見出し画像

社会課題に興味がある若者こそ知ってほしい!実は身近な「ソーシャルビジネス」

はじめまして。トラストバンク地域創生ラボ学生研究員の岡田です。

このマガジンでは、全8回の連載を通じてソーシャルビジネスの魅力や事例を紹介していきます。ソーシャルビジネスを知って、あなたのペースで社会を少しずつ変える力を見つけてみませんか?

はじめに

私はこれまでNPO法人、学生団体(ボランティア)、そして現在は株式会社トラストバンク(民間企業)という3つの立場から地域創生に向き合い、
持続可能な地域をつくるために若者世代ができることを模索してきました。

そして、社会課題に関心を持つ若者と一緒にプロジェクトを進めた経験を通じて、
「社会のために何かアクションを起こしてみたい!」と考えるものの、
「具体的なやり方が分からない」
「時間や労力のかかることに取り組むのは大変そう」
と考える、
若者ならではの等身大の想いに触れてきました。

学生研究員のみなさんとディスカッションしている様子
地域の中学で、キャリア教育の授業をさせてもらった時の写真

そんな経験から、もっと若者にとって身近なところで社会課題の解決に
つながるアクションはないだろうか…….と考えていた時に出会ったのが、
企業の営利活動と社会課題の解決を両立させる「ソーシャルビジネス」でした。
社会のこれからを担う若者だからこそ、社会にかかわる様々な選択肢があると考えています。

記念すべき1本目の本記事では、テーマであるソーシャルビジネスについて学生研究員の立場から解説していきます!


①ソーシャルビジネスの基本を探る

熱々で、口にほおばると甘い肉汁がじゅわーっと広がる…皆さん餃子は大好きですよね!
実はこの餃子が、社会課題を解決するアイデアから生まれたものだとしたら・・・?一体どんな背景があるのでしょうか。
答えはこの記事の後半に載せますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

ソーシャルビジネスの定義

そもそも、「ソーシャルビジネス」とは何なのでしょうか?経済産業省の定義を引用して説明していきます。

①「社会性」:現在、解決が求められる社会的課題に取り組むことを事業活動のミッションとすること。
②「事業性」:ミッションをビジネスの形に表し、継続的に事業活動を進めていくこと。
③「革新性」:新しい社会的商品・サービスや、それを提供するための仕組みを開発したり、活用したりすること。また、その活動が社会に広がることを通して、新しい社会的価値を創出すること。

ソーシャルビジネス研究会 報告書(案)概要版 資料2-1より引用 (H20.3) 経済産業省

一言でまとめると、「収益を上げながら社会課題に取り組む」モデルのことを指します。一般的な企業は収益を上げることが主な目的になりますが(大企業はシフトチェンジをしているところもありますね)、ソーシャルビジネスでは自社の事業収益を用いて、「社会課題の解決」を目的としていることが違いになります。
しかし、ソーシャルビジネスの定義として世界的に統一されたものは存在しないと言われています。実際には各会社が自分たちなりに「ビジネスで社会課題に向き合う方法はなんだろう?」というテーマに向き合い、事業を構想しているんです!

その具体例として、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を運営する
トラストバンクの「休眠預金事業」(※)では、ソーシャルビジネスを
「社会性(社会課題解決性)と収益性(自主的な事業継続性)の二つの価値が両立した事業」と考えています。
ソーシャルビジネスは必ずしも新規事業や新商品である必要はありません。
既存の事業でも「実は私たちがやっていることって、こう工夫したらソーシャルビジネスになるのでは?」と考え、ビジネスを磨き上げることで社会課題解決につながるケースがあると捉えているのです!

