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身に纏う色

13ストーリー#2

ちょっとした旅からクパンの家に戻ると、小さな小包が届いていた。ガサガサと袋を開けると、中には黒いリネンで仕立てたワンピース。「う〜ん、素敵やけど私には大きいかもなあ」と、その夜は試さずにベッドに倒れ込んでしまった。

翌朝、そのワンピース着てみると、あまりにも予想が裏切られて、笑ってしまいそうだった。心配無用。ぴったりなのだ。鏡の前で右向き、左向き、くるくるくる…マカッヤに「どう?」と聞いてみると「アロールのイカット、合わしてみれば?」と言う。そう、東ヌサトゥンガラ州に住む楽しみの一つは「染織物を身に纏う」こと。

棚からイカットを引っ張りだし、顔をうずめる。染料の匂いがまだ残っている、アロールの陸と海の匂い。

このイカットの故郷は、Taman Lautー海の公園ー、アロール諸島の小さな島。数カ月前、私はそこにいた。事前に聞いていないと、それとはわからないような小さな舟着き場から、海の公園に浮かぶ島へと向かった。

「バッ、バッバッバッバッバ…」

エンジンをかけた舟が、透明がかった青が揺らぐ海に乗り出す。ソーダ色のゼリーに光が当たったみたいに、海面が光り、しばらくすると、今度は群青の海。東ヌサトゥンガラ州にいると海の色と表情の豊かさを日々、実感する。ここアロールでは、それもひとしおだ。海の公園では、さらにたくさんの色を見つけることになる。この島の天然染料イカットは、木の皮や根、葉、ウコンといった伝統的な染料のほかに、新しく発見した海の素材を使う。朝の涼しいうちに村のママと引き潮の海に染料の素材を探しに出かけた。

橙、茶、薄緑など色とりどりの海綿を岩からこそげる。大きなナメクジのようなアメフラシを手にしたママに「それは何色?」とたずねると、ママがアメフラシの腹にスッとナイフを入れた。すると、腹からは紫の液体が流れ落ちた。次にママはシラヒゲウニを割って見せ「これはピンクになるよ」と言った。

陸の染料、海の染料、そしてその両方を混ぜ合わせて、村の女たちは色を作る。糸を括り、染め、織り上げられたイカットは「天然染料でこんな色ができるのか」と思うほど、鮮やかで、それでいて優しい色をしている。

海の公園は揺らぐ青の中に、ピンクも、紫も、橙も、それからもっとたくさんの色への可能性も持っていた。村の女たちが好奇心いっぱいに海に新たな色を探しに行くみたいに、新しい黒いワンピースを見つめて想像する。もしかしたら、黒の中にもっとたくさんの色を隠し持ってるんじゃないか、と。

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13tigabelasのアイテムxインドネシア東部の島々のストーリーを書かせていただいてます。

Photo : Alfred W. Djami

13tigabelas
ジャカルタを拠点に、洋服、アクセサリーなどを手作りするユニット。古いものを新しく。日本からの注文も可能(配送不定期)

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