自転車文化の本場を走る ~欧州自転車旅1000kmダイジェスト~
2023年10月6日から10日間、欧州を自転車で旅してきました。コペンハーゲンからアムステルダムまで、そこから鉄道で移動してパリも走って合計1000kmです。
旅の目的 -自転車文化の本場を走る-
旅の目的は、本場欧州の自転車文化を目で見て理解することです。ちょうどコロナが流行りだした今から3年半前、オランダの自転車文化を紹介するドキュメンタリー「Why We Cycle」に出会いました。本作は、自転車を単なる個人の趣味や移動手段から広げて、個人の身体的・精神的健康や都市、社会へにもたらす価値を伝えています。私自身、単に趣味として10年近く自転車に乗ってきただけだったので、本作は目から鱗でした。
そんな経緯で、自転車先進国として知られるオランダ、デンマーク、ドイツ、そして市長の政策で自転車インフラが急増していると噂のパリを訪れ、それぞれの地での自転車利用の実態を確認する旅を計画しました。
新しい取り組み -GoProとWarmShowers-
2019年末の台湾、2022年末のフィリピンに続き、海外自転車旅は今回で3回目です。今回の旅は楽しむことももちろんですが、大げさに言えばフィールドワーク的なものとして計画したこともあり、新しく2つことを取り入れました
GoPro
本場の自転車利用実態を記録に残すため、GoProでたくさん動画を撮りました。基本はタイムラプスで、街中など特に記録に残したいときは通常モードで撮影しました。ほぼ編集ゼロでYouTubeにアップしています。
通常の撮影(上)とタイムラプス(下)の例
WarmShowers
世界中の自転車旅行者に対して無料で宿泊等の支援を提供してくれるコミュニティです。誰もがホストにもゲストにもなることができます。今回は事前に3名、さらに現地に行ってから2名のホストの宿泊許可を得ることができ、9泊中5泊はこのWarmShowersで見つけたホストの家にタダで泊まることができました。
宿泊費を抑えられるのはもちろんのこと、旅先での現地の方との交流は本場の自転車文化を知るという目的に照らしてもかけがえのない経験になりました。自転車旅行者に限定しないものでは、CouchSurfingというのがあるそうです。
旅の全行程ダイジェスト:滞在日数10日間、総走行距離1000km
各日の概要とリンク、写真1枚だけを載せていきます。詳細はリンク先にて。
0日目(10/5木):東京→コペンハーゲン(デンマーク)
在宅勤務を通常通りに終えてから慌てて荷物をまとめ、深夜便で初めての欧州に飛びました。ウクライナ戦争の影響で飛行時間が伸び、経由地のヘルシンキ空港まで13時間かかりましたが、深夜便で寝ながら行くにはむしろちょうどいい飛行時間だと思います。
1日目(10/6金):コペンハーゲン(デンマーク)
到着後はまずホテルにチェックイン。それから郵便で輪行袋などを目的地のパリに送りましたが、これがけっこう大変でした。
その後はコペンハーゲン市内をシェアサイクルも使いつつサイクリング。サイクリストの多さと高いスキル、整った自転車インフラに驚くばかりでした。
2日目(10/7土):コペンハーゲン(デンマーク)→フェーマルン島(ドイツ)(183km)
本格的な旅がスタート。天気のよさとデンマークの素晴らしいインフラのお陰で快調に走れました。デンマークからドイツへはフェリーで移動。WarmShowersを初めて利用して宿泊しました。フレンドリーなドイツ人ホストのSimonに食事をいただき大満足です。
3日目(10/8日):フェーマルン島→ハールブルク(171km)
この日も天気はよかったですが、ドイツでは自転車が歩道を走らないといけないことが多いのが難点でした。一方で、レジャーとしてのサイクリングが幅広い層に普及しているようで、特にシニアのご夫婦が一緒に自転車を楽しむ姿を頻繁に見かけました。まさにウェルビーイングといった感じです。旅行者なのか地元民なのかは分かりません。
世界遺産の街リューベックや大都市ハンブルクを経て、最後はハールブルクでホテル泊です。
4日目(10/9月) :ハールブルク→オルデンブルク(157km)
朝から晩まで雨に苦しめられた一日です。今回の旅で最もハードな日になりました。
この日だけで2回パンクしたのも辛かったのですが、最大の困難は雨の中ではスマホの充電ができないことです。2台目のスマホまでバッテリーが切れてしまい宿泊予定のホストと連絡が取れなくなる最大のピンチを迎えましたが、通りすがりのサイクリストOriに助けられました。
