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税金ララバイ

毎度おなじみの落ち込み時期がやってきて、こんなときは猫で気持ちも体も満たしてやろうと思って猫を抱きに行くも、避けられる。うちの猫はよく眉間にしわを寄せて飼い主を侮蔑する。血も涙もない。

そんなところに夫宛の税金の払込用紙が送られてきた。住民税と固定資産税だった。

日本の大人たちはご存じの通り、住民税は昨年の年収をもとに作られる。夫はおととしまでは会社員をしていたが独立しフリーランスとなった。会社を辞めた次の年というのは税金の額にびっくりするから覚悟しておけと言われるが、そのとおりだった。昨年は金額を見て口に手を当て膝から崩れ落ちた。

いくら好きでフリーランスになったとはいえ会社員の年収からは一時落ち込むわけで、にも関わらずこの谷間の時期にえげつない金額の請求がきなりの用紙に印刷されている。赤紙ならぬ黄紙。分割払いできるとはいえ、こんな額を一年間にどのように生活を切り詰めるべきか家族会議がもたれたのであった。

今年はフリーランス2年目である。だいたい把握してはいるがやはり金の督促というのは実に恐ろしい。恐る恐る住民税のほうから封筒を開ける(我が家は支払い系は妻が開けてよいことになっている)。おお、昨年より全然安い、よかった!と一瞬思ったがそう、あまり良くはない。年収が下がったということなのだから。

フリーランス1年目の年収をもとにしているのだから下がるのは仕方がないのだが、それにしても大幅下落なので気持ちはまた落ち込むのであった。いや落ち込んでいる場合ではない。夫の収益だけで生きるよりも私が働くのが手っ取り早い。一年後には職を失うことが決定している私は本当にそろそろ職探しせねばならない。

欲しいものを手に入れて、美味しいものを食べて、好きな人たちと笑いあう。たったこれだけのことにお金がかかるのだ。

忘れてはいけない固定資産税の封筒も破り開ける。私はずっと固定資産税というのは下がっていくものだと思っていた。減価償却されていくのだから当然だと思っていたのだ。しかしあるとき上がった。評価替えというやつらしく、そして別に高く評価してくれと頼んだ覚えはないのに国がそんなことをしてくるらしい。売るときに有利になるのかと思えばそうでもないという。

東京に住むというのがたまに本当にばかばかしくなる。これにマンションの管理費は固定で支払わなければならないし、これから人が減っていったら値上がりしないとも限らない。待て、私は今どこに向かおうとしているのか。金のない老後か?それともこんなところ抜け出してどこか景気のいい土地へしけこむべきなのか?そんなところあるのだろうか。

壁に取り付けた金運のお守り(ぜひ「穴八幡宮」で検索)を仰ぎ見る。コロナを乗り越えて仕事があるだけいいではないか。一応夫婦二人とも健康で働けている。

どうにかこうにか前を見ないとやってられない気分で猫を見ると、今度は目をそらさずじっと私を見ている。抱かせてくれるのかと私が歩き出すと猫も一歩下がる。そうやって猫のおやつがある棚(台所)まで巧みに誘導されて、猫は無事、自分の腹を満たした。猫がこの家でのうのうと、自由に伸び縮みできる環境を生涯を通して維持するために、私たちは今日も税金を払う。

落ち込んでいる場合ではない。猫とお守りと目が合って、私は正気を取り戻すのだった。

お前のために

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