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犯罪者のために自由を代償にしてはいけない

※お知らせ※
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突然ですが小噺をひとつ。

日本人「日本には言論の自由や報道の自由があるよ。だから総理に対して『増税メガネ!』と呼んでも逮捕されることはないよ」

ロシア人「ロシアにだって言論や報道の自由はあるよ。だって岸田を『増税メガネ』と呼んでも逮捕されないからね」

こんにちわこんばんわ。
全ての増税に反対し、全ての減税に賛成する自由人、七篠ひとり(@w4rZ1NTzltBKRwQ)です。

今日はこちらのポストから

こちらは

ジャーナリストが法律を遵守する限りロシアには報道の自由がある

とロシアのプーチン大統領が語ったというニュースですが、以前このnoteで書いた「二重思考」そのものの恐ろしい言い分ですね。

「二重思考」はジョージ・オーウェルのディストピア小説「1984」に登場するワードなのですが、

あらためて簡単に説明しておきますと「二重思考」とは

矛盾する二つのものを都合よく解釈し同時に受け入れる思考

のことを指します。

「1984」において「二重思考」は物語の中核をなす重要な概念で

戦争は平和なり
自由は隷従なり
無知は力なり

という独裁政党が掲げるスローガンよって「二重思考」が表現されていいます。

この中の「自由は隷従なり」がまさしく冒頭のプーチン大統領の言葉です。

「自由」と「隷従」は全く逆の意味ですが、独裁国家にかかればこの二つの言葉は同じ意味になります。

その理屈は「党に反発する国民は罰せられ自由が奪われる。逆に党に従えば国民は自由でいられる」というもので、それにより「自由は隷従なり」という二重思考を成立させています。

つまりプーチン大統領のいう「ジャーナリストが法律を遵守する限りロシアには報道の自由がある」は「自由は隷従なり」でしかなく、これは

自由は「政府の許可制」になった時点で消滅する

という典型的な事例でしょう。

しかし「自由は隷従なり」という横暴は、ロシアだけが行っているわけではありません。

「自由主義陣営」を自認する西側諸国も、やっていることはロシアと同じです。

8月24日、プライベートジェットでパリ郊外の空港に到着したテレグラム創業者で最高経営責任者であるパベル・ドゥーロフ氏がフランス警察に逮捕されました。

容疑はテレグラム上での児童ポルノや違法薬物の流通や詐欺、テロ行為の助長といった犯罪に関し捜査当局に協力しなかったというものです。

テレグラムはLINEなどと同様にメッセージのやり取りや通話が出来るロシア発の通信アプリですが、高度な暗号化機能によるセキュリティ性能が強力な匿名性を担保していることから、それを求めるロシアやウクライナなど旧ソ連圏の人々を中心に急拡大し、今やその利用者は約10億人と言われています。

同時にテレグラムは、その匿名性の高さからテロや犯罪に利用されているとして、予てから批判の声は上がっていました。

確かに犯罪に利用されているという一面があるのは事実でしょう。

しかしその一方で、独裁国家に統制されまいとする国民の「言論の自由」を行使するための重要なツールともなっているのも事実です。

そして多くの国の政府がそれを恐れ、弾圧しようとしてきたことも事実です。

例えば今回逮捕されたドゥーロフ氏は、大学を卒業して間もない2006年に「VKontakte(VK)」というSNSをロシアで立ち上げました。

そのVKはあっという間に「ロシアのフェイスブック」と呼ばれるほどの人気のSNSとなるのですが、その人気によって逆にロシア政府から目を付けられることになり、彼はVKを利用して反政府運動を行っているグループの情報や、親ウクライナ派の活動家の個人データを引き渡すようロシア治安当局に強く要求されることになります。

こうしたことから彼は2014年にVKの株式を売却してロシアを離れ、その後はドバイに拠点を構え活動を行います。

そしてこれらの一連の経験が匿名性の高さを売りにしたテレグラムを立ち上げるきっかけとなっていき、皮肉にもテレグラムは言論の自由が乏しいロシアで人気の通信アプリとなっていったのです。

