(短編連続小説)『リボルバーを胸にウォークマンを片手に』第五話
(5)好きな女と心中しよう
俺は悲しかった。涙が止まらなかった。こんなことなら話しかけなければ良かった。一生、会わないで美しい思い出として胸にしまっておきたかった。いさ子が俺をはめようとした。それも色仕掛けで。何てこった。だれに頼まれたのだ。なぜ、彼女は断らなかったのか。答えは簡単だ。俺に何も感じていないからだ。 俺は悲しみに負けないように全速力で走った。二度と会うもんかと思った。この俺の美しい思い出を汚れたものにした場所から立ち去りたかった。一人になりたかった。そして、