人口減少にとらわれない地域との関わり方/『持続可能なまちプロジェクト』第2回座談会レポート
2024年9月24日(火)、『持続可能なまちプロジェクト』2回目の座談会を開催しました。
(第1回目の座談会はこちら)
今回の座談会のテーマは「地域との新しい関わり方」。
“地域に住む人が減少しても持続する地域をつくるためには、住む・訪れる、に関係なく、その地域に価値を抱き、関わりたいと思う人を増やす”ことが大切ではないか?という考えのもとに設定したテーマです。
「何度も訪れたい・関わりたい地域の特徴」と「地域との新たな関わり方」について、2グループに分かれて話し合いました。
そんな座談会のレポートを、前回に引き続き、村上がお届けします。
参加者・グループ
何度も訪れたい・関わりたい地域の特徴について
メインテーマである、「地域との新しい関わり方」についてディスカッションする前に、準備運動として参加者の皆さんが実際に何度も訪れたりこれからも訪れたいと思ったりしている地域の特徴から、関わりたくなる地域とはどんな場所なのかを考えました。
グループ①:自分しか知らないエピソードがある地域
グループ1では、みんなが何度も訪れている地域には「自分しか知らないエピソードがあった」という共通点があることが分かりました。
地域で何かを行って体験したエピソードよりも、地域の方に何かをしてもらう経験をしたというエピソードが、またその地域に行きたい、出会った人に自分の成長した姿を見せたいという気持ちを作るようです。
野城:駅員さんを通して切符を買わなきゃいけないときに駅員さんからおせんべいをもらったことがあるんです。切符しか使えない駅は不便ですが、あの駅員さんにまた会いたいなと思うんですよね。
Y:グループで話し合う中で、ネット上に載っている情報ではなく、個人的なエピソードがあるような場所とは、ずっと関わりを持ち続けたいという意見がたくさんあがりました。それが、“地域に恩返しをしたい”という気持ちに繋がるのかもしれないです。
グループ②:温かい気持ちになれる地域
グループ②は、心が温まる、安心できる地域が何度も訪れたいと思える地域であると発表しました。
誰とでも積極的に話せる距離の近い地域だと安心感や一体感を感じられ、心が落ち着くそう。また、自然があり心安らぐ温かい環境も、継続的に関わる地域に求めているものの一つとも話しました。
殿岡:3人の中で共通していたワードが、「人の温かさ」。世代を問わずコミュニケーションができるような、誰とでも話せる雰囲気があるといいなと思います。そんな温かい繋がりは訪れたくなる理由の中で最も重要なポイントだと感じました。
岡田:地元に夕方になると綺麗な夕焼け空を見れる道があるのですが、その空を見た時にスッキリした気分になれる感覚がものすごく好きです。自然を見たときの感動も心が温まる要素だと思います。
「地域との新しい関わり方」の提案
トラストバンク地域創生ラボ学生研究員は、持続可能なまちづくりについて、人口減少・流出を抑制するための施策検討を行うだけでなく、地域に住む人が減少しても持続する地域を創っていくことも重要だと考えています。
参加者の皆さんには、例えば「ふるさと納税」や「島留学」など、地域に住んでいない人でも地域を持続可能にするためにできることや、新たな地域と関わる手段について、企画立案を行ってもらいました。
グループ①:めんどうなポイントを解決するツアーを開催する
グループ①が地域との関わり方で課題だと考えたのは、地域を訪れる際に「様々な種類のめんどうくささ」が潜んでいるということ。
例えば、“本当は訪れたい地域があるのにアクセスの悪さから行動に移せない”、“地域住民と一緒に何かしたいが何をしたいかはわからない”などのような、「地域に関わりたいけど、行動に移せない、全てのめんどくさがり屋」をターゲットにした企画を提案しました。行動に移すまでに考えなければいけない目的地までのアクセス方法や、地域の行事やイベント事の情報をすべて用意し共有することで、すぐに行動できる環境を整えるというツアーです。
