春の森の「パキパキ」の正体
4月上旬頃の話なのだが、毎年その時期になると我が家の氏神様の森から、パキ、パキ、という謎の音が聞こえてくる。それもあちこちから。
今年の春も、庭で母と並んで耳を澄まし、さてなんの音だろうかと毎日観察していた。昼間も鳴らないわけではないが、パキパキパキパキ頻繁に鳴るのは、決まって夕方頃。
まず思ったのは、カモシカの足音。だけどカモシカが枝を踏んだときの音は、もっと体重を感じる。こんなパキパキと軽い音じゃない。
それにカモシカだったら、音は一本筋になる。実際、森から下りてきて我が家の畑を通過していったとき、カモシカは一直線に歩いていた。あちこちからまとまりなく聞こえている時点で、まず足音ではない。
次に思ったのは、ご近所さんが木切りでもしているのだろうか説。氏神様の森が属している山は、我が家だけのものではない。何軒かのご近所さんの土地と接している。だから「木切りでも?」と思ったのだが、まったく姿が見えず、その仮説もなさそうだ。
まさか山火事か? 昔、ご近所さんちが燃えていたとき、やはり木がパキパキ鳴る音がしたというし。だけど火も煙も見えず。火事ではない。
では枝の葉が落ちる音か?
いや、秋の枯れ葉ならともかく、春にそれは考えにくい。
小動物のしわざか?
たしかにリスの姿は見た。でもそれ一度きりだ。
まさか氏神様がイタズラでもしてるのか?
それならそれでも構わないが、せめてちょっと、私たちにお伝え願いたい。
じゃあなんだ。
結構大きい音なんだが。
なんなんだ。
まったく答えが出ないので、親友はじめ☆に相談してみたところ、はじめ☆の母上が答えを知っていた。
「藤の実が爆ぜる音」なんだそうな。
「はー! 納得!」
「なるほどね!」
私も母も、ようやくスッキリ。
「言われてみればそうだと思う! ここらは山藤多いし!」
「さすがはじめ☆母! 物知り!」
だから毎年この時期に鳴るわけだ。
そして鳴る時間が昼間より夕方頃に集中するのは、空気が乾燥するからか。
はーもう納得。
納得しかない。
やっと安心した。
来年からは春の風物詩として、楽しんで「パキパキ」を聞けることだろう。