ソーシャルビジネスの歴史

では、こういったソーシャルビジネスはいつ誕生したのでしょうか?
少しだけ歴史を紐解くと、ソーシャルビジネスは2006年にバングラデシュの経済学者でグラミン銀行の創設者、ムハマド・ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞したことにより世界的な注目を集めました。
彼は健康、水、衛生、住宅など、貧しい人々が抱える問題を解決するための会社を設立してきたと説明しており、実際にこのグラミン銀行も、農村部の貧困層の自立を支援するべく無担保少額融資(マイクロクレジット)を取り扱うことで貧困層の生活水準を向上させたのです。

首都ダッカの写真。バングラデシュは「後発開発途上国」に位置付けられ、
児童の栄養不足や就学率の低さなどが指摘されています。

その一方、ここで着目される社会課題は、上記の環境保護や貧困問題といったグローバル規模の問題だけではありません。例えば地域の子育て支援や観光政策など、「地域課題」と言われるミクロな問題も含め、多種多様な問題にスポットを当てられることが特徴なのです。

答え合わせ

さて、冒頭の「餃子の問題」に戻ります。
東京都杉並区方南町の「一般社団法人ビーンズ」さん。
ビーンズさんが運営する、「はじまりの餃子とつながりのビール」というお店は、餃子をお客様に食べてもらうことで社会課題を解決するという仕組みづくりに挑まれています。

ビーンズさんは、「常に取り残される側の目線に立ち、今の時代に必要とされる生きるための選択肢を福祉によりつくり続けること」を理念に掲げ、現在は約240名ほどの障がい当事者の方をはじめ困難を抱える方々の支援を行っている団体さんです。
ビーンズさんはもともと、小規模農家が抱える「後継者不足・人手不足」という課題に着目し、障がい当事者の方が農業分野に参入することで生きがいを持って働いてもらおうと考えたそうです。
(こういった取り組みを「農福連携」と呼ぶそうです)

その一方、就労困難者の方々は専門的な技能の習得や人と関わる仕事がしたいというニーズから、農業分野での継続的な就労につながりにくいという課題があるのです。
そこで、このお店ではそういった就労困難者の方々を「食肉加工・餃子づくりのプロ」として育成することで、彼らの新しい活躍の場を拓く取り組みを推進しているのです。

パクチーと餃子の組み合わせ。相性バッチリです!

まとめると…

①社会性:農業分野の就労人口の減少・障がい当事者の雇用支援
②事業性:餃子屋さんの店舗運営による利益

という、事業で社会課題を解決する「ソーシャルビジネス」を展開されているのです!
☆詳細な紹介は以下の記事にてまとまっておりますので、ご興味がある方はこちらもご覧ください!


②社会課題に向き合う組織とは?

さて、上段ではソーシャルビジネスの具体例として「一般社団法人」を取り上げました。ここまで熱心に読んでくださった皆さんの中には「会社じゃなくてもいいの?」「ボランティアとの違いは?」といった疑問が湧いていると思います。
そこで、他の社会課題に取り組む組織を取り上げてまとめてみました。

図:筆者作成。(一般社団法人に関しては営利型・非営利型に分かれますが、ここでは省略しています)

特に混同されやすいのが、②NPOと③一般社団法人です。共通点はどちらも「非営利」であること。これは「お金を稼いではいけない」ということではなく、「事業によって生じた利益を社員に分配してはいけない」ことを意味します。(もちろん給料は支払いますが、余剰金は事業に再投資する必要があります)
一方、大きな違いとして挙げられるのが「事業目的」です。一般社団法人は事業目的に特別な制限はないため、法人の目的に合わせて多様な事業を展開することができます。
これに対し、NPOは法律で定められた20分野の活動(公益活動)のみが許可されています。より社会性を追求した組織であることから、自治体等による補助金の対象になりやすいことも特徴です。


ここからは私の経験談ですが、実際に②NPOや④学生団体で活動する中で、「お金に頼らずに持続可能な組織をつくることの難しさ」に直面してきました。
例えば学生主体のプロジェクトを立ち上げても予算が付かず継続的な活動を断念したり、宣伝費用をかけられないなかで人手が中々集まらず、活動規模を縮小させるケースを実際に経験してきました。(思い返しても悔しかった経験です……)

とはいえ、社会課題が複雑化する中、多様な主体が存在することは今後も重要になってきます。実際、2023年に日本財団ボランティアセンターが実施した「全国学生1万人アンケート」によると、62.2%の若者(18~26歳)がボランティアに関心を持っており、社会課題に関心を持つ層の活動拠点として多様な受け皿が機能している状況は今後も維持するべきです。

