戸原 多津子

主に朝、思いつくままに浮かんだ考えを記録に残していきます。

戸原 多津子

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№34 2024 

大いなる力の 長い長いスケール その一目盛をさらに区切る 小さな狭間に 僕たちの時代がある 諦めに 希望という光が差しても 苦しみは消えずここにある 地に落ちているそれを 抱えて歩き出す力はまだない 何より大切なものだけを 一心に見つめることで 絶望から身を守り 過去も未来も見えない今は 昨日と明日の狭間の今日を 繰り返し生きる

    • №77 不在

      夕暮れのイオンの脇道 歩道に枝を広げる木の下を通り過ぎる時 フードコートから漏れる明るい光 僕は 君の生きていない今日にいて 君が 僕の生きている今日にいない 君は あちこちにかくれんぼして 時々 不意に見つかろうとするだろう 図書館の棚で ファミレスのメニューの中で 駅の改札で 自転車置き場で

      • №76 深更

        真夜中の読書感想文 原稿用紙の上で 思いついただけなのに ずっと思っていたかのような 感動、疑問、反論、共感を 猛スピードで書き連ねて 2000文字を誤字なく埋めれば 夏の終わり 君はどうしてるかな

        • №75 宿題

          古の英知に祈りを捧げ 終わりに向かう夏 残る暑さは 濡れタオルを何度当てても 冷めぬ子の額のように ただじっとやり過ごすだけ 庭に落ちた蝉の 魂なき姿に 水をかける

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        №34 2024 

          №74 誤認

          本当に自分が悪かったのに 心が 自己弁護のカードを次から次に繰り出し 私を安心させようとする 私も そのカードを一つ一つ 長い間眺めている 夜 ふと ずっと一緒だったよね と 「不安」が話しかけてきた その「不安」と一緒に 常夜灯のともる階段に そっと座り 正しい人になろうと カードを伏せる

          №73 英知

          真夏の太陽に耐えている 庭のゴーヤは 待てば雨が降ることを知ってるようで 地球も 季節も 夜空の星も 僕の毎日も ぐるりぐるりと廻ってる 降った雨も じょうろから受けた水も 空と地上を行ったり来たり 雨を待ちながら 人間の気まぐれな水やりに耐え 先をゆっくり伸ばし 根元から順に 葉を枯らす ゴーヤは どうすればいいのか知っている

          №72 素足 

          夏休みという 旅に出る いつもと違う時の流れの中を 絶対自由に泳ぐんだ 何かを成し遂げたり 成長したり 目標とか計画とか 宿題はさっさと片付けて 毎日を心に刻み込んで 自分に夏があったことを いつまでも 人気のない真昼の道に佇めば 蝉の声を聴けば 夕立が光れば いつでも戻れる記憶を 僕の片隅に残したいんだ

          №72 素足 

          №71 快晴

          昨日休んだからって 今朝は 一昨日からワープしただけ 昨日の僕は今日の僕を 励ますことも出来ず 息を吐く 空が雲無く晴れて セミはもう喚いてる 窓の外に世界があることを 無視できないんだ

          №70 宛先

          遺された 私の気持ちが あなたの中で生きながらえても 星の瞬きの間に 消えていく 空の彼方に吹き溜まり さらさらと 微かに光る 記憶によく似た 時の砂は 行き先も  戻る地もなく 寄せては返すを 延々と

          №69 予報

          雨が止めば鳴く蝉の 土から出てくるその晩は 月が明るく照らされて 風もそよとだけ吹くでしょう 遅く来て 早く逝く 100年生きる人間に 何度も巡り来る夏

          №68 気体

          まだアラームもならないうちに 窓の外から強引な 久しぶりの朝陽と蝉の声 3日前のじめついた気分も 怖いくらいのスピードで乾き始める ああ軽い僕の心 うっかりまた何かやらかして からからの心が汗と涙に湿っても 何度でも繰り返すだけって ただそれだけで とにかく今日は元気なんだ 楽しいんだ 今日の気分を ずっとなんて言わない また 何度でも

          №67 証明

          僕を見ないで 判断しないで 連想しないで 助言しないで 同情しないで 共感しないで 昨日の僕は僕じゃない 僕が思う僕じゃない 明日こそ 本当の姿で 行きたいのに 夏の始まりの 暴走する陽射しに 僕がだらだらと溶けていく

          №66 追難

          言の葉の 舞い散る世界 薄いトゲを持つ 青く長い葉が 頬をかすめ 傷をつけ 掌に乗ったひとひらを 振り払う時もある 気づいて 君の背に留まる 小さな枯れ葉の いとま乞い 強く風が吹く前に

          №65 花火 

          暮らしていくには仲間が 生きていくには友達が いるといいと 君は言う 僕にとって 君は 人生も命も懸けられる 唯一無二 と錯覚する魔法 時に永遠に続く 呪い

          №65 花火 

          №64 視界

          薄いカーテンが あちこちにかかるような 静かな雨の日 その向こうに誰かがいると 君はどうしてるかなと ふと思う 雨がやみ 日が差せば すべてとつながっているような 青い空のその先

          №63 靴紐

          非常口のない迷路に 君を送り出す どの謎にも答えがあり どの敵にも隙があり どの危険にも前触れがある 君だけの剣と盾 君だけの呪文 君だけの薬草 どんな苦しみにも安らぎが訪れ いつの涙も必ず乾くから いつかきっと 誰か 言葉 歌 君が信じるものと一緒に 君は出口を見出す そしてそれは どこかへ続く入り口 世界は君を取り巻いて 離さない