来事をどのように認識し、それが個人にとってどの程度の現実であるかと捉えることで、理想とのギャップが測定されます。現実の捉え方は、認知の影響を受けます。そして認知は個人の経験やそれをもとにした価値観をもとに行われます。

人はすべての出来事を事実通りに解釈できるとは限りません。事実通りに解釈をすれば理想とのギャップはわずかであるような出来事であっても、偏って悲観的に解釈することで実態以上に現実への評価を低く捉え、理想とのギャップを大きく感じる可能性があります。

例えば、Aさんが数日休んだとして、普段からAさんに対してネガティブに捉えているBさんが「Aさんはサボっていてやる気がない」と解釈しているが、実際はAさんは単に体調不良で休んでいて、やる気の有無とは特に関係ないようなケースは、現実に対する解釈が実態に即していないケースです。

帰属

帰属

帰属とは、ある出来事や結果の原因をどこに求めるかという考え方を指します。例えば、何かが起こったときに、その原因を自分自身に帰属させる(自責)か、それとも他人や環境に帰属させる(他責)かは、人それぞれです。

理想と現実のギャップに対して、その原因を他者や環境に求めるか、それとも自分の責任と捉えるかによって、不満が生じるか、あるいは前向きな意欲が生じるかが決まります。

ギャップの原因を他者や環境に帰属させた場合、変化に向けた取り組みが生まれないため、たまたま他者や環境が変化しない限り不満の原因は解消されません。結果として不満が増幅され、ネガティブな感情も増幅されやすくなります。

逆にギャップの原因を自分の責任として捉えた場合、そのギャップを埋めるための行動意欲が高まり、積極的に問題解決に取り組む姿勢が生まれます。また、実際に変化に向けて行動をすることになるため、ギャップが小さくなる可能性があります。

補足

現時点で他責の傾向が強かったり、不満が多い状態の人を責める意図はありません。

よくあるケースとして、過去に自分ではどうにもできない環境による苦しい経験をした積み重ねがあったり、ミスや失敗に対して叱責をするような環境での経験を積み重ねることによって防衛的になり、攻撃が及ばないように自責の範囲を狭めるということはありがちです。それは環境の問題で本人が悪いわけではありません。

そして、現状は固定ではなく、変化が可能です。物事の捉え方が実態以上に悲観的な方向に偏っている場合、認知行動療法などの取り組みで少しずつ物事の捉え方を変化させることができます。

他責な状態についても小さな出来事からでも環境や他者が関わる問題に関わり、ポジティブな変化を起こす経験を積み重ねることで、自分が関与することで周囲に変化を与えられるという成功体験が積み重なり、少しずつ自分ごとで捉えることができる範囲が広がっていきます。その意味で、強みを磨き続けることは強みを用いて他者に貢献する機会を増やしやすく、結果的に成功体験が積みやすくする有効な手段です。

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