野城:ゼミの合宿で都心部から離れた地域に行った時、最初の印象が「どこに向かえばいいのか・何をすればいいのか分からない」でした。素敵なモノやコトがあるのかを知る前に、「今後この地域には来ることはないんだろうな」と思ってしまって。方法を考える、目的を考えるといった入り口を考えるのはめんどうなものの、どこかに出かけたい意思はある、という人に向けてアプローチができる企画があれば良いのかなと思いました。
多田:私個人としては、遠隔で関わるよりも、直接特定の地域に行ってみて実際に関わりたいという気持ちの方が強いです。このツアーは、何度も訪れたくなる地域の特徴について考えたときにも出ていた「自分しか知らないエピソードがある」という偶発性を楽しむためのきっかけになるかもしれません。
グループ②:地元愛が発揮できる場所を提供する
グループ②が着目した課題は「地元愛が強くても行動できない」ということ。地元に対して貢献したいという想いはあるものの、時間的制限で地元に戻れない大学生が、地元の自治体や企業と離れていても連携しながら、ツアーを企画し、地域へ足を運ぶ人を増やすという提案をしました。地元愛をカタチにできるのがポイントです。
末永:地元から離れて生活している大学生が、自治体や地元の企業と連携して、学生ならではの地元体験ツアーを企画・実施できるような場所があればいいなと思いました。地域に足を運んでもらえる人が増え、ツアーに参加した人たちがインターネットの情報だけでは知ることができないような地域の新たな一面に出会える機会も増えることを想定しています。
殿岡:私含め、地域愛は強くても、どのように行動したらいいのかでモヤモヤしている人は一定数いると思います。もし、地域愛が強い同郷の人たちが集まって企画を作ってみる場所があれば、地域に対して何か行動できていると思えるだけでなく、実際に行動に移すことにも繋がる可能性があります。また、企画を作る場所の提供が地域に対する若者の想いをさらに高めるきっかけになるかもしれません。
今回の座談会から得た「関わる」のポイント
今回参加したトラストバンク社員・町田さんから
今回の座談会で、参加者の意見がとても斬新で刺激を受け、自分にとっての「関わりたくなるまち」についても深く考えるきっかけになりました。
また、初めての訪問と2度目の訪問では、地域への愛着度合いが大きく変わると思います。そのため、地域に「もう一度訪れたい」と思わせる仕掛けがあるとより良いですね。
どちらのグループもツアー関連の企画を提案していましたが、ツアーは、移動手段などの「めんどうさ」を解消してくれる点では良いのですが、偶然の出会いが少ないという課題もあります。「めんどうさ」の解消をサポートしながら、偶然の発見や人との出会いも提供できるようになれば、もっと魅力的になるかもしれません。
個人的に、地域に関わりたくなる要素として、思い出や人とのつながりがとても重要だと感じています。地域に訪れる人々に、どうやって思い出を作ってもらうか、という仕掛けも必要だと感じました。
主催者の感想
今回の座談会で改めて感じたことは、何度も地域を訪れるきっかけは「非日常」よりもむしろ「日常の温かさ」や「個人的なつながり」が重要な要素であることです。一般的に、観光や訪問といえば非日常的な体験を求めるイメージですが、実際にはその地域における当たり前の出来事や人との交流が、より継続的に関わりたいという気持ちを強く引き出すのだと思います。
また、地域を訪れ、地域の方と交流したりイベントに参加したりしたいものの、「まずどうしたらいいのか」と方法を考えることで躓いてしまう人も多いようです。
トラストバンク地域創生ラボが、東京圏の若者967名を対象に行った『若者の地方に対する意識調査 2024』でも、地域での活動に興味はあっても、行動出来ていない人が約4割を占めました。それは、「行動の第一歩目」が定まっていないからかもしれません。
このような状況を考えると、地域を知ってもらい、好きになってもらうきっかけを提供するよりも、もともと馴染みのある地域に自然と愛着を持ってもらう仕組みを作る方が良いのではないかと思いました。そうなれば、地域と関わりたいと思っている人たちが、無理なく地域とのつながりを深め、より自然に行動に移せる環境を整えることができるかもしれません。
座談会を通して、地域と関わる選択肢を増やすだけでなく、関わることに興味を持ちつつも行動できない理由の深堀と解決策を見つけたいと思いました。