読書記録「[実践]ストーリーテリング」
ビジネスのみならず、すべての人間の活動はコミュニケーションを土台にする。その効果を高めるためのポイントがうまく説明された良書であり、おすすめ。
ストーリーには、「心」がある。感情と想いがある
ストーリーには、「リズム」がある。テンポと抑揚がある
ストーリーには、「イメージ」がある。景色と意味がある
ストーリーには、「世界観」がある。価値と特徴がある。
超級は、「説得」でもなく「納得」でもなく、「共感」してもらおうとイメージを伝える
聴きたい人に語る、聴きたいテーマを語る、聴きたくなる環境をつくる(居酒屋とおなじような環境)
相手軸で考える。「伝える」でなく「伝わる」
売れるブランドや商品にはストーリー・世界観がある
超級は、相手の心情や立場を「置き去り」にするのでなく、「推し量る」のでなく、「リサーチ」してから話す
5W1Hの言い換えだが、5Pのフレームワーク。
「何を」(Purpose)、「誰に」(People)、「誰が」(Presenter)、「どこで」(Place)、「どんな」(Premise、テーマを一文にするとどうなるか)
コンサルタントの仕事の仕方は、以下
・圧倒的なデータと情報の収集
・データ・情報をわかりやすく整理して見せる
・凝縮してコンセプト化
・「物語」と「論理」のゴールデンバランスでストーリー化
人は人の話を聞いていない、という厳然たる事実がある。このために相手軸を意識し、日ごろから相手を観察すべき。
超級は、「内容」でなく「内心」でなく、「体温」を伝えに行く。
超級は、「その場をしのげる人間」でなく、「話せば必ず聴いてもらえる人間」でもなく、「いるだけで空気を変える人間」である。
この表現は良い。
TEDのスピーチ、落語、稲川淳二の怪談が参考になる。
永守さんの日本電産が三協精機を買収したときのスピーチがこのゴールデンバランス。数字から入って物語に変える。長いが引用しておきたい。
「今日から最高顧問として参画させていただくことになりました。
今からお話し申し上げる事は単なる挨拶ではありません。ですから、非常に真剣に聞いていただきたいと思います。
トイレと水だけお借りする。それ以外は全て手弁当でやらせていただきます。昨日も日本電産から125億円と言う膨大な金額をこの会社に振り込んでおります。
全く同じモーターで、日本電産で20%儲かっているものが、三協精機では20%も損している。言い換えれば40%原価が違うわけです。40%も原価が違って勝てるものではありませんし、仮に注文を取っても1円の利益がないどころか大きな赤字を出すと言うことになっています。
仕入れコストは大体10%高いです。という事は年間売り上げ売上高1000億円のうち600億円を仕入れにしますと、60億円余分にお金を払っているということです。そして製品の販売価格は5%安い。
日本で1番安い経費の会社はトヨタ自動車です。トヨタは1億円の売り上げを上げるのに410万円しか経費を使っていません。カルロスゴーンが来る前に日産自動車は1500万円を使っていました。言い換えれば1億円の売り上げを上げるのに日産はトヨタの3倍の経費を使っていた。だから日産はつぶれかかったんですね。その後カルロス・ゴーンが来て、つい最近620万円まで下げました。
三協精機は1億円の売り上げを上げるのに1000万円の経費を使っています。
『お前なんか信用できへん。今日初めてやってきて何を偉そうなこと言ってるんや。高い壇上から大きな声を張り上げていうんじゃない』と言われるなら、それはそれで結構です。初めてお会いしてあんたを使用しますと言うのはかえっておかしい。
1年間だけ騙されたつもりで私の言うことを聞いて、行動してほしい。それで1年後にこの会社に変化がなかったら、唾をかけようが足で蹴ろうが、好きなことをやっていただいて結構です。
私は1人の天才を求めていません。1人の100歩より100人の1歩というのが私の経営方針です。みんなの力を結集してこの会社いい会社に変えていくと言うのが経営手法です。
もし『他の会社からスカウトが来てるんや。三協精機より3割良い給料出す。』そんなにいいところがあるんだったらぜひ行ってください。中途半端いけない。残るなら、徹底的にやってもらう。嫌ならやめる。しかしどうもよくわからんと会社にいるんだったら、今申し上げたように、1年間だけ騙されたつもりで行動していただきたい」