Tom

もうすぐ還暦のTomです。2022年10月より躁鬱を再発し休職中です。 音楽と写真、将棋、サイクリングが好き。 作家では村上春樹、石田衣良、芥川龍之介、太宰治が好き。 死ぬまでに人間失格のような中編を世に問いたいです。

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もうすぐ還暦のTomです。2022年10月より躁鬱を再発し休職中です。 音楽と写真、将棋、サイクリングが好き。 作家では村上春樹、石田衣良、芥川龍之介、太宰治が好き。 死ぬまでに人間失格のような中編を世に問いたいです。

最近の記事

(短編連続小説)『リボルバーを胸にウォークマンを片手に』第六話(最終話)

(6) サークルの外で 受話器を上げ、自分でも信じられないくらい冷静に呼び出し音を聴く。やがて男の声がする。「FM東京、リクエスト係です。」  「中村さゆりさんと話がしたいのですが」  「彼女は今、放送中ですが」  「かまいません」  「そっちが構わなくてもね、こっちがだめなんだよ。あんた、なに考えてるの、頭おかしいんじゃないの?」  俺はちっとも腹が立たない。そして言う。「これからそちらに伺いますから。 そう、さゆりさんに伝えておいてください。」  「あんた

    • (短編連続小説)『リボルバーを胸にウォークマンを片手に』第五話

      (5)好きな女と心中しよう 俺は悲しかった。涙が止まらなかった。こんなことなら話しかけなければ良かった。一生、会わないで美しい思い出として胸にしまっておきたかった。いさ子が俺をはめようとした。それも色仕掛けで。何てこった。だれに頼まれたのだ。なぜ、彼女は断らなかったのか。答えは簡単だ。俺に何も感じていないからだ。 俺は悲しみに負けないように全速力で走った。二度と会うもんかと思った。この俺の美しい思い出を汚れたものにした場所から立ち去りたかった。一人になりたかった。そして、

      • (短編連続小説)『リボルバーを胸にウォークマンを片手に』第四話

         (4) いさ子との再会 だが一体誰に。そして何のために。思い当たるのは一つだけだ。リボルバーを盗んだ犯人と勘違いされているのだ。  だが、と正晴は思う。そんなことがある筈がない。だって、さっきリボルバーの犯人は30過ぎのタクシードライバーだって街角のテレビニュースでやっていたじゃないか。あれは嘘なのか。デマゴーグなのか。いや、そんなはずはない。だから俺が持っているのはおもちゃのリボルバーで2曲のリクエストは偶然だったのだ。そうだ、決まってる。  急に寒気を覚えた正晴は

        • (短編連続小説)『リボルバーを胸にウォークマンを片手に』第三話

          (3)DJにリクエスト いつのまにか宝町まで来ていた。一駅分、歩いてしまったのだ。まったく疲れを感じない。それどころかますますどこかへ行きたい気分だ。家には帰りたくない。この気分は、世界中を独り占めしちまったような気分はとても誰かと共有できるものではない。  それはちょうど自分の心の中に突然、ダイヤモンドの鉱脈を掘り当てたようなものだ。この気持ちは他人に言ったって誰もわかってくれないだろう。馬鹿にされるだけだ。  街角のテレビではレボルバーを盗んだ犯人のニュースをやってい

        • (短編連続小説)『リボルバーを胸にウォークマンを片手に』第六話(最終話)

        • (短編連続小説)『リボルバーを胸にウォークマンを片手に』第五話

        • (短編連続小説)『リボルバーを胸にウォークマンを片手に』第四話

        • (短編連続小説)『リボルバーを胸にウォークマンを片手に』第三話

          (短編連続小説)『リボルバーを胸にウォークマンを片手に』第二話

          (2)追われている妄想  銀座を外れるとめっきり人気がなくなる。みんな、さっきのニュースにびびってるのだろうか。救急車のサイレンが遠くに微かに聞こえる。  僕はみじめなクリスマス・ラバーだった。イブを一緒に過ごそうとしていたまゆみから急に断りの電話が入ったのは先週だった。「もう、電話しないでほしいの」と彼女は言った。「あなたは私のことなんかちっとも考えてないわ、さよなら」電話は一方的に切れた。  正晴は思い返す。自分の前を通り過ぎて行った女の子達のことを。正晴はいつも4

