「出口の見えない3年間」(アートホテル「BnA」のこれまで(4)コロナ編)
京都、秋葉原をなんとかオープンさせた僕らは、そのまま休む間もなく日本橋のオープンに突っ込んでいきます。しかし、待ち受けていたのはあの流行り病…
1~3話は以下から!
BnA_WALLプロジェクトと日本橋
秋葉原・京都の企画と同時に、東京では三井不動産と日本橋でのプロジェクト「BnA_WALL」が走り出していました。数人の会社で3つプロジェクト並行、今考えたら頭おかしい。
BnA_WALLはその名の通り、地下のアトリエスペースと1Fのラウンジをつなぐ吹き抜けにそびえたつ、6m x 6mの巨大壁画「WALL」をメインコンテンツとするアートホテルです。
高円寺や虎ノ門などで巨大屋外壁画を手掛けてきた僕らは、次世代の巨大壁画アーティストが育ちにくい環境を課題に感じていました。練習できる場が大量にある欧米と違い、ストリートアートが存在しない日本では若手が大きな壁画を描く機会はほとんどありません。そのため、たまに大きな案件が出てくると経験のある決まったアーティスト達に仕事があつまる構造になってしまっていました。WALLはより多くのアーティストに巨大壁画制作の機会を提供、ホテルに滞在するゲストはアートの製作過程というダイナミックなプロセスをみることができる、そんな場所です。
ちなみに Koenji Mural City Projectとして始まったプロジェクトは大黒や、ヌリーズ株式会社によって中野ミューラルプロジェクトとして現在、中野駅周辺に壁画の製作を続けています。(屋外壁画の問い合わせ、待ってます!)
WALLは、秋葉原でもコラボした佐藤拓(PARCEL)を総合ディレクターとして迎え、細野晃太朗 (AA)、カワムラユキ(OIRAN)、柳澤春馬、小川喜之 (Beams Cultuart)、SIDE CORE、YAR、安田昂弘(CEKAI)という豪華ディレクター陣とEveryday Holiday Squad、Jon Jon Green、Yoshirotten、上山悠二、Konel、椋本真理子、カワイハルナ、苦虫ツヨシ&Ocho、Colliu、岩村寛人、Mako Principal、元木大輔、Bien、Magmaの14名のアーティストで制作しました。
余談:グレーター日本橋エリア
すこし話がずれますが、BnA_WALLはグレーター日本橋エリア(昭和通りを超え、小伝馬町~人形町にかけたエリア)の活性化をゴールに、三井不動産にお声がけいただき実現したプロジェクトです。大規模開発を行ったCOREDOサイドに比べて、大規模開発用地の取得が困難なこちらのエリア。立地が良く、放っておくとマンションが建ってしまい町の人通りがなくなってしまうため、三井不動産はめぼしい物件を取得しては僕らや、Back Packer’s JapanのCITAN、GreenzプロデュースのAndon、YadokariのBettara Stand(閉店)、後にPizza Sliceや北出食堂の入るComissaryやsta.等が誘致され、グランドプランではなく人のつながりでよりオーガニックな町おこしが始まっています。
オリンピックに向けて資金調達するも…
開業費用も、運営費用もすべてデべ側が出す「MC契約」の京都・秋葉原とちがい、日本橋は自社で運営する賃貸借契約。三井不動産がAB工事は負担してくれるものの、C工事・内装費も億単位での資金が必要でした。当時は2部屋のホテルしかない極小ベンチャーの「大丈夫です、金集められます」という、根拠のない言い切りを信じてくださった三井不動産は本当に懐が深い会社だな、と…
言ってしまったからには集めるしかない。20名以上のエンジェル投資家と、銀行からの融資を数億集め、なんとか2020年、オリンピック前の開業にこぎつけられる状態まで持って行きました。
15㎡の高円寺でさえ1泊8万円の予約が入っていたオリンピック期間。予定通りで行けば6月にWALLをオープンし、夏だけで数千万円の利益をたたき出し、一気に軌道に乗るはずでした。しかし、その目論見は宇髄天元もびっくりするぐらいド派手に吹き飛びます…
ついに来たコロナ