ボランティアも社会参画の重要な手段のひとつ。


しかし人口減少が進む日本においては、社会課題をどう解決するか?という問いだけでなく「解決する側をどう維持させるか?」という視点も欠かせないと考えられます。ソーシャルビジネスは、この問いを解決する有効な手段と言えるのかもしれません。

また、ソーシャルビジネスが求められるもう一つの背景には「企業の社会的責任」を重視する生活者のインサイトがあると言えます。例えば、2023年にPwCが実施した「世界の消費者意識調査」によると、消費者はサステナビリティ(例:地元の産品、再生資源利用など)のために5%高い価格を支払うと回答する人が75~80%にのぼると判明しています。
その一方、日本ではこの数値が50%前後であることも気になるところですね。

PwC「世界の消費者意識調査」(2023年6月)

さらに、昨今では「ESG投資」と呼ばれる、企業の財務情報だけではない環境(Environment)社会(Society)・ガバナンス(Governance)といった非財務情報をもとに行われる投資額が大幅に増加しています。
働く人にとっても、ただ利益を追求するのではなく、社会性を意識した仕事ができることにより、「自分はこのように社会・地域に役立っている!」と実感を持てることがモチベーションの向上につながると考えられます。

「何のために働くのか?」「何のために社員に働いてもらうのか?」という問いの答えが多様化している時代と言えそうですね。 

これら2つを踏まえると、企業が社会性に配慮することの重要性は年々高まっていると言えるのではないでしょうか。

ソーシャルビジネスは身近なところに

そして、ソーシャルビジネスは自社と社会の利益につながるだけではありません。先ほどのビーンズさんが地域における新たな雇用の創出を実現していたり、着目する社会課題によってはそれまで行政が担っていた事業のコストカットにつながるなど、本来着目していた社会課題を飛び越え、地域に対する副次的な効果も期待できるのです。
あなたのまちで普段訪れている飲食店や、何気なく買っている商品が、実は社会的にポジティブな影響を与える”ソーシャル・グッド”なプロダクトかもしれないんです…!
そして、こういった消費行動をしたり、社会課題に取り組んだりするようなアクションは、短期的な内容ではなかなか効果がでません。中長期的に社会の未来を作るのは、今の若い世代だからこそ実現できるのです!

探検メモ💡
①ソーシャルビジネスは社会課題を持続的に解決する手法のひとつ。
②企業が社会性に配慮する重要性は高まっている。
③ソーシャルビジネスを展開することは、自分の地域をよくすることにもつながる。
④社会課題には粘り強く取り組む必要がある。だからこそ、若者の行動が重要になる。

まとめ

この記事を読んでくださる方は社会課題に関心のある方が多いかなと思います。今回はかかわり方の一つとして「ソーシャルビジネス」について私なりに解説していきましたが、私が常に課題感を抱いているのが「どうしたら社会課題に向き合う組織を持続させられるんだろう」というテーマでした。そのためには、事業性を高めることはもちろん、そういった取り組みの認知度をもっと高めていくことが欠かせません。

このマガジンでは、私も含め「社会課題に関心があるけど、自分はどんな行動を起こしたらいいんだろう……?」と考えている方に対し、引き続き具体的な取り組み事例を紹介していきます。自分の地域で、あるいは自分のキャリアの中で、どのように社会課題に向き合えるのか、一緒に「探検」していきましょう!

<以下のスケジュールで配信予定です!!>

(※)休眠預金活用:「休眠預金」とは入出金等の取引から10年以上、その後の異動がない預金のこと。「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」(休眠預金等活用法)によって、社会課題の解決や民間公益活動の促進のために活用できるようになった休眠預金を活用し、ソーシャルビジネスを作り上げて実行まで伴走していくプログラムのこと。
詳しくは以下を参照


最後まで読んでくれてありがとうございます! X(Twitter)でも情報を発信しています。ぜひフォローしてください!