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39歳父の竹修行奮闘記 第三十六回「憧れのショウケ作り!」
【前回までのあらすじ 】
39歳でひょんなことから別府で竹細工を学ぶことになった私。第一課題「六つ目編み盛りかご」、第二課題「鉄鉢盛りかご」が完成し、夏休みを経て、いよいよ二学期、第三課題「網代編み小物入れ」、第四課題「菊底編みバスケット」、第五課題「亀甲編み平皿」、第六課題「掛け花籠」、第七課題「炭斗かご」が完成。2019年3月には地元に帰り自営を始めることに。
どうしてもショウケ(丸ざる)が作りたい!
以前、古道具屋で購入したショウケを解体して見よう見まねで作ってみた様子をアップした。
その後、どうしても自己流ではうまくいかず、ネット上に作り方などの情報もなく途方に暮れる私。
そこで、以前に鍋敷き作りを教えてもらった、大分県由布市で笑竹堂という屋号で夫婦で竹かご作りを行っている三原さんに「ショウケの作り方を教えてほしい!」と相談したところ、なんと快諾をいただき、教えてもらうことに!
せっかくの機会、私だけではもったいないので、クラスメートの二人(ジビエを捌いていたイケメン(右)と自然農をやりながら竹を学ぶひげおじさん(左))も誘って一緒に教わってきた。
これからショウケ(丸ざる)の作り方を説明しようと思うが、ショウケは竹かご作りの中でも難易度Sレベルの難物である。そのラスボスレベルの強敵に竹細工を始めて1年足らずの3人が挑む。そしてここに記す作り方は他でもない、我々3人のための備忘録である。
まずは材料を取らないと話にならない。今回は事前に自宅で材料を用意していき、2日間で編み方のみ教えていただいた。
材料(直径40cmの丸ざる)
竹細工をやっていない方にはなかなか解読不能な情報だとは思うが、要するに直径40cmのザルを一つ作るのに、長さ130m分(!)の編みひごが必要になり、さらに材料の種類もめちゃくちゃ多い、ということがわかっていただければよいかと。
では早速作って行こう。
①輪と外輪を作る
輪、外輪はともに合わせ削り(ともに表皮側)をして、合わせ部分2箇所に溝を彫り針金止めをする。外輪は表皮側をしっかりめ(かまぼこ面に近い)に面取り。針金止めをしてからともに節部分を削る(曲げる前に削るとハジく可能性が高い)
輪の外側に外輪を試しにハメて見て、ぴったりくらいであればOK。間に編み生地が挟まるので、キツすぎる場合は外輪をハメるのが難しくなる。
②寸法竹を作る
ショウケの深さは今回は15cm。まず輪の直径部分の2点に適当な身竹を渡し、深さが15cmとなる長さ(アーチ)をはかり、印をつけておく。この寸法竹を元に、このあと編んでいく。
③4往復編む
まず②で作った寸法竹に編みひご(アラ)を当てながら、輪から3cmほどはみ出した状態で4往復編む。ひごは輪の下から入れ、ねじり曲げて上から出す。この4往復に関しては1往復ごとにひごを切る。
④たて骨を入れる
4往復編んだ編みひごにたて骨を表皮と身竹を並べてござめ編みの要領で入れていく。中心から見て対称になるように、表皮と身竹の並びは調整する。この段階ではたて骨の間隔はまだ気にしなくてよい。
⑤釣りを張る
水平を意識しながら、両側に2往復編む。ねじり止めの位置によって水平が崩れていくので、側面から見ながら調整する。
その後、本来は編みひごを使って、円形がゆがまないように輪を固定するが(どうしても編みひごの張力で輪が楕円に広がるため)、ひごの場合切れてしまう可能性が高いので、今回私は太目の針金を十字に渡して釣りとした。
⑥たて骨の間隔を揃える
編んだひごの束を、輪の中心に来るよう調整する。右左の半円の長さが均等になるよう身竹や巻尺で計ってやるとよい。
たて骨の間隔が均等になるように揃える。
⑦5本編んで目抜きを入れる
中心から左右両方に5本編む。編みひごは全て輪でねじり曲げる。途中では接げないので、長さが足りない場合は新たにひごを用意する。ねじり曲げるポイントがずれると水平が崩れていくので、ねじり曲げるポイントには注意する。
5本編んだら、目抜きを入れる。目抜きは最後に縁を巻いた後の隙間を隠すためのもの。片方に合わせ部分を重ねておく。目抜きは接着や固定は行わない。今後は必ず目抜きも一緒にすくい、押さえ編んで行く。
⑧23cmまで編み進める
水平を逐一確認しながら、左右満遍なく幅が23cmになるまでひたすら編んでいく。この少しずつ丸ざるができあがっていく感覚が編んでいてたまらない。
