彼の目が見ていたのは
盲目のその人の
奏でる音色は
誰よりも
何よりも
自由で
のびやかで
それでいて
繊細で
教会のホールの
高い天井に
羽ばたく鳥のように
立ち上っていった
弾き終えた彼は弓を下ろし
観客の共鳴を確かめるかのように
しばし 空間に残る余韻を
見ている
このうえなき明晰さで
この世のものは見えないその目で
空気のかすかなふるえがとまり 響きがゆっくりと消え去り
嵐のような拍手が聞える前の
ほんの数秒間の
静寂のなかで
Inspired by Jiro.K
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