#VSCC卵 VTuber初心者将棋大会にコーチ枠で参加した!(感想戦)
2024年10月20日をもって、VTuber初心者将棋大会が終了し、私とタッグを組んでいただいたVTuber、AIcia_Solid(アイシア=ソリッド)さんが優勝されたので、それに関する感想戦をしたい。
#VSCC卵 とは
VSCC卵とは、「VTuber Shogi Challenge Cup 卵クラス」の略で、将棋をほとんど指したことのない初心者VTuberを集めて、将棋大会を開こうというものであった。
今回の大会の特徴として、参加する初心者には各々「アニキ」と呼ばれるコーチがつき、そのコーチとともに将棋を勉強して、大会に臨むというものがあった。
今回、私は運営ではなかったが、本大会の趣旨に賛同した者の一人として、①特別協力として将棋ウォーズさん(HEROZ株式会社)をお招きすること、②解説に佐藤天彦九段を招聘すること、③Yahoo!ニュースオーサーの松本さんに企画内容を持っていくこと、という3つで少しだけ協力した。
協力をすることになった経緯については前に書いた以下の記事をご参照いただきたい。
参加者探し
大会のフレームワークが出来上がったとして、その大会に誰が参加するのか、というのは重要である。将棋ウォーズ協力、佐藤天彦九段解説、となれば、ある程度の規模の大会になることは予想できたので、参加者にこのVTuberが来る、みたいな点でも盛り上がりに貢献できればと思った。
こういう時は、やはりコンセプトが大事で、なぜ私がそのVTuberをお誘いしたのかという理由をしっかり示せるような人選をしたいと思った。
そこでお誘いしようと考えたのが、AIcia_Solid(アイシア=ソリッド)さんだった。
アイシアさんは、データサイエンティスト系VTuberとして、2018年頃から活動されている古参のVTuberで、いわゆる特化型VTuber(分野:統計・機械学習・AI(数学に強い))である。
特化型VTuberといっても、単に一つの分野を連続して配信しているだけでは、YouTubeにおいて伸びることは難しい。その分野の専門家として認知される必要があるのだと思う。
その点、アイシアさんは、AI×数学という分野で突き抜けている。なぜ機械学習は上手くいくのか、といった理論から勉強したい方がアイシアさんの動画を観ており、チャンネル登録者数は5万6000人超。また、動画を観ればわかるとおり、VTuber技術の活用も素晴らしく、アイシアさんが可愛く動きながら、解説をしてくれる。
https://www.youtube.com/watch?v=52-HP3u47C8
例えば、この配信はライブ配信では、文字が物理的な干渉が可能な3Dで出てきたりして、とてもすごい(小並感)。
そして、私(たややん)とアイシアさんの関わりとして、以前、アイシアさんが本(本質を捉えたデータ分析のための分析モデル入門)を出版する際に、将棋の機械学習分野のテーマにつき、事前にお話を聞かせていただく機会があり、たややんとの交流が少しあった。
以上のような経緯があったことで、私は、もし、アイシアさんを大会に誘うことができれば、大会がとても面白くなるのでは、と考えた。
一番の理由は、①数学に強いことである。将棋と数学には親和性が高いとされており(特に詰将棋は数学である)、数学に強いことと将棋が強いことに相関関係があるかもしれないといわれている(なお、なぜか「囲碁は文系が強い」だとといわれることもあるが正直真偽は不明、むしろ偽よりだと思っている。)
アイシアさんの経歴を調べていただければわかるとおり、数学つよつよ勢である。というか、数理科学で博士課程を取られている(東京大学大学院)。
そんな人が将棋を指したらやっぱり将棋が強くなるのか、それとも数学エリートでも将棋は難しいのか、という点は視聴者の方々が興味を持つのかな、と考えた。
次に、②私の配信スタイルとの関連性があるということである。私は将棋AI水匠を作っている人ということで、将棋AIに関する発信を主にするYouTube配信者である。それに対して、アイシアさんはAI系の配信をされている方なので、AI×AIということで、タッグを組む自然さみたいなのがあった。このタッグだと、どのような将棋が生まれるのだろうか、といったシナジーみたいなものを視聴者の方々が期待してくれればいいな、と考えた。
最後に、付随的な理由としては、③チャンネル登録者数が多いことである。人類は長いものに巻かれるし、類は友を呼ぶのである。よって、アイシアさんが参加を表明すれば、VTuber活動を熱心にやられている他分野の配信者も参加してくれて、盛り上がるかもしれないとも思った。
このような考えのもと、アイシアさんを大会にお誘いしたところ、二つ返事で参加を快諾してくれた。すごい。
アイシアさんが参加を決意された経緯などについてはご自身で書かれたnoteがあるので、そちらもご参照いただきたい。
コーチ方針
