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テレワークゆり物語 (104)テレワークは本当に少子化対策になるのか?
テレワークは本当に少子化対策になるのか?
2022年5月5日、こどもの日に、このテーマを正面から考えてみた。
総務省が毎年こどもの日に向けて「こどもの数」を発表している。今年は5月4日に発表された。
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現時点での日本の状況は、こどもの数は1465万人、41年連続の減少
こどもの割合は11.7%、48年連続の低下
40年以上、こどもの数も割合も減っている日本。
なぜこんなことになったのか。「若者の給与が低い」「結婚する人が減っている」「金銭的支援が少ない」などいろいろ言われている。
が、ここでは、私の考えを書かせていただく。
■働く女性が増えると、こどもの数が減る?
国が推進している重要な2つの政策の矛盾が解決できていない。
「少子化対策」と「女性活躍推進」は、反比例するのではないか
こんなことを書くと怒られそうだが、さまざまな働く状況を経験してきた自分だから言えると思っている。
『女性が子育てをしつつ、「活躍」するのは大変すぎる!』
ここであえて「活躍」と書いたのは、理由がある。
国の「女性活躍」施策(と思われる)、女性の育児休業期間の延長や、男性の育児休業取得向上は、「活躍したい女性」のためではなく、「適度に働きたい女性」のための施策のように思える。(あっ、言っちゃった)
一方、企業視点に立つと、増やさなくてはいけない女性役員は、「活躍したい女性」のはずだ。
このズレが「役員に適切な女性社員がいない」「女性社員が役員になりたがらない」につながっているのかもしれない。
男性、女性に限らず、本気で「活躍」したい人は、長い期間仕事を休みたくないはず・・・。
そして、経営者視点でいえば、多くの社員が長く休めば休むほど、会社経営は厳しくなる。特に、日本の9割を占める中小企業は・・・。
このまま、反比例する施策を両方続け、「女性活躍」は中途半端になり、「少子化対策」が効果を出さす、こどもの数も頭打ちになっては、日本は大変なことになる。
では、どうすればいいのか? 答えは、
「休む」ではなく、「働き続ける」施策に力を入れること
ではないか。
やっと、本題に入る。
私が言うと、思いっきり「我田引水」だが。笑
「適切な」テレワークの推進が、少子化対策となる。
理由を、以下に整理する。
■女性が仕事と子育てを両立しやすくなる
「女性だけが子育てをするのではない」と怒られそうだ。もちろん、子育ては女性だけがするものではない。
しかし、世の中はそんなに簡単に変わらない。
まわりをみても、家事や子育てをしながら働いている女性のいかに多いことか。そんな女性に「男性にも・・・」と言っても、家庭事情や仕事の都合の中で、今すぐ、彼女たちだけでは変えられないだろう。
まずは、彼女たちがテレワーク(ここでは在宅勤務)ができるようになればで、通勤時間など、これまで無駄になっていた「時間」を有効活用して、家事や育児の負担を軽くすることができる。
ただし、「育児中の女性のためのテレワーク」だと、それは福利厚生のひとつになってしまう。特別扱いの働き方になるからだ。
■男性が子育てに参加しやすくなる
これまた「男性が育児に参加」というと怒られそうだ。もちろん、子育ては男女一緒にするもので、どちらかが参加するものではない。
そんなこと言ったって、世の中はそんなに簡単に変わらない・・・と思っていた。
しかし、コロナ禍では、多くの社員が、テレワーク(在宅勤務)をする機会となった。
男性はもちろん、在宅勤務を必要としなかった女性もだ。
これにより、「テレワーク」が特別扱いの働き方で無い状態となった。
その結果、子育て中の男性は、まわりに気兼ねせず、こどもとの時間を増やすことができた。
実はここが重要。男性は、特別扱いされない「会社にいるのと同様に働けるテレワーク」でないと、テレワークをしにくくなるのだ。
■女性も企業で活躍できる
新型コロナの感染リスクが低下するに従い、テレワークをやめたり、出社の日数を増やしたり、テレワークできる社員を制限したりする企業が出てきた。
その理由は、「やはり対面が大事」「テレワークだと仕事の効率が低下する」「コミュニケーションがとりにくい」「さぼる社員がいた」などいろいろある。しかし、要は、コロナ禍において、テレワークだと生産性が低下することに気づいたからではないか。
「会社にいるのと同様に働けるテレワーク」を実施している企業は、生産性は、低下しない。
オフィスに出社しても、テレワークでも、同じように仕事ができるなら、生産性は変わらない。だから、コロナ後もテレワークを推進する。
そんな企業は、女性も男性も、子育て中でも、そうでなくても、どこで働いても、フェアに働くことができる。
結果として「活躍したい女性」が活躍できるのだ。
日本において、こんような企業を増やすことが、「少子化対策」と「女性活躍推進」の両方を実現する、唯一の道だと私は考えている。
■まとめと想い
「テレワークは本当に少子化対策になるのか?」
という問いに対しての答えは、YESである。
テレワーク(在宅勤務)で「女性が仕事と子育てを両立しやすくなる」ことは、間違いない。
しかし、「男性が子育てをしやすくなる」「女性が企業で活躍できる」という視点に立つと、微妙だ。「会社にいるのと同様に働けるテレワーク」でないと、その効果は低下するだろう。
国は長くテレワークを推進してくれている。
しかし、テレワークを制度としているかどうか、テレワークを実施しているかどうか、という数字ばかりを追っている・・・気がする。
国を動かす方々は、数字を見て「コロナ禍で、日本にテレワークは普及した」と、ひと安心されているのだろうか。
昨年の総裁選や衆議院選挙において、テレワークはほとんど公約に入ってしなかったことを不安に思う。
国としては企業のテレワークの中身にまで入り込むことはできないかもしれない。しかし、こういうテレワークを推進すべきと、日本の課題を解決できるテレワークの方向性を示す段階にきているのではないだろうか。
少子化は、「高齢化」「労働力不足」「地方衰退」など、日本がかかえるさまざまな課題の根源であることを忘れてはいけない。
※冒頭の写真は、私が住む北見市の隣、美幌町の美幌神社の鯉のぼり