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唄工房デンガクズ Vol.1「初の出店曲作り」
note上で100円で曲作りを請け負うサービスをローンチした(「ローンチ」と言ってみたかっただけなのは秘密だ)。
対面での曲作りサービスで経験を積もうと、昨日近所の公民館で行われたイベントに出店してきた。
得も言われぬ得体のしれなさとあやしさに、ほくそえむ私。どんな曲が生まれるのだろう。
近所のおばあちゃんたちが来た。キクちゃんはかつて「林檎樹」という名前の喫茶店をやっていたという話をしていたので、今はなき林檎樹のテーマを作る。その他にも、冗談ばかり言ってる人気者のおばあちゃんの唄を作ったり、婦人会のテーマ曲を作ったり、まさに何でもアリである。
イベントも中盤に差し掛かった頃、どこから情報を仕入れたのか、曲作りを目的に来場された母子が。娘さんは音楽科のある高校でトロンボーンを吹いてるとか。昨晩から楽しみにしてくれていたらしく、期待に応えられるか若干不安になる。
音色確認のため楽器をすべて弾いたところ(今回はバイオリン、二胡、ティンホイッスル、三線、ブズーキ、ギターの6種類)、選んだ楽器は二胡。やはり若い子でもあの音色は琴線に触れるのだろうか。悩んだ末にひねりだしてくれたタイトルは「喜怒哀楽」、そして「赤い大きな建物のイメージ」、「うぃーんという感じで」というリクエストをもらう。はっはっは、想像を遥かに超えるリクエスト内容。
あーでもないこーでもないと弾くこと5分ほど、二胡の独奏曲「喜怒哀楽」が仕上がり、動画を撮影してもらう。そこでお母さん、
「この曲に歌詞つけてみたら?」
なんてアグレッシヴなアドヴァイス!そこからは娘さんが「私、文章力ないから…」と言いながらも言葉を紡ぎ出してくれる。
うれしいことがありました
久しぶりに家族でごはん
ありふれた日常が
あっという間にすぎさっていく
ギターに持ち替えてカポでキーを調整して、まだ湯気が出ている出来立ての曲に歌詞を当てはめながら、メロディーを調整していく。
そして最後に一緒に歌う。
おっかなびっくりだった娘さん、少しずつ声が出始める。透き通った、混じりけのない澄んだ声に、なぜか私が泣きそうになる。なんだろう、この空間と時間は。私向けのセラピーのような気さえしてくる。至福。
仕上がった歌はお客さんが動画撮影していたので、私の手元には遺っていない。生まれた途端、巣立っていく曲。これもまた音楽の一回性という原点に戻るにはいい。
お客さんは非常に喜んでくれて、特に娘さんの方は最初と表情がまったく変わっていて、次回はいつかとしきりに聞かれた。嗚呼、嬉しい。思いつきで始めた「唄工房デンガクズ」の初仕事としては、これ以上ないほど、むしろ出来すぎで怖いほど、すばらしい船出となった。
歌作り、曲作りというプロセスを同じ空間で経験、共有すること。
今回みたいに上手く行くことばかりではないだろうけど、何かが確かに響き合って、取るに足らないけどすごく得難い何かが湧き出す瞬間に立ち会えたことに、至上の悦びを感じた。
唄工房デンガクズの試みは、つづく。
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