途中で連絡が途絶え、到着が夜11時にもなってしまったにも関わらず暖かく迎えていただいたホストのBirgitとHardyに本当に感謝しています。前日のホスト、道中で水を恵んでくれた方、トラックに雨水をぶっかけられたときに心配してくれた方、トラムの車線にタイヤを引っ掛けて転んだときに気をかけてくれた方などなど、思い返すとドイツの方はとても親切でした。
5日目(10/10火) :オルデンブルグ(ドイツ)→フローニンゲン(オランダ)(146km)
5日目にしてついに、Why We Cycleを見て以来の憧れの国オランダに入国しました。まるでサイクリストの天国、期待以上の走りやすさでした。
この日の目的地フローニンゲンはオランダの中でも特に自転車で有名な街です。交差点では全方向から次々に自転車が押し寄せてきて、圧倒されました。
WarmShowersで3回目の宿泊。もともと連絡を取っていたホストのTanjaと一緒に、フローニンゲン大学の留学生のKemiが下宿していました。フローニンゲンはインターナショナルな学生街で、特に英語が通じやすい街でもあるとのことです。
6日目(10/11水) :フローニンゲン→ズヴォレ(140km)
フローニンゲン市内をホストのTanjaにサイクリングガイドしてもらいました。オランダ人と一緒に自転車で走ることができ、本場の文化を体感するにはもってこいの経験ができました。特に並走(日本では禁止されています)をさせてもらえたのは今回の旅のハイライトになりました。
当初予定ではこの日のうちにアムステルダムまで190km走る予定でしたが、雨天走行のせいか疲れも溜まっており、さらに向かい風も強かったので予定を変更してズヴォレに泊まることにしました。当日連絡したにも関わらず泊めてくれたウイグル人のホストに感謝です。自分と1つしか歳が変わらない彼の波乱万丈の人生には考えさせられました。
7日目(10/12木) :ズヴォレ→ユトレヒト(89km)
またもや雨に苦しめられた一日でした。ズヴォレのホスト曰く、この時期のオランダはいつもそうだとのことです。Whe We Cycleでもオランダ人は雨でも雪でも自転車に乗ると紹介されていましたが、本当でした。
雨の中談笑しながら走る中学生くらいの子供たち、平然と二人乗りしながらスマホ触ってる高齢サイクリストなど、やはり本場は違うと思い知らされました。2023年の世界自転車都市ランキングで1位になっているユトレヒトのホテルに泊まりました。
8日目(10/13金) :ユトレヒト→アムステルダム(108km)
ユトレヒトとハウテン(ユトレヒトから20km弱、自転車を中心においた都市計画で有名な街)を見学してからアムステルダムに向かいました。ユトレヒト、ハウテンのどちらの街も車が少ない分、とにかく静かでした。エンジン音の代わりに人の話し声がよく聞こえました。
アムステルダムに着いてからはまたまた雨でした。アムステルダム観光は翌日に回そうということで最低限で済ませて、郊外のホスト宅に宿泊しました。ホストのKeesはアメリカやイランなど、様々な長距離自転車旅の経験を持つ熟練サイクリストでした。
9日目(10/14土) :アムステルダム→パリ(50km)
アムステルダムからパリまでの国際高速鉄道が1日中満席というトラブルが発生。ブリュッセルまでは通常の鉄道で移動しました。ブリュッセルをほんの少し走ってから、ブリュッセルからパリへは運良く予約できたユーロスターで移動しました。
市長のかかげる”15分都市”という政策の中で自転車活用が進められているパリですが、想像以上に進んでいました。デンマークやオランダが古くからの自転車先進国なのに対して、パリはまさに自転車都市に向けて変化している街というのを感じました。
そこまではよかったのですが、コペンハーゲンから送っていた荷物の受け取りでは嫌な思いもしました。
10日目(10/15日) :パリ→東京(10km)
自分のロードバイクの梱包を済ませてからも、シェアサイクルのVelibやLimeでギリギリまでパリを堪能して、夜の便で東京に向けて飛びました。たぶん今回の旅の中で一番天気よかったです。
感想を一言でまとめれば「行ってよかった。」となります。ネットでたいていのことは情報として得られる時代ですが、実際に行くことの価値は大きいです。
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