47 、侵略者~ 愛する者のために。。。3/5
よう。やあ。おはよう。あっざーす。
皆、様々に朝の挨拶を交わしている。
学校が再開してからはそれまでの日常の生活に戻ったような感じがする。
しかし、今は平時ではない。
ベータの一件以来ドールは鳴りを潜めているがこの生活がいつどうなるのかなんて誰にもわからない。
もしかしたらカメ子とカーメルも戦いに行ってしまうのかもしれない。
このまま何事もなくいなくなってくれればいいと思う。
しかしそういう訳にはいかないだろう。
なんていったってカメ子とカーメルは一つ目の中で実質実力ナンバーワンのジークを倒し、その他兵士である一つ目を二人も倒してるのだから。
このまま何も無いなんて事があるわけがない。
でもうしたらいい? どうしたらいいんだ。
口に出して言うことは無いが僕は時々こういう不安な気持ちがわき上がり心がざわつくことがある。
そしてそれは僕の意識とは関係なくとめどもなく考え込んでしまい回りの声も耳にはいらなくなるくらいだ。
そういう時よくお母さんやカメ子から「なにぼーっとしてるの」と注意される。
でもまだ大きな実害はないが、今が戦時である事に間違いないんだ。
そんな風に家にいたらお母さんやカメ子に注意されるくらい考え込み、いや、ぼーっとしながら自分の席に着く僕にモロミが心配そうな顔をして声を掛けてきた。
「おはよう丸男。 どうしたの? 何か考え事? 何かあったの?」
「あ、おはようモロミ。何でもないよ。ちょっとまだ眠たいかなって感じなだけ」
そういうと、モロミは丸男はほっといたらいつまでも寝てるんだもんねと笑顔になった。
そして本題に入った。
「ねぇ、カメちゃんどうしてる?」
「どうって?」
「ほら、例の愛の話」
「あー、あれね。宿題だって言って毎日借りてきたDVDを観てるよ」
「毎日? 同じものを?」
「そう。よく飽きないなと思うよ」
「あたし変なこと言っちゃったかな」
「ううん。そんな事ないよ。初めての宿題だって喜んでるみたいだし、それに見返りを求めないって言うのはうちのお母さんも感心してたよ」
「丸男はずーっとずーっと上だもんね」
そう言うとモロミは声を上げて笑った。
僕は恥ずかしかったのでかんべんしてよと言うとモロミはごめんごめんと言いながらもその笑いがとまらなかった。
そこへ吾一もやって来て何か面白い事があったのかって聞いて来た。
僕はもちろんなんでもないよと答えたけどモロミはあのねと言いながらずーっとずーっと上の話をした。
話を聞き終えると吾一はモロミと一緒に笑ったけど、安心しろよ俺でもそう言う風に答えるよと言うと僕の肩をぽんと叩いた。
そしてなんだか分からないけど僕も笑いがこみ上げて来て三人で笑った。
教室に先生が入って来るまで三人でずーっとずーっと笑っていた。
「あれ? 増田君、今日は君が早く上がる番じゃなかったっけ?」
「ええ。そうなんですけどね。私は一人もんですし、これと言ってやる事も無いので他に変わってあげたんです。それに正直言うと私はいつあいつらがやって来るかと思うと気が気じゃなくて休めませんよ」
「そうだな。私も同じだよ。あれ以来何の音沙汰も無く、攻撃はおろか何の発信もしてこないなんて。奴らがカメちゃんとカーメルちゃんに相当脅えているというのはわかるが、それでもこれだけ何もないと逆に不気味に感じてならないんだ」
研究所ではいつドール達が攻めてきてもいいように東岸が中心となり世界各国と連携を取っていた。
具体的には空の戦いになるだろうことは予想できたので各国の空軍やそれに準じたものがいつでも日本へ来れるように要請する事だった。
といっても今の現状で各国から日本へ戦闘機が集まるとドール達も警戒するに違いない。
以前自衛隊の航空機が一機撃墜されてるのを考えるといくら世界中から集まった戦闘機で攻めていったとしても勝負はほんの一瞬で決まってしまうだろう。
そうなれば逆にこちらの戦力が知られてしまうかもしれない。
東岸が各国に要請はしているといっても実際に勝負を仕掛けるのはカメ子とカーメルからの連絡を待ってからでないとどうにもならなかった。
ただ各国の戦闘機に詰まれるミサイルの威力や戦闘機自体の能力を元に攻め方や攻める順番を決めておいた方がいいだろうと各国に戦闘機の性能や積むミサイルの破壊力を訊ねたが帰ってくる答えははっきりとしないものだった。
特に大国と言われる国では自国のミサイル等攻撃手段を伝えるという事は、現時点での自国の手の内を見せる事になるので何がどうなっているのかという事ははっきりせずに難航していた。
「こんな時に何を考えてるんだ。国の緊急事態ではなくこの地球の存続がかかった緊急事態なのにそれぞれの国は自国のことしか考えない。今のこの状況を甘く見過ぎている。確かに最初にやられるのはこの日本だろう。しかしその後すべての国が攻撃される事は火を見るより明らかじゃないか。奴らが本気でかかってくれば一瞬で終わる。それなのに・・・・・」
東岸はカメ子達が秘密の場所と呼んでいたグランドで一つ目が乗るカプセルを発見した時よりその全ての情報、状況を世界の機関へ発信していただけに内心忸怩たる思いでいた。
「東岸さん、カメちゃんやカーメルちゃんからはまだ何も連絡は無いんですよね? 」
「ああ、まだ何も。」
「カメちゃん達に連絡してカメムシの人達が今どんな状況なのかだけでも教えてもらう事はできないんですかね。こっちはこっちで行き詰まっちゃてるわけですし」
増田にそう言われると東岸は何かを思い出す様に話しはじめた。
「なぁ増田くん覚えてるか? 前に私がカーメルちゃんを怒らせた事」
「怒らせた事?」
「カメムシの世界から帰って来た二人がカメムシ達が人間と一緒に戦ってくれるという約束を取って来てくれたのにその事に対して私はそっけなく返事をしてひどく怒られた事だよ」
「ああ、ありましたね。そんな事。確かあの時東岸さんはまだ待ってなきゃいけないんだよねって言ってカーメルちゃんを怒らせちゃったんでしたよね。正直私も随分な事言うなと思いましたよ」
「そうそうあの時は君にも一言言われたんだっけな」
増田は突然そんな話をする東岸を不思議がった。
東岸はそんな増田に応える様に今の心境を話した。
「確かに考えてみればカメムシ達だって命がけだ。奴らと向かいあえば死ぬことだってあるかもしれない。それをいくらカメちゃんとカーメルちゃんの頼みだとは言っても快くこちらの味方になってくれ一緒に戦ってくれる」
そこまで言うと東岸は真剣な表情で増田に言った。
「だから今度は信じて待とうと思っている。最大の敬意を持ってカメムシ達を待とうと思っているんだ。だからこちらからは決して連絡は入れない。ただ待つだけ。そう、ただ待つだけだ」
東岸の気持ちを感じ取った増田は私も一緒に信じて待ちますと笑顔で応えた。
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