【書評】LIFE SCIENCE-長生きせざるをえない時代の生命科学講義

今回は『LIFE SCIENCE‐長生きせざるをえない時代の生命科学講義』という本をご紹介したいと思います。

著者は大阪大学名誉教授の吉森保さん。2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典教授の弟子で、オートファジー研究の世界的権威の1人です。2019年には紫綬褒章も受賞されているみたいですね。

流行りのオートファジーをその研究の第一人者の言葉で説明してもらえるということで、すぐにアマゾンでぽちりました。科学的な知識がない私には理解しきれない部分もありましたが、基本的に平易な言葉で説明してくれているので読みやすかったですし、何より自分の健康に直接的な利益があるテーマだったので、最後まで興味深く読むことができました。

オートファジーや健康寿命の延長というテーマに興味がわいたので、本書中で紹介されている『LIFE SPAN』(ハーバード大学の教授が書いた世界的ベストセラー)も読みましたし、関係する他の本も読んでみたいと考えています。

◇オートファジーとは?

吉森教授によれば、オートファジーとは「細胞の中のものを回収して、分解してリサイクルする現象」のことだそうです。つまり、体の中の古いタンパク質などを、新しい物質に作りかえる現象のことです。

(日本語では「自食作用」といいます。自分の中の物質を食べて栄養を生み出すようなものなのでそう呼ばれるのでしょうね。)

オートファジーには、大きく以下の3つの役割があるそうです。

  • 飢餓状態になったときに、細胞の中身をオートファジーで分解して栄養源にする

  • 細胞の新陳代謝を行う

  • 細胞内の有害物を除去する

①については前からなんとなく知っていました(「トリコ」という漫画では、主人公がピンチのときにオートファジーで栄養を作って、火事場の馬鹿力を発揮するなんていうシーンもあります)。しかし、②と③については考えたこともありませんでした。

◇オートファジーで老化が抑制される

吉森教授によれば、老化の最大の特徴は様々な病気にかかりやすくなることだとされています(そのような病気を加齢性疾患といいます)。加齢性疾患には、たとえば肝臓の繊維病、パーキンソン病、アルツハイマー病、生活習慣病があります。

そして、オートファジーには、そういった加齢性疾患の一部について、発生を食い止める働きがあるとされています。

また、上記のとおり、オートファジーには細胞内の有害物を除去する働きもあるため、免疫力低下の防止にもつながるとされています。

さらに、まだ実験で示されたわけではないものの、オートファジーはお肌の老化を防ぐ可能性もあるそうです(怪しい話のようにも聞こえますが、皮膚も角化細胞という細胞の一種であることを考えると、オートファジーの影響を受けることは感覚的にも不思議ではないですね。)。

◇オートファジーを活性化する方法

本書においては、日常生活においてオートファジーを活性化させる方法として、以下のようなものがあげられています。

  • 「スペルミジン」という成分が含まれた食材を食べる(納豆、キノコ、みそ、しょうゆ、チーズなど)

  • 「カテキン」の含まれたお茶を飲む

  • 「アスタキサンチン」という赤色天然色素が含まれたイクラやエビを食べる

  • 「レスベラトロール」という成分(ポリフェノールの一種)が含まれたものを飲む・食べる(ブドウ、赤ワインなど)

  • プチ断食やカロリー制限をする

  • 運動する

  • 高脂肪食を避ける(揚げ物、肉の脂身など)

これを読んで思った方もいるかもしれませんが、結局、昔から体によいとされていることをするのが、オートファジーを活性化することにつながるそうです。

以上のほかにも、科学的な考え方とは何か、細胞の基本的な仕組み、科学論文が発表される過程なども平易な言葉で説明されていて、とても面白かったです。科学自体に興味があるわけではない方(私もそうです)でも、楽しんで読めるのではないかと思います。


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