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Vtuberにおけるイベント重視の運営スタイルのメリット・デメリット

近年はVtuber市場も成長を見せ、大手や中堅だけでなく、小規模のVtuberグループや個人勢の方にもトークやライブといったイベントの案件が回ってくるようになりました。また、グループ単位でのイベントを開催するところも増えてきています。数年前と比較して明らかに変化しているという実感が1リスナーからしても感じられ、驚きと嬉しさが入り混じったような不思議な感覚です。

これらはバーチャル界全体で見ると間違いなく進歩と言えますが、果たしてイベントを重視する運営スタイルはメリットばかりなのか。それが今回のテーマです。イベントに出演できる裾野が広がったからこそ、より多くのVtuberグループがその恩恵に預かることが出来ますが、それに頼った運営は先細りになってしまうのではないかと考えます。

あくまで運営に関わったことも無い素人の意見ではありますが、よければ読んでみてください。


ファンに直接会って声を聴ける喜びは何にも代えがたい

否定的な意見から始めるのは良くないと思うので、まずはVtuberがイベントに積極的に参加することのメリットから考えていきます。

第一に思いつくのは、ファンの応援を直接受け取ることが出来るということ。配信では基本的に声(Vtuber)と文字(リスナーのコメント)のやり取りであり、本当の意味での対話ではありません。それでも十分にコミュニケーションは取れると思いますし、文字だからこその気安さなどもあると思いますが、活動している側からすると、トークイベントで直接応援の声が聴けたり、ライブイベントで文字ではないコールを聴けたりすると大きなモチベーションとなるでしょう。これこそが最大のメリットであると言えます。

イベントには当然お金が発生することが多いですが、「対価を支払ってでも自分に会いに来てくれる」ということそのものがとても嬉しいはず。ファンからの愛を感じられる出来事と言えそうです。

更なる大きな案件へのステップアップに繋がる可能性

もう1つは、イベントで一定の成果を収めれば、更に大きな案件に繋がる可能性もあること。ライブイベントにせよ、トークイベントにせよ、ファンが盛り上がっている様子は、当然、イベントを企画している方々にも見えているはず。そこから大きな舞台へとステップアップする可能性も大いにあります。

また、Vtuber側から見ると、場数を踏むことでイベントの空気感に慣れ、より良いパフォーマンスを発揮できるようになることも考えられます。特にライブイベントに関しては、経験をたくさん積むことで洗練されていき、ライブならではの盛り上げ方も覚えていけるのではないでしょうか。たくさんのイベントに出演することは、そういったメリットもあると言えるでしょう。音楽系のVtuberグループには特に重要なことかもしれません。

一方で地方格差などの問題も…

メリットもたくさんあるイベント出演ですが、デメリットも勿論あります。特に、ファン側から見ると顕著かもしれません。

まずは地方格差。イベントにはオンラインで行われるものもありますが、コロナ禍が明けた頃からはリアルイベントの方が主流になっています。リアルイベントとなると当然関東近辺で行われることが多く、地方勢にとってはおいそれと参加できるものでは無いというのが悲しい。年に数回ならばまだしも、数か月に1回のペースで乱発されると、どうしても参加するのが難しくなってしまうでしょう。ここにイベントを重視する運営スタイルのデメリットがあると考えます。

全国展開できるようなパワーがあればいいですが、それだけの規模のイベントを展開できるVtuberグループは稀。超大手に限られます。地域格差は今後のバーチャル界の課題となるかもしれません。

一方、ライブイベントに関してはリアルイベントであってもオンライン配信が行われるものもあり、まだ救いがあります。勿論、現地と全く同じ体験が出来るとは言えませんが、お手上げではないのは嬉しいです。地方勢にもまだ優しいタイプのイベントと言えるかもしれません。

果たしてファンの裾野を広げることに繋がるかどうか

次に考えたいのが、イベント出演の増加がファンの裾野を広げることに繋がるかどうかです。これに関しては、あくまで私個人の考えとして言わせてもらうと、「決してファン層を広げることには繋がらない」と思います。

そもそも、イベントへの出演・開催自体がどちらかと言うと既存のファン向けであると言え、新たなファンの獲得をそこまで重視していないというのもあるかもしれません。多くのVtuberグループ・個人Vtuberが集まるようなイベントであれば、自分の推しグループを見るついでに見たVtuberが新たな推しになるということもありますが、そこからコアなファンになるかと言うと微妙なところ。そういった目線で考えると、イベント出演を重視するのも長い目で見るとデメリットになってしまうかもしれません。

既存のファン向けであることをより印象づける同じファンによる複数買い

これは私が見かけたパターンであり、他のVtuberグループでも当てはまるか分かりませんが、とあるトークイベントにおいてチケットが売れ残り、最終日付近に同じファンが複数買いして売り切れさせるということがありました。

この行為自体の是非はさておき、ここから見えてくるのはイベント出演がやはり既存のファン向けであるということでしょう。近年イベントに出演するハードルは低くなったと思いますが、実情として、たとえチケットが売り切れたとしてもこういったファンの涙ぐましい努力が支えている結果である場合がほとんどなのかもしれません。

少数のコアファンと、大多数のライトファン

これはVtuberに限らず、ファンを相手にする商売全部に言えることだと思いますが、ファンの層というのは大多数がライトなファンであり、コアなファンは相対的に見ると少数です。その為、それを頭に入れておかないと、運営とファンの認識にズレが出てくる危険性があります。

イベントにも全部参加するようなコアなファンはどれだけ乱発されたとしても歓迎する傾向にあり、むしろ推しと直接交流する場をもっと増やしてほしいと考える人もいるかもしれないほど。そちらに目を向けてしまえば、その周りにいる大多数のライトファンはついていけなくなってしまう可能性もあります。

VtuberにはYouTubeというホームがあり、そこでの活動も同じくらい重視したいもの。運営する側としては、何が本当に求められているのかを正確に把握することが求められます。個人勢の場合は自分の意思のみで判断しなくてはならず、さらに性質的にファンとの距離感が企業勢と比較しても近めなので、より難しさが際立つかもしれませんね。

最後に

今回は、出演のハードルが下がったからこそ陥りがちなイベント重視の運営スタイルについて、メリットとデメリットを考えてきました。

Vtuber側、運営側、ファン側、それぞれにメリットがありますが、乱発されると離れるきっかけとなる可能性もあります。どこに需要があるのかを正しく推し量ることの重要性は高まっていると言えるでしょう。

どちらかと言うと否定的な立場に立っているように思われるかもしれませんが、初めにも書いた通り、個人としては嬉しい気持ちも大いにあります。バーチャル界の発展には欠かせないことだと思うので、今後もイベントという面でも広がりを見せてくれたらと思います。

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