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サンジェルマンの厚切りバタートーストセット
コーヒーは朝飲みたい
コーヒーは、朝に飲みたいものである。もちろん、仕事がひと段落ついた午後でもいい。日の沈む頃、どこに行くわけでもなく立ち寄ったカフェで注文するコーヒーも悪くない。ただ、身体がカフェインを欲しているのは、圧倒的に朝なのだ。
おそらく、アメリカ人の多くは、私と同意見だろう。アメリカに住んでいた頃は、朝の6時半ともなればスタバやダンキンドーナツをはじめとするコーヒーチェーン店が開店する。そして、その気になれば朝一番にモーニング・コーヒーを買いに行くことができたものだ。ところが日本では、どうも事情が違うらしい。コーヒーショップが開店するのは、早くても9時か10時。朝7時にコーヒーが飲みたければ、コンビニに行くか、自分で淹れるか……ということになる。
サンジェルマンというオアシス
そんな早朝のコーヒー砂漠に、私はオアシスを見つけた。サンジェルマンである。最寄駅近くのサンジェルマンは、朝7時から焼きたてのパンとコーヒーを提供してくれる。私は毎朝、このオアシスを横目にひたすら砂漠を歩き続ける。
「このトーストとコーヒーで、いつの日か優雅な朝のひとときを……」
そう思いながら、毎朝サンジェルマンの前を通り過ぎるのは、私だけではないだろう。仕事場へと急ぐ多くの人も、きっと同様の気持ちで通り過ぎているに違いない。
本当の朝を取り戻す
そして今日、私は自分のささやかな願いを叶えるべく、早朝のサンジェルマンを訪れた。エクセルブランの厚切りバタートーストセットを頼んだ。おまけにジャムまで追加した。広くて明るい店内には、もう数人のお客がそれぞれのモーニングを楽しんでいた。私はホットコーヒーを飲みながら、トーストが焼かれるのを待った。
運ばれてきたトーストは、その名に違わぬ厚切りであった。追加注文したいちごのジャムをのせ、カリカリに焼かれたトーストを一口頬張る。小麦の仄かな甘みと、パンの塩味。鼻を抜けていく、バターの香り。そこに、いちごジャムの酸味と甘味が加われば、美味しくないわけがない。美味しいトーストとコーヒーと、ゆっくり流れる時間。私が毎朝思い描いていた理想郷が、そこにあった。
平日の同時刻、時間はただ慌ただしく流れ去ってゆく。そのことにすっかり慣れた私たちは、当たり前のようにパン屋の前を素通りし、当たり前のように職場へと急ぐ。しかし、普段立ち止まることのない朝のすぐ隣には、こういう別の朝も存在しているのだ。おそらく、これこそが本当の朝なのだろう。