見出し画像

【飲む書くポチる#1】赤くても、ビール【忽布古丹醸造・ハシカプ】

クラフトビールの話がしたい

私はクラフトビールが好きだ。大学時代にクラフトビール・バーに入ってから、その風味に、奥深いビール作りの担い手たちの情熱に、魅了されてきた。

そうやって飲み始めてから10年が経とうという今、日本のクラフトビール業界にも新型コロナウィルスの感染拡大が暗い影を落としている。クラフトビールの供給先だった飲食店の営業が難しくなっているからだ。そして、業界各社は家庭向けへの供給拡大としてネット販売に注力することになった。

今回から始める連載は、そんなネット販売で手に入れたビールの感想をしたためていくものです。

紹介するビールは、北海道は上富良野町にある忽布古丹醸造のフルーツエール“ハシカプ”です。

ボトル販売は始まったばかり

忽布古丹醸造は2017年に設立し、その後はたるによる供給を行ってきた会社でした。創業以来、初めてとなる常時供給する銘柄3種を世に送り出したのが20年2月下旬、ボトル販売が始まったのはさらに2ヶ月後の4月下旬でした。解禁されたその日、待ち望んでいたファンが通販サイトに瞬く間にやってきたのか、早々にSold out の表示が出ていて歯がゆい思いをしたものです。

フルーツエールという難物

ゴールデンウィーク明けに在庫が復活したことで、ようやく定番3種を手に入った。私がいちばん心待ちにしていたのが、今回紹介するフルーツエール“ハシカプ”。その理由は、フルーツエールを常時供給する会社が少なく、かつ難物という印象があります。

フルーツエールは水、麦、ホップ(それと酵母)で作るクラフトビールに、さらに果物を要求するタイプなので、味のバランスが難しいのです。使用する果物をどんなタイプと合わせるかで印象が変わります。
私が過去に飲んだフルーツエールの中には、フルーツを引き立たせたせいか甘すぎてほとんどカクテルのようになっていたり、逆にホップの苦みが強く残って不快な後味を残したり、ということがありました。
そんな気難し屋を定番に加えたことに、驚きとともに興味をかき立てられたのです。

バランス感覚の取れた“ハシカプ”

さっそく開栓。
鮮やかな赤紫いろの液体がコップを満たしました。

“ハシカプ”はハスカップのアイヌ読み。その名の通りハスカップ使っています。一口飲んでみると、ワインを飲んでいるような感覚に。しかし後にはセゾン独特の、柑橘系とスパイシーな香りを残します。ハスカップとビールがうまく合わさっている! アルコール度数7%とは思えない口当たりの良さでした。

北海道でビールを造るということ

忽布古丹醸造のヘッドブリュワーは代表でもある堤野貴之氏は、かつて同じ北海道の江別市にあるビール醸造所から独立して現在の場所に立ち上げました。上富良野産ホップにこだわったビールを造りたい、という思いからでした。そのこだわりはアイヌ語から取ったネーミングや、ビールに寄せたコメントからも読み取れます。

現在、クラフトビールを造る人々は、「地ビール」という人口に膾炙した呼び名を使わない傾向にあります。地酒と異なって、原材料を輸入に頼っているビールを「地ビール」と読んで良いのか――そんな葛藤があるからです。事実、先述した3つの原材料は、地元どころか自国内で集めることは、例え大手ビールメーカーでも難しいのが現状です。忽布古丹醸造が目指した「地ホップ100%のビール」は、経営的な難しさにも挑戦していたといえます。

この一本には、そんな職人の気高さと技術が詰まっているのです。

よろしければサポートお願いします。いただいたサポートは今後の取材に活用します。