Tayu

インドネシア在住10年強(アチェ/ランプン/ジャカルタ/ティモール/スラウェシ)。現在…

Tayu

インドネシア在住10年強(アチェ/ランプン/ジャカルタ/ティモール/スラウェシ)。現在は西ティモール在住。沖縄生まれの兵庫育ち。TEXT AND PHOTOGRAPHY ARE COPYRIGHT © TAYUKO MATSUMURA

マガジン

  • ティモール姉妹 東西往復書簡

    • 4本

    国境を挟み、ティモール島の東側と西側に住む姉妹が交わす公開往復書簡。東側(東ティモール)と西側(インドネシア)の姉妹それぞれの日常を気軽に綴りながら、東西の共通点や違い、文化慣習のグラデーション、交錯する歴史が見えてきたらおもしろいな、という試み。 東の妹はテトゥン語話者。 西の姉はインドネシア語話者。

最近の記事

油の使い方

国境を挟み、ティモール島の東西にそれぞれのパートナーと住む姉妹の公開往復書簡。第3回目は、西側の姉より。 ゆいちゃんへ。 ボノイティ! こないだは、お便りありがとう。 フォルモザ通り、美しい名前やね。マロマック・シナの場所、わかんで!博物館を右手にまっすぐ進んで、四つ角をさらに進んだ右手やろ?通りの端で、前はサッカー場。当たってたら、10パウン*おくれ。*東ティモールで一般的なポルトガル風パン ニキニキ、ノビノビの由来はネタ帳にあたためておくとして、今日は最近読んだ吉

    • ポルトガル食品雑貨

      国境を挟み、ティモール島の東西にそれぞれのパートナーと住む姉妹の公開往復書簡。第1回目は言い出しっぺ、西側の姉より。 ゆいちゃんへ ボタルディ! ティモール姉妹 東西往復書簡の第1回目ってことで、どーしよっかなー?って思いながら、パラパラとノートや写真見てたら懐かしいの出てきたよ。ポルトガルの赤ワイン、ティントとオイルサーディンの絵。 日付見たら、もう1年以上前やわ。古いから新しいの描き足そうと思ってんけど「ポルトガルのもん」もうなんもストックないや、うち。前にディリ

      • くろいわにとみどりのわに

        * 「きみ、どっからきたんだい?」 ティモール島のくろいわにがたずねました。 すると、みどりのわにはこたえました。 「にんげんのくうそうさ」 * 海岸沿いに生えたマングローブの茂みの縁を、わたしとアルマはなぞるように歩いていた。近くのアルマの家には何度も遊びに来ているのに、ここまで来るのは、はじめてだ。 「ワニ…おるんちゃう?」 わたしはすこし心配になって、アルマにたずねた。 ティモール島の海岸付近には、イリエワニという海をも渡るワニがいるのだ。まれに人

        • 身に纏う色

          13ストーリー#2 ちょっとした旅からクパンの家に戻ると、小さな小包が届いていた。ガサガサと袋を開けると、中には黒いリネンで仕立てたワンピース。「う〜ん、素敵やけど私には大きいかもなあ」と、その夜は試さずにベッドに倒れ込んでしまった。 翌朝、そのワンピース着てみると、あまりにも予想が裏切られて、笑ってしまいそうだった。心配無用。ぴったりなのだ。鏡の前で右向き、左向き、くるくるくる…マカッヤに「どう?」と聞いてみると「アロールのイカット、合わしてみれば?」と言う。そう、東ヌ

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        • ティモール姉妹 東西往復書簡
          4本

        記事

          インドの後ろ

          13ストーリー#1 最近、どうも縁があるらしいインドブロックプリント。 かわいいなって思って、○UJIの「印度の布2」って冊子を眺めていたら、インドブロックプリントの洋服が私のところにやって来た! で、サヴ人マカッヤが「それってなんのモチーフ?」って聞くもんだから、カタカタカタ・・・と「インド ブロックプリント 木版」と、検索バーに入力し、インドネシア東部クパンの町からインドに向けて脳内トリップをすることにした。 どうやら、ブロックプリントの産地として有名なのはラジャ

          インドの後ろ

          納骨前夜

          まだ薄暗いなか、もの音が聞こえる。 じゃーっ、じゃーっ、じゃー・・・ おじいちゃんが風呂に入ってるようだ。ただでさえ早起きなのに、いつにも増して早い。父と母は出掛ける準備をゴソゴソとしている。私はというと、まだ布団でゴロゴロしていた。春になったといえど、南国でふらふら生活を続けてきた私には明け方の空気が肌寒く感じた。私の頭のそばに、おばあちゃんが、ちょこっと座った。おばあちゃんが何か言い、私もまるで毎朝そうして会話してるかのように言葉を返した。そうだ、認知症を患う前のおば

          納骨前夜

          茶碗の女

            名もなき私と「取る男」マカッヤは、あるものを探していた。場所はサヴ島、南東の海岸近く。 「この辺で、焼き物作ってませんか?」 *前の記事「椰子に登る男、液糖を作る女」からお読みいただけるとわかりやすいです。https://note.mu/tayu/n/n29bf4a1deb8b ***  サヴ島を訪れる以前、サヴ人の女性と結婚した日本人男性Mさんから、サヴ島の焼き物の写真を見せてもらい、その素朴な可愛さに惹かれた。素焼きの茶碗のような器に、ささっと描かれた花柄の模

          茶碗の女

          直さん

           直さんは写真が好きだった。ニコンの一眼レフを愛用していたのを覚えている。私が小学生の頃には、デジカメなんてないので、もちろんフィルムカメラだ。いつだったか10何万円だかする望遠レンズまで買っていた。被写体は主に、3つ歳の離れた兄、2つ歳の離れた妹、そして私だ。直さんが運動会にでも来ようもんなら、私たち兄妹は恥ずかしくて、しょうがなかった。友達のお父さんらは、コンパクトカメラや使い捨てカメラで手元がすっきりしているのに、直さんは学校公認のカメラマンみたいな顔してグイグイ来るん

          直さん

          椰子に登る男、液糖を作る女

           「昔、サヴ島では、グラ・サヴ(ロンタル椰子の液糖)が主食だったんだ」と、サヴ人、マカッヤが言った。  いやいや、おいしいけど液糖、このどろっとしたのが? 水で薄めたグラ・サヴを飲みながら、少し彼を疑う。  マカッヤ/ma ka'yaとは、彼のサヴ名で、おじいさんの名前からとったそうだ。maは「男」を意味するamaから、ka'yaは「取る」。ということは「取る男」といった感じか。おじいさん、または、おじいさんが名前をとった、もっと上の先祖の誰かは、猟/漁の名手だったんやろ

          椰子に登る男、液糖を作る女