こうして、アイシアを生徒(セイト)、私たややんをコーチ(アニキ)として大会に臨むことになったわけであるが、次の課題として、どうやってアイシアさんに勉強いただくか、という点があった。
アイシアさんが多忙であることと、私が将棋がそこまで強くなく、コーチした経験も皆無であることは全く問題ないと思った。
なぜなら、おそらくアイシアさんがたくさん将棋を勉強して、他の参加者があまり将棋を勉強しなかった場合、アイシアさんが大会で無双してしまうだろうと考えたからである。
アイシアさんは、おそらく、勉強ガチ勢である。今まで、色々な勉強をして今の地位を確立されているのだと思う。なので、どのようなインプットをして、アウトプットの練習を重ねれば目標に到達できそうか、という感覚が、相当に研ぎ澄まされているだろうと考えた。
なので、私の代わりに将棋指導に優れた方がコーチしたり、人の2倍(もしかしたら同程度でも)アイシアさんが勉強してしまえば、大会的にまずいことになりそう、と頭によぎった。
また、アイシアさんの考えた将棋というのがどのようなものになるのかを見たいとも思った。序盤戦術、相手の作戦に対する対応、終盤の手筋などを色々と指導するより、アイシアさんが考えたものがどんなものになるのかを見たい、そこに初心者将棋の良さが出るのではないかと考えた。
そこで、私の方針は、極力何もしないという方針とした。正確には、大会の盛り上がりに全振りしようと考えた。
まず、将棋を教えていただく配信の講師として、斎藤明日斗五段をお招きした。え、プロ棋士を講師にするのはズルくないか?という話題作りを兼ねた配信である。
また、配信のネタ作りという点で、将棋サイトで指された棋譜のうち、級位者の棋譜を10万局くらい抽出し、そのデータを活用したりした。やっぱり機械学習にはビッグデータだよね、的なネタ込みの考えである。
あとは、参加者の皆様と色々コラボいただき、大会を盛り上げていただいた。
多忙な中、アイシアさんが暇を見つけては将棋の配信をしていただいていたのも拝見している。本当にバイタリティ溢れた方である。
将棋に関しては、アイシアさんがどんな勉強をしているのかの把握と、ウォーズの棋譜を一緒に見ながらコメントしたり、ぴよ将棋との対局をしているところを見ながらコメントしたり、というくらいの関わりであった。基本的に勉強法や序盤作戦は全てアイシアさんにお任せしていた。
アイシアさんが一番役に立ったと何度も言っていたのは棋神ラーニングというコンテンツだった。
内容を拝見すると、初心者が知るべき将棋の手筋や方針の決定方法をAIと対局することで学ぶことができるようで、試行錯誤の末にたどり着いた正解は記憶に定着するだろうというものだと感じた。とてもいいコンテンツだと思うので、初心者とまた関わる機会があれば、おすすめしたいと思った。
また、本番で、相手の序盤戦術を全く知らないが故に、一瞬で敗勢にはならないよう、原始棒銀と端角中飛車については、こう指したら敗勢になるから注意しようね、ということだけは伝えた。
これは、序盤で敗勢にならなければ、いい将棋が見られるだろうという期待の下でのアドバイスだった。
ちなみに、こちらの作戦を通すような攻め方のアドバイスはしなかった。同じ初心者である相手の将棋を尊重しつつ、大会配信が盛り上がることを目指したつもりである。
本番
本番のアイシアさんの将棋は、初心者が短期間で勉強した将棋として、とてもクオリティが高かった。
アイシアさんが興味を持った分野は詰将棋と手筋であったようで、詰将棋は証明に近いものを感じるし、色々な場面で使うことのできる手筋は、一般的な命題を導くことが重要な数学と親和性があるのかも、などと思った。
序盤は若干独特で、角交換を避けるために、角道を閉じ(相手が居飛車振り飛車によらず)、金銀で囲いを完成させることを主眼においた作戦だったと思う。駒が飛び交う空中戦は安定性に欠け、期待値が低いという判断だったのかもしれない。
アイシアさんがどのような将棋を指したのかは、是非配信をご覧いただきたい。
おわりに
こうして、アイシアさんが優勝、という結果でVSCC卵は幕を閉じた。
私がコーチ(アニキ)として大会に貢献できたのは、アイシアさんを大会に誘うことができたという点に尽きると思う。
もしかしたら、今回の参加者には将棋を続けて欲しい、などと言う方も多いかもしれないが、私は、アイシアさんに、将棋を続けて欲しいとは思っておらず、今後もご自身が望む分野で活躍して欲しいと思うのみである。
もちろん将棋を続けたら強くなるだろうし、もし、次の機会があれば、棋力的には多分私との真剣勝負でいいことになるんだろうな、とも思う。
大会に参加いただき、本当にありがとうございました!今後何かをアイシアさんに頼まれれば、何でもやります!という気持ちである。
最後に、ここまでの大規模な大会をトラブルなく実行された、運営の皆様に感謝申し上げ、この記事を終えることとする。
最後までご覧いただきありがとうございました!この記事を読んだ貴方に幸福が訪れますよう!