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「東京のブルックリン、高円寺へ大移動」(アートホテル「BnA」のこれまで(2)高円寺編)

あんちゃんこと大黒けんじをチームに加え、創業メンバーがそろったBnA、2015年晴れて法人化し、高円寺でホテル第一号を開業することに…


高円寺という町

大黒との出会いは高円寺との出会いでもありました。
アーティストやミュージシャンなどの自由人達が住み、個人店舗を経営し、好き勝手遊んでいる町、高円寺。その当時、大黒が見つけてきた夜逃げした廃スナックをDIYで改装し「妄想インドカレーネグラ」が出店したり、その2階をアーティストのOgiさんが占拠してしまったり…大黒とその周りのコミュニティでは協力しながら企画し、モノをつくり、次々とおもしろい事象が起こり、その過程でコミュニティが広がっていく状態。それはどこか懐かしく、僕らが学生時代慣れ親しんだアメリカのBurning Man/DIY/アングラカルチャーのアナキズム精神そのものでした。

夜逃げしてしまったスナックを一時的に改装した「Horo Stand」
今や有名な「妄想インドカレーねぐら」の初店舗
キャプションも何もなく、気づいたら内容が変わっているギャラリー
#LOSING THEORY

高円寺を「東京のBushwick(ブルックリンの東地区)」と呼び、海外クリエイターが虜になるに違いない、と確信を持った僕らは、全員高円寺に引っ越し街に当分コミットする事を決意。(見事に自分が高円寺沼にハマってしまった僕は8年後の今まだ高円寺に住んでいます…)
そして、実際、BnAをオープンしてから高円寺は徐々に海外メディアに取り上げられるようになり、今では多くの外国人が訪れるようになりました。

Guardianは「Coolest Neighborhood」、Conde Nastは「クリエイターのサンクチュアリ」として高円寺をピックアップ:

見えてきたBnAのビジョン

このころ大黒との会話を通してBnAのビジョンも見えてきました。彼は8年間、高円寺のAMP Cafeというオルタナティブスペースでコミュニティを運営し、アーティストたちと様々な尖った取り組みを行ってきたが、コミュニティの中でお金が回っているだけで世間からも認知されず、キツい、と。
一方で、池袋のプロトタイプで世界中の名のあるクリエイターたちが日本のアーティストコミュニティにアクセスしたがっていることはわかっていました。

BnAはコミュニティーに根差したアートホテルという形をとることで、世界中の尖ったローカルコミュニティと、そのカルチャーを求める旅人たちをつなげ、お互いに有益な関係を築くためのプラットフォームにできるのではないか、そう思ったのです。海外からの旅行客はホテルを通して面白いローカルにアクセスができるし、その町のコミュニティは旅行客を通して金銭的メリットだけではなく海外への露出にもつながります。

ホテルはギャラリー等とちがい、旅行者は必ずどこかに宿泊しないといけない。Booking.comのような予約サイトも多く、広い層に訴求できることも特徴です。また、施設としてホテルは宿泊費で稼ぐことができるので、ある程度共用部はオルタナティブスペースとして自由にできるのではないかという算段もありました。

実際にオープンしてから少したってから大黒が、「たった2部屋であったとしても『海外から自分たちの活動を見に来る人がいる』という事実がコミュニティーの視点と姿勢を大きく変えたと思う。」と言っていたことを覚えています。

BnA HOTEL Koenjiのオープン

そして2015年秋、足を使った物件探しも奏功し、高円寺の駅前、30秒のペンシルビル「フィンガービル」を無事契約することができました。(物件探しも、色々なドラマがあったのですが、キリがないので…)もちろん、自己資金も限られるため、金融公庫の融資とクラウドファンディングをフルで活用しつつ、できるところは友人総出でDIY。赤子を背負った友人がクッションカバーまで縫い上げてくれたりと、本当に多くの方々に協力いただきました。

ついにゲットした極小ビル「フィンガービル」


DIYで作ったホテル、何十人もの友達が手伝いに来てくれました
DIYで作ったホテル、何十人もの友達が手伝いに来てくれました

BnA HOTEL Koenjiのメイキングビデオ:


2016年の春に無事?オープンを迎えたBnA HOTEL Koenjiは17平米程度の部屋2部屋とショットバー、地下イベントスペースで構成される極小ホテル。アーティストは高円寺ローカルの高橋洋平さんと、Ryuichi Oginoさん。それぞれのスタイルで全く違うテイストの部屋ができました。

チーム全員が高円寺に引っ越し、総出でオペレーションを回していたこのホテル。オープン当初はいろいろ苦労しましたが、国内外多くのメディアにも取り上げていただき、地元のコミュニティマネージャーの"God" アキラが入社してからは順調に成長、高円寺の一つのカルチャースポットとして認識され、世界中から本当に様々な人が遊びに来てくれるようになりました。(BnA HOTEL Koenjiは現在、コロナを機に創業メンバーの大黒が自分の会社で引き継ぎ、バーは不定期営業になっています。)

開業一発目はワールドビジネスサテライト

ちなみに、このBnA HOTEL Koenji、さすがに2部屋では収支がどうにもならないのですが、もともとはここを起点に高円寺中に部屋を作り、都市の分散型ホテルを実現することがゴールでした。しかし、色々な不動産会社を回り、物件を探し続けたのですが、ただでさえ人気で物件が出ない高円寺で、旅館業法に適応できるちょうどいい物件は結局出ず今日まで来てしまっています。

当初の分散型ホテル構想。でも、俺たちが機能つくんなくても高円寺ってなんでもそろってて、家みたいに心地いい町なんだよね。

BnA HOTEL Koenji、そして高円寺との関係については Monopo の poweredby.tokyoが3パートシリーズとして映像を作ってくれてます:

THE CREATORS

THE ARTIST

THE COLLECTIVE


BnA HOTEL Koenjiという小さいながらもホテルを一件持ったことで、BnAのPoC(コンセプトの証明)となり、その後のパートナーであるデベロッパーのコロンビア・ワークス株式会社、そして三井不動産株式会社との出会いにもつながりました。次回は拡大フェーズ、しかしそこには大きな壁が立ちはだかっていました…

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(その(3)に続く)


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