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【書評】『裏切り者は誰だったのか CIA対KGB諜報戦の闇』(ハワード・ブラム著 芝瑞紀、高岡正人訳 原書房)、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆著 集英社新書)

金曜日夜から土曜日朝まで12時間飲んだ反動で昨日は眠り続けてました。

沖縄、米子で激しく動いていた疲れが出たのかもしれない。今日から通常営業に戻します。


最近読んだ本の一部。


『裏切り者は誰だったのか CIA対KGB諜報戦の闇』(ハワード・ブラム著 芝瑞紀、高岡正人訳 原書房)は、キューバ危機、JFケネディ暗殺時代の「CIA」と「KGB」の諜報戦を描いたノンフィクション。

「モグラ」と呼ばれる二重スパイ(時に三重か)、機密情報の受け渡しの詳細、海での不審死——スパイ小説そのもの。主人公である元CIAソ連圏部副部長のピート・バグレーにとっては、KGBに実質支配されていた、内情が描かれている。

著者の意向ではあるが、スパイ小説仕立ての構成のせいもあって、やや分かりにくい部分がある。とはいえ、関係者への慎重な取材、FBI、CIAの膨大な公開文書を読み解き、コロナ禍の間、短期間に書き上げた手腕は眩しい(公文書を安易に破棄、黒塗りで通そうとする国に生きているノンフィクション作家にとっては羨ましい環境だ)。

冷戦時代のソビエトがやっていたことを、今、ロシアがより洗練された手法でやっているのは間違いない。アメリカも同様だ。脇の甘い日本の政治家、官僚、マスコミなどちょろいものだと高笑いしている人たちがいるはず。それを考えると怖くなる。


『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆著 集英社新書)は、時代が移り変わる中で「読書」「本」の役割が変わっていくことが描かれている。先日読んだ「アメリカは自己啓発本で出来ている」とも交わりを感じた。

自己啓発本の捉え方で、社会階層が露わになる。「自己啓発書」をめぐる日本の階級格差は、明治から今まで続いているというのは鋭い指摘だ。

自らを犠牲にして仕事をする「燃え尽き」を美学とするのをやめて、半身で仕事して、読書の時間をとろうという彼女の提案は同意する。

タイトルに惹かれて手に取った『<私>を取り戻す哲学』(岩内章太郎著 講談社現代新書)。著者のドロップアウトした時代の話から入る冒頭は面白かったが、基本は「哲学」書。ぼくには、人の営みを「塊」——観念で捉える「言葉遊び」のように感じた。そんなに簡単に人は言葉に置き換えることはできない。消えかかった「小文字」を拾ろうとしているぼくは、やはり「哲学」が苦手だ。好きな人にはたまらない本かもしれないが。

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