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書評『金利「時間の価格」の物語』『ことばの番人』(高橋秀実 集英社インターナショナル)『文にあたる』(牟田都子 亜紀書房)

ここ2週間ほど、打合せ、取材等で追われていた上に、頭痛がぶり返していた。頭痛自体はひどくないのだが、倦怠感というか、やる気が出ないというか——。鬱にやや近い状態というべきか。脳の一部が傷んでいるのだろう。

とはいえ、様々なプロジェクトがぼくの周りで進んでいるので、休むわけにはいかない。ようやく目処がついたので、日月と仕事を休み、身体は楽になった。

最近、読んだ本の一部。

『金利「時間の価格」の物語』(エドワード・チャンセラー 日本経済新聞社出版)は他の本と平行していたとはいえ、読了まで約3週間かかかった。

大雑把に言えば、金利とは時間を買うことだ。

〈腹を空かせた人間は、六カ月後の食事よりも今日の食事に高い価値があるとみなす〉からこそ、金利を払ってでも今の果実を得ようとする。若者は当然のようにせっかちで、現金に困ることが多い、若いときに借金をし、年を取ってから債務を返したりする。年を取った人間はこの「時間選好」が弱くなるため、借入をしたがらない。高齢化が進んでいる国は金利が低下する傾向にある。その典型が今の日本である、と。

バビロニア時代から「金利」を通して、世界史を読み解いていく。この本では超高齢少子化の象徴として、度々日本が登場する。

著者のエドワード・チャンセラーの指摘するように正常な経済の維持には一定以上の金利が必要であることは良く分かる。

〈資本主義とは人々でリスクを取ることで報いられ、また罰せられる経済システム〉である。そのリスクが金利である。リスクの価格が低く設定されすぎると〈人々は過剰なリスクを取ることで新たなリスクが増大し、金融システムが不安定になる〉。そして低金利が格差を生み、格差が低金利を生むと書く。

では日本は金利を上げればいいのか——。そうできない理由はこの本を読めば分かる。現代の経済は国境を越えてマネーが行き来する。一つの国だけが解決できることは少ない。

4000円と高額で読む時間もかかるが、それだけ価値のある一冊。


『ことばの番人』(高橋秀実 集英社インターナショナル)と『文にあたる』(牟田都子 亜紀書房)はまた別の機会に。校正という、地味ではあるが非常に重要な仕事をこなす職人たちの生き様に勇気をもらう。どちらも良書。誰もが文章を書く時代だからこそ、一読の価値あり。

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