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【おもしろ統計】宗教大国ニッポン、合計信者数は「1億6000万人」(宗教統計調査から)

教育データとは関係ありませんが、宗教にまつわる統計の話で面白いトピックをひとつ。国内の宗教法人の数や信者数などにまつわるデータは、文化庁が毎年公表している宗教統計調査で明らかにされています。

知っている人の間ではよく知られた話だと思いますが、統計表の中に記載されている各都道府県別の「信者数」(何かしらの宗教団体の信者)は、それぞれの自治体の総人口よりも多いケースが多々あり、全て足し上げていくと、日本の宗教人口が総人口をはるかにしのぐ数値に達するのです。

実際にデータを見てみましょう。まずは2023年の総人口。

次に宗教統計に書かれた「信者数」の合計。

以並べてみるとわかりやすいですが、多くの都道府県で宗教人口(信者数)が総人口を上回っているように見えます。

次に、どの県でどれくらいの齟齬が起きているのか、つまり「どの地域の宗教人口が盛られているのか」を見ていきます。以下は、各地域の「宗教人口」から「総人口」を引いた値を可視化したものです。

ゼロを中心に、赤くなるほど「宗教人口が総人口を上回っている」(つまり宗教人口を「盛っている」)、緑色に向かうほど総人口に占める宗教人口が少ないことを示す図になっています。一見してわかるとおり、ほとんどの自治体で宗教人口が総人口を上回る現象が起きています。中でも顕著な東京都は、宗教人口が3164万人(総人口は1408万人)と、倍以上の数値に膨れ上がっています。

東京以外の数も全て合計すると、日本の宗教人口は1億6285万人(実人口は1億2435万人)で、4000万人もオーバーする計算になります。

なぜ、このようなことが起きるのでしょう?考えられる理由の一つは、届け出る「信者数」の定義が各団体の判断に委ねられていることです。

信者は、各宗教団体が、それぞれ氏子、檀徒、教徒、信者、会員、同志、崇敬者、修道者、道人、同人などと称するものの全てを含んでいる。信者の定義、資格などはそれぞれの宗教団体で定められ、その数え方も おのおの独自の方法がとられている。

文部科学省「宗教統計調査-Q&A」

ある神社や寺院、教会にとって誰を信者とカウントするかは「おのおの独自の方法」がとられているので、実人口との乖離は起きうるものということです。

それにしても、「4000万人オーバー」は誤差の範囲を超えているのではないか?と素朴な疑問が浮かびそうですが、その点については以下の記事が参考になりそうです。

(略)…多くの日本人は、クリスマスイベントを楽しんだ一週間後の大晦日にはお寺で除夜の鐘をつき、年が明けると神社に初詣に行くことに違和感も罪悪感も感じていない。結婚式は教会で挙げるけれど、葬儀は仏式が多数派だ。自宅に仏壇と神棚の両方を備え、「寺の檀家」あり「神社の氏子」であることも珍しくはない。こうして、二重にカウントされている人が少なくないことが、人口よりも信者数が膨らむ原因だ。

日本の人口1.26億人なのに、宗教の信者数は1.82億人!|nippon.com

つまり「近所のお寺にも神社にも信者とみなされている」ような人が大勢いて、しかもそれぞれの団体が一信者として届け出てしまうので、積もり積もって合計数に大きな影響が及ぶ、ということです。

とはいえ、たいていの地域で人口が減ってコミュニティが廃れていくなか、そういったものと一体になって土着文化を築き上げてきた寺や神社の信者数も相当な勢いで減っているであろうことを想像するに、「二重計上」があったとしても人口をオーバーする程の檀家や氏子が本当にいるのかに対しては、感覚的な疑問に感じてしまいますが。

(了)

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