企業に社会性(社会課題解決性)が求められている?地域の事業者と伴走する「休眠預金活用事業」の現場から見えてきたこと②
こんにちは。トラストバンクの休眠預金活用/ソーシャルイノベーションデザイン室の元岡です。
「企業が収益性だけでなく社会性(社会課題解決性)を獲得するにはどうしたらいいの?」をテーマに全4回でお届けする連載の第2回目です!(方々からの「待ってました」の声が聞こえてきます。笑)
前回は、テーマの背景である「企業が社会性(社会課題解決性)を求められている現状」についてお話させていただきました。今回は、企業の社会性(社会課題解決性)について、実際にどのような取り組みがされているのか、お届けします。
海外や日本では、今 どのように取り組まれているのか
2022年6月7日、岸田内閣が発表した経済政策「新しい資本主義」に、新たな法人形態「ベネフィットコーポレーション」の検討が盛り込まれました。
「ベネフィットコーポレーション(以下BC)」とは、株主への利益還元だけではなく、他のステークホルダーに対する便益やポジティブな影響をもたらすことをパーパスに掲げた経営を行う会社形態を指しています。このBCの考え方は、本稿の主題である「企業における社会性(社会課題解決性)の獲得(証明)」と近しい存在にあります。
2023年3月、一般財団法人社会変革推進財団(通称:SIIF)が公表した「ベネフィットコーポレーション等に関する調査 最終報告書」では、日本に先駆けて、既にBCが法制化されている米国の各州や英国、イタリアやスペインなどの現状を知ることができます。
以下同報告書の要約です。
設立要件の「定款への記載」は、企業の(社会的)目的の明示を求める「パーパス経営の実現・実践」と、「企業のステークホルダーへの説明責任」に拘束力を持たせることと同義でしょう。また、社会的にどんな価値を出せたのか(どんな課題解決がなされたのか)を第三者基準にて示す「透明性の確保」を約束させます。この透明性の確保を示す書面は、「ベネフィットレポート」(年次社会的利益報告書)と呼ばれ、この書面こそがまさに「企業における社会性(社会課題解決性)の獲得(証明)」になるのではないかと考えます。
ただ、米国で行われた調査でも明らかになったように、ベネフィットレポートの作成・公開に関するルール遵守状況は、一部を除いて低い割合に留まっているようです。これは、「企業における社会性(社会課題解決性)の獲得(証明)」が一筋縄ではいかないことを示しています。
日本ではBCの法整備はこれからですが、既に独自の取組みとしてBCに近しい形で企業経営されているのが「丸井グループ」です。2023年6月に定款に「企業理念の実践」を追加し、ベネフィットレポートに近しい「IMPACT BOOK」を発表することで、ステークホルダーへの説明責任を果たし、透明性を確保しています。
丸井グループ「IMPACT BOOK 2023」 :https://www.0101maruigroup.co.jp/ir/pdf/impactbook/2023/impactbook_all.pdf
詳細:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003236.000003860.html
この「IMPACT BOOK」は、インパクト(※)目標達成に向けて、取り組み状況をよりわかりやすく伝えるだけでなく、ステークホルダーと未来に向けたコミュニケーションを活性化する目的で作成されています。さらに、設定したインパクトの重点項目ごとの取組についてロジックモデルを明らかにし、インパクトKPIの進捗と財務価値を定量的に提示しています。これらの点から、まさに【インパクト(社会性)と利益(収益性)の両立】に向けた、日本における先進的な取組みではないかと感じました。
※「短期、長期の変化を含め、当該事業や活動の結果として生じた社会的、環境的なアウトカム(変化・効果)」を指す
次回は、「企業が社会性(社会課題解決性)を示すための方法」を考えていけたらと思います。