これにロシア政府が黙っているはずは無く、ロシアはテレグラムをブロックし、その使用を禁止しました。

しかしテレグラム側は様々な技術的対抗手段を講じてブロックを回避し、ロシア国内でのサービスを継続します。

このことが逆にテレグラムを「政府のネット検閲に抵抗する象徴的存在」に位置付け、ますますユーザーに利用されるようになります。

そして遂には政府側がブロックの継続は困難と2020年にアプリの使用を認め、今では逆にロシア政府側がテレグラムをプロパガンダに利用しています。

同様のことはイランでも起こっています。

2017年12月にイランで起きた大規模デモの際に、警察に対してデモ隊が火炎瓶を使用したのですが、その使用をテレグラムを通じて煽った勢力がいるとしてイラン側からテレグラムのユーザー情報の開示が求められました。

テレグラムはそれに同意するのですが、しかしその数か月後にイラン政府はテレグラムをブロックし、その使用を禁じます。

このイラン政府の裏切りが、テレグラムが政府や警察当局の捜査には協力しないというその後の強い姿勢を作ったと言われていますが、類に漏れずイラン政府もテレグラム上の反政府的な情報や言論を遮断することはは出来ず、代わりにイラン政府が作った模倣通信アプリの使用を強制しようともしましたが、その試みも上手く行かず、結局イラン政府もテレグラムをプロパガンダに利用しています。

テレグラムのブロックといえば中国もそうです。

2024年4月、中国政府はAppleに対し、テレグラムをを中国版App Storeから削除するよう「要請」しました。

一党独裁国家における「要請」は「強制」という意味ですので、当然Appleはそれに応じます。

そしてテレグラムもブロックされ、中国国内での使用は出来なくなるのですが、中国国民はそのブロックを回避する方法を知っており、今でも多くがテレグラムが使用されていると言われています。

そのことは中国におけるVPNアプリのダウンロード数がテレグラム禁止以降に300%も増えていることが物語っています。

このように言論の自由がない国ほどテレグラムは「国民の自由と権利を守るの生命線」として求められ、またそれにテレグラムは答えてきました。

しかしそんなテレグラムをフランス政府は踏みにじろうとしています。

前述したように「犯罪の温床になっている」というのは事実ですが、それは犯罪やテロを行う人間の問題です。

テレグラムがあるから犯罪やテロが生まれるのではなく、犯罪者やテロ組織がテレグラムを利用しているのであって、もしテレグラムが無ければ彼らは別の手法を使うだけにすぎず、仮に厳しい利用規約を導入しても隠語の使用などいくらでも逃げ道を考えることでしょう。

ですのでソーシャルメディアのプラットフォームに責任を求めるのは、政府による横暴でしかありません。

もしそうではないというのなら、なぜ携帯電話サービスを提供している企業やAPPストアは罪に問われないのでしょうか?

テレグラムはスマホを介して利用されるのにAppleには罪が無いと言える根拠はなんでしょう?

X(旧Twitter)でも、それを介して行われる投資詐欺や未成年者との買春といった事件が連日報道されていますけど、イーロンマスクは逮捕されるべきであり、Xの使用は禁止するべきなのでしょうか?

そもそもインターネット自体がそうした犯罪の温床になっているのですから、全てを禁止してはいかがでしょうか?

そんなバカげた話が許されていいわけありませんよね。

当たり前の話をしますが、

「犯罪は犯罪であり、言論の自由は言論の自由」

です。

犯罪抑止のためなら言論の自由が侵害されてもいいなんて理屈が通るわけはなく、同時に言論の自由のために犯罪が許されて良いはずもありません。

そもそもそれらを一緒に扱うこと自体が誤りであり、言論の自由のためにテロが防げなくてもいいのか!というのは統制したい側の脅迫でしかありません。

それはそれ。これはこれ。

他者の安全や財産を脅かす犯罪は防ぐべきなのは当然として、同様に言論の自由も守られるべきということも当然のことです。

それなのになぜ犯罪者の利己的な欲求のために、我々の言論の自由がその代償として奪われなければいけないのでしょう。

どんな理由でその逮捕を正当化しようが、今回フランスのやったことは言論の自由を委縮させる行為でしかありません。

日頃、中国やロシアを全体主義と批判する人ほど今回のフランスの暴挙を批判すべきでしょう。

自由とは「自由主義陣営」という言葉に隷従することではありません。

自由な社会において「言論の自由」の役割は非常に重要であり、どんな形であれそれを政府に検閲させたり制限させたりすることは

政府に独裁の力を与えること

を意味します。

私達の自由は、これまで以上に「SNS上での言論の自由」にかかっています。

政府による言論の自由への介入には僅かな妥協も許さない

という大切なことを忘れないようにしてください。

ということで、今日はここまで。

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それでは、ナイス減税!

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