39歳父の竹修行奮闘記 第二十九回「ざるを解剖して、再現せよ!②」
【前回までのあらすじ 】
39歳でひょんなことから別府で竹細工を学ぶことになった私。第一課題「六つ目編み盛りかご」、第二課題「鉄鉢盛りかご」が完成し、夏休みを経て、いよいよ二学期、第三課題「網代編み小物入れ」、第4課題「菊底編みバスケット」、第五課題「亀甲編み平皿」が完成し、家でも竹仕事をスタート。前回は古道具屋で買ったざるをバラしたが、再現なるか?
前回、古道具屋で買った丸ざるをバラした。モデルにして再現しようとしてるざるはこちら。
ばらして採寸したことで必要な材料の寸法がわかったので、ひたすら材料を作る。
そしていざ試作スタート。
まずは以前にDVDで観た映像を参考に、中縁に編みひごをひっかけながら、間に骨ひごを等間隔に入れながらござめ編みで5本編む。
これでまずざるの深さが決まるはずだ。バラしたざるの真ん中のひごの長さを参考に、同じ深さになるよう調整する。
そして少しづつ骨ひごを立ち上げながら両方向にござめ編みで編んでいく。
お、なんかざるらしくなってきてる!
そこに外縁と内縁を付けて、まずワイヤーで固定してみる。
この時点でざるが楕円形になってしまった…立ち上げの手順に問題があったようだ。
そして今年生えてきたばかりの新子竹で作った縁を巻いていけば、とりあえず完成だ。
じゃーん。
画像で見るとちょっとそれっぽいが、細部は実は粗だらけである。
まずは今回の反省点と次回の改善策をまとめてみる。
①丸くない!
反省点
底編みの段階ではそこそこ丸かったが、外縁と内縁を取り付けたら丸が歪んでしまった。
考えられる原因
骨ひごを立ち上げていくタイミングが遅く、一気に立ち上げたせいで、骨ひごと垂直な部分が伸びて楕円形になったようだ。
改善策
骨ひごは中心部分をなるべく早めに立ち上げて、南北と東西が同じアーチで立ち上がるように気をつけてみる。
②編みひごがはみ出てる!
反省点
本来は縁の中に差し込まれるはずの編みひごが縁から出てしまった。
原因
編みひごの余分を中縁ぎりぎりで早い段階で切りそろえてしまったことが原因と思われる。
改善策
余分なひごはぎりぎりで切らずに、外縁内縁を取り付けてから、縁から出た上の部分のみをカットする。
③縁巻きがきれいじゃない!
反省点
縁巻きがきれいに巻けず、中の外縁と内縁が隙間から見えてしまう箇所が多かった。
原因
一回目の巻きの間隔を広く取りすぎ、間を巻き潰すことができなかった。また巻縁を通す穴が遠いせいで隙間が空いてしまうケースも多かった。
改善策
4回巻きの1回目で隙間を空け過ぎない。また隣り合う巻縁の通す穴はなるべく近くに空けるようにする。
ある程度原因と改善策がはっきりしているのはこのくらいだろうか。他にも細々と原因がわからないことがたくさんあるが、それは次回作ったらまた判明するかもしれない。
初めて作った丸ざる。確かに近くで見ると粗が目立つ。職人気質の人なら「こんなものー!!」と床に叩きつけたり壊したり、薪にくべて燃やしたりするのかもしれない。
だが私は、初号機からすでに我が子のように愛しい。(絶望的に職人に向いてない)
今回作ってみてひとつわかったことがある。
巻き縁のショウケ(丸ざる)作りは、難易度が恐ろしく高い。
どおりでネット上に情報がないわけである。趣味で軽い気持ちで作れるものでもなければ、誰にも教わらずに実物をばらして簡単に再現できるようなものでもない。作りながら、今回のチャレンジの無謀さに気づき、ずっとニヤニヤしていた。
特に巻き縁に関しては、一定間隔に骨竹が並んでいてその間を通して規則的に巻いていくタイプ(学校では第4課題のバスケットがそれだ)とは根本的に異なり、極めて狭いところを縁竹が通っていく。
今週末の3連休に宮崎県の日之影町というところに旅行に行く予定だが、日之影町に住んでいた廣島一夫さんという職人さんは、特に巻き縁のショウケを恐ろしくきれいに作ることで有名だ。
廣島一夫さんが作ったショウケの実物を見る前に、巻き縁のショウケ作りの大変さを少しでも体感できたことが、今回一番の収穫だ。
そして何より、粗は目立つし耐久性はないにせよ、ざるとして使えるものができあがった。これは素直に嬉しい。(大分といえばかぼす)
反省点が多いということは、改善の余地がまだまだ残されているということ。ここからどこまで成長していけるか、我ながら楽しみだ。
通常は試作段階の自分の作品は一種の「恥部」のようなもので、衆目に晒すことを憚る人が多いかもしれないが、私はあまり気にならないし、むしろ最初はうまくいかないことで親近感を持ってもらえたら嬉しい。また今後竹を学びたい人にとっては励みになるのではなかろうか。最初からうまくできるのなら、はるばる別府まで学びに来たりしない。
次回は、さきほども少し紹介したが、宮崎県日之影町の旅行記をお送りする予定。青物職人にとっては聖地とも言える日之影町で、どんな出会いが待っているのか!いやはや楽しみだ!
乞うご期待!