2020年3月、いよいよ開業へのラストスパートが始まるというタイミング、ご存じの通りパンデミックが発生。事態は悪化し続け、4月のロックダウン、オリンピックの延期と市場環境が一変します。
勿論、ホテル事業は大打撃、悪夢のような3年が始まりました。
全く先が見えない中で、売上は干上がり、キャッシュは減っていく一方。ホテルの新規案件が完全になくなったため、デザインチームにも解散してもらい、オフィスも引き払いました。いわゆるハードシングスです。
オープンを延期し続けていたWALLも2021年にはさすがにオープンさせないといけなくなり、21年4月にオープンしたものの、インバウンドが8割以上のBnA、鎖国した状態では売上が100万円にも届かない月もあり、融資、助成金、そして僕のコンサル収入※でなんとか食いつなぐ状態が1年半続きました。暇だと雰囲気が悪くなるのが会社というもの、潰れる恐怖より、悪化していく人間関係のほうが正直精神的には厳しかったです。
※BnAではボスコン、ベイン、アクセンチュア等の元外資コンサルメンバーで国内外の市場調査、新規事業開発、事業デューデリジェンス、新規事業開発、等のコンサルティングも手掛けています。大体なんでもできます、何かあればいつでも相談してください!
また、コロナ融資は受けられるものの、個人保障が入った融資額が増えると自己破産がちらつき、思い切った動きが出来なくなる。創業メンバーと、ピボットや会社の方向性を延々と議論するものの結論は出ず。血迷って、事業再構築補助金で冷凍餃子工場を作る企画を通したこともありました。(採択されてからなんとか思いとどまりましたが…)結果的に他の創業メンバーは退社し、僕1人が残ることに。(ちなみに、創業メンバー3人とは今でも仲は良く、現在でも全員とプロジェクトベースでBnAには携わってもらってます。)
この期間、様々な形でサポートいただいたパートナーであるコロンビア・ワークス、そして三井不動産や、仕事をくれた方々、暖かい目で見守ってくださった株主の皆様、そしてそんな状況でも見捨てず残ってくれたメンバー、本当にお世話になりました。
余談:コロナ禍での実験的取り組み
コロナ禍で数少ない良かったことというと、ホテルがほぼ埋まっていないため、通常営業中であれば絶対にできないような企画を実施できた、ということでしょうか?
岩壁音楽祭のチームと開催したホテル丸ごとフェス「Stay in Ambient」。地下でSeihoくんのアンビエント音楽ライブを行い、同時に廊下や客室全館に配信することで、三密を避けながら音楽に浸る体験を実現しました。(レビュー記事はこちら)
他にも、イマーシブシアターチームDramatic Diningと開催したホテル一棟使ったイマーシブダンスパフォーマンス「Dancing in the Nightmare」や、ダンスチームSpellsのフェス等、普段のホテルでは到底無理だっただろう企画を実現できたのは良かったかなと思ってます。(大型企画についてはまた別の記事も書こうかなと思いますがさわりだけ。)
ついに開国…
そして、2022年10月、グダグダと意味なく国境開放を遅らせ続けていた日本政府もついに他国に半年以上遅れて国境を開放。(マジで、この半年でどれぐらいのビジネスがつぶれたか。どんだけの人が苦しんだか。ご丁寧に検討だけ続けた政治家たちに伝えたい。伝わらないよね。)
一気に観光客がもどってきて、今期は超久しぶりの黒字予定。でも、会社としては前途多難。組織の課題や物価高など色々ありますが、個人的には特に3年間、守ることばかり考えていた自分自身の消極的なマインドをまた攻めるスタンスに戻すのに苦労している半年でした。やっとこさキャッシュがたまり始めた今、次何をするのか。むしろコロナという「言い訳」がなくなったことで個人的にはよりプレッシャーを感じています。
8月からBnAも9期目を迎えます。10年目に向けて再び前進できるような年にしなければ。次何を考えているのか、についてはまた別途書いていこうと思います。
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(いったん、このシリーズはおわり!)
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