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書評『戦後期 渡米芸能人のメディア史 ナンシー梅木とその時代』(大場吾郎 人文書院)『統計学の極意』(デイヴィッド・シュピーゲルハルター 宮本寿代・訳 草思社)

最近読んだ本の一部

どちらも読者を選ぶ本。

『戦後期 渡米芸能人のメディア史 ナンシー梅木とその時代』(大場吾郎 人文書院)は、芸能界を取材しているぼくにとっては参考になる一冊だった。以前から「上を向いて歩こう」がなぜアメリカでヒットしたのか、謎だった。

その地ならしをしたともいえるのが、ナンシー梅木、雪村いずみたちだった。そこではハワイが重要な役割を果たし、ジャニー喜多川の父がいたLAの高野山米国別院も出て来る。

ナンシー梅木が、直面した日本の芸能プロダクションとアメリカの「エージェント」システムの違いが興味深い。それまで遅刻が多くプロ意識が低かった梅木 は、海千山千のアメリカでやっていく中で、スタッフを束ねる本物の「個人事業主」になっていく。

日米の資料を丹念に読み込んだ労作である。

職業柄、本の内容の他、著者と作品の背景も気になる。

著者の大場氏は仏教大学社会学部教授である。その彼が後書きで、公益財団法人文化基金、仏教大学文化基金からの助成を受けて作品を書き上げることができたと謝辞を付している。

大学教授という、安定した収入のある身である彼でさえ、こうなのだ。フリーランスの書き手がしっかりとした作品を取材・執筆するのは難しくなっている。



どちらも分厚い。ヘビー級。

『統計学の極意』(デイヴィッド・シュピーゲルハルター 宮本寿代・訳 草思社)も、面白い。統計、数字は恣意的に操作できるというのは、先日読んだ『あなたが知らない科学の真実』(ダイヤモンド社)と共通している。ただ、統計学に対する知識がなかったこともあるだろう、出て来る単語(数学用語?)が難しくて、いちいち調べたり、巻末の説明を参照しなければならなかった。

統計学の入門書を読んだ上で、この本の講義を受けたい。まだまだ勉強足りないな。


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