⑨たて骨を1本落とす
ここから少しずつ底部分を立ち上げていく。まず外側のたて骨を1本ずつ落とす(つまり輪の中に入れる)。たて骨を落とした後は、輪と落としたたて骨を1本と見なして編んでいく(つまり輪と落としたたて骨の間は編まなくていい)。ただ最初の1本だけは間に差し込んでよい(そうしないと外側にひごがはねるので)ここからはたて骨を中心に集めるように、立ち上げながら編んでいく。
⑩2本目を落とす
2本目のたて骨と輪の間隔が狭まってきたら(編もうにもひごが折れそうな距離に近づいてきたら)、まずいままで編んだ分を目詰め(編み目を詰めること)を行う。適当な竹を用意して、叩いて目詰めする。
このタイミングでたて骨の2枚剥ぎの端を切り離す。たて骨は少しずつ重なるように調整していく。重なる際は表皮が上になるように。
2本目を落として、ひごを幅1.8mmのオコシに変えて編んでいく。
⑪3本目を落とす
3本目のたて骨と輪の間隔が狭まってきたら、3本目を落とす。1本目は輪の少し上辺りで斜めに切る。ここからはひごを1.5mmのオリに変えて編む。
⑫4本目は落とさない
輪と4本目の隙間が狭まってきても、4本目は落とさない。しかし編むのがキツイので、輪と4本目を一緒にした状態で編みひご3本分編む。
⑬たて骨7本だけで編む
ここからは輪をくぐらずに、たて骨7本(落とした左右の3本を除いた7本)のみで編んでいく。節部分は折れやすいので、節間のみを使ってもよい。折り返す必要はないので、1本ずつ切ってよい。
編んだ分を輪に押し当てて、輪の上に1cmほど出るまで編む。
⑭押し込む
余分なたて骨と編みひごをカットし、外に出た部分を内側に押し込む。左右いっぺんには入らないので、片方ずつ入れていくイメージ。ひごが折れるのが怖い場合は少し水につけてもよい。
押し込んだ後は生地を輪に沿わせる。
⑮外輪、内々輪、内輪を取り付ける
まず下から外輪をはめ込む。その後、内輪と内々輪を取り付ける。内輪と内々輪は現場あわせで、なるべく突っ張るようにはめ込む。突き合わせで固定する。輪から飛び出た余分なたて骨と編みひごをカットする。
⑯スミ付け
縁を巻くための目安となる印をつける。外輪の外周をはかり、5回巻きか6回巻きかによって外周を等分し、印をつけていく。たて骨の上に重ねられる箇所に最後の縁巻き竹を差し込むので、スタートはこのあたり(えんぴつ部分)。
⑰縁巻き
1回目はスミ付けした印の位置を目安に巻き、2回目以降はその隣に巻き竹がぴったり隣り合うように巻いていく。縁巻き竹を通す穴の位置は決まっていないので、そのつど間隔を見ながらあけていく。たて骨があったら、くじりで貫く。
※簡単に書いているが、縁巻きはとにかくとにかく難しいし、まだ要領がわかっていないので、説明は簡単に済ませておく。
⑱だて輪を入れる
内側の縁のすぐ下部分にだて輪を入れる。下がってきてしまいがちなので、何箇所かを針金止めして、突きあわせではめ込むとよい。
⑲完成!!!
自己流を勘定に入れなければ、人生初のショウケ作り。正直、売り物にできる仕上がりではなかったが、とにかく作っていて楽しすぎて、時間が経つのを忘れて没頭した。
そして家に持ち帰って、あまりの嬉しさに少し泣いた。本当に作りたくて作りたくて仕方なかったショウケ。ようやく作れた。ようやくスタートラインに立てた。
今回一度作ってみたうえで、以前に紹介した現代の名工 廣島一夫さんが作ったショウケの画像を確認してみる。
控えめに申し上げて、化け物だと思う。美しすぎてため息がでる。一生かかってもこんな境地には達することができないだろうけど、その美しさの得がたさの一端を知れただけでも、大きな進歩だ。
材料の種類も手順も多くて、経済原理に照らし合わせたらどう考えても「合わない」ショウケ作りだが、ショウケには一種形容しがたいパワーがあって、それは作っている最中からビシビシと伝わってくるパワーで、マーケットやらニーズやらライフスタイルやら、そんなものどうでもよくなるほどのパワーとデザインと実用性を兼ね備えた人類の叡智の結晶だ。どんな洗練されたデザインも、ショウケの完成された美にはかなわない、と私は思う。
四十手前にしてようやくショウケ作りのスタートラインに立てた。
死ぬまでにいくつ作れるかわからないが、廣島一夫さんに憧れながら、自分の作るショウケにパワーをもらいながら、今後もショウケを作り続けよう。
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