本屋の紙袋は、なぜこうも人をワクワクさせるのだろう?
最近はできるだけ電子書籍を買うようにしているが、やっぱり本屋には立ち寄りたくなる何かがある。金曜の仕事帰り、私は帰り道にある本屋に立ち寄った。12月のこの時期になると、来年の美術展の情報をまとめた特集号が出るのである。お目当ての雑誌をパラパラとめくり、来年はサンチェス・コターンの静物画がサンディエゴからやってくるのかとか、デューラーの素描はどうしても見ておきたいなとか、ジュアン・ミロも外せないなとか……そんなことを考えるのが、私の年末の楽しみのひとつなのだ。
5分ほど立ち読みをし、結局今年も『日経おとなのOFF 絶対見逃せない2025年美術展』を買うことに決める。金曜の夜の本屋は、いつもより少し賑わっていて、レジには3人ほど並んでいる。レジも3つあるので、ほとんど待つこともなくお会計を済ませる。「カバーをおかけしますか?」とは聞かれないが、店員さんは何も言わずにお店の紙袋に雑誌を入れてくれる。その雑誌の入った紙袋を小脇に抱え、私は本屋を後にする。
店の外に出ると、12月の夜風が冷たい。買ったばかりの雑誌の入った紙袋を持つ手が、あっという間に冷たく、赤くなる。少しざらついた紙袋の感触を手のひらに、冷たく痛い夜風の感触を手の甲に感じながら、家までの道を早足で歩く。寒いというのもあるかもしれない。しかし、私を家へと急がせているのは、早くこの紙袋を開けたいという気持ちである。
中身はもう知っている。立ち読みしたので、内容もなんとなくわかっている。それでも、この紙袋を開けるのが楽しみで仕方ない。サンタクロースからの贈り物を開ける時のような、本屋の紙袋には、そういうワクワクが詰まっているのである。