          (短編連続小説)『リボルバーを胸にウォークマンを片手に』第二話

          (短編連続小説)『リボルバーを胸にウォークマンを片手に』第一話

          あらすじ俺はクリスマスイブの夜、銀座でおもちゃのレボルバーを拾った。 そしてウォークマンでFMを聴きながらレボルバーのことは忘れて北に向かい歩き出す。  そんな中俺は周囲の不自然さからふと気づく。もしかして俺は監視されているのか?  俺は偶然、学生時代好きだったいさ子に出会う。 でもいさ子が俺をはめようとしていたことがわかり自暴自棄になった俺はFMのDJと心中することにする。  俺はスタジオ目指して方向を変え歩き出す。 だがスタジオにたどり着く前に待っていた結末は俺の期待を根

          (短編連続小説)『リボルバーを胸にウォークマンを片手に』第一話

          短編小説『リボルバーを胸にウォークマンを片手に』近日連載

          20代の頃、僕はなかなかに真面目に賞を目指して色々な短編小説を書いた。会社から帰って来て夕食を終えるとNack5で斎藤千夏のDJを聴きながら初めてのボーナスで買ったパソコンで一太郎というソフトを使って毎日1時間から2時間くらい書いていた。  会社の友人が劇団をやっていてその劇団用の脚本を書いたこともある。  そして20代の終わり頃、一つの区切りとして書いたのが『レボルバーを胸にウォークマンを片手に』という小説だ。  この小説を書く数年前、僕は実際に銀座から東銀座、そして

          短編小説『リボルバーを胸にウォークマンを片手に』近日連載

          榊いずみは歌詞もいい

          榊いずみさんは橘いずみ時代の「失格」の頃から好きでライブも観に行ったけど結婚して榊いずみになってからの曲を昨日聴いたらもっと良かった。  「LOST AND FOUND」という曲でサビの後で「妄想さ」と来る。自分も時々妄想か現実かの闘いをしているのでこの歌詞には正直やられた。最後は「想像さ」とダブルミーニング。曲調もミディアムアップテンポでこんな素敵な曲を書けるのはやはり彼女以外にはいないと彼女の良さを再認識したところ。  みなさんもぜひ聴いてください。

          榊いずみは歌詞もいい

          Milk & Honey

          Milk & Honey。牛乳に蜂蜜を混ぜただけの飲み物だ。初めて飲んだのは軽井沢の万平ホテルだった。「わっ、これ上品で素敵な味だな」と思ったものだ。このホテルはジョンとヨーコ夫妻もよく泊まっていたらしく、ジョンの遺作に同名のアルバムがあるのは偶然だろうか?  これなら自分でも作れると思いつつ、あれから10年近く経ち、昨日ふと思い立って自分で普通の牛乳に普通のハチミツを入れて作ってみた。ハチミツはかき混ぜても最初なかなか溶けないが10分くらい放おって置くと自然と溶けた。僕は

          Milk & Honey

          彼女のポエム

          この詩を読むと彼女は本当に優しくて繊細な心を持っていたのだなと思う。  シンプルで、わかりやすくて、ちょっとドキッとする。  僕も書き換えをしてみたくなるがオリジナルの良さを汚してしまいそうなのでそのまま載せます。  その後の彼女の詩もぜひ読んでみたいけど叶わないだろうな。。。        『三つ葉のクローバー』      四つ葉のクローバーをさがす時       三つ葉のクローバーを       つめたくみたり      いじめたりしちゃだめよ     

          彼女のポエム

          布袋寅泰「BEAT EMOTION」の歌詞が好きだ

          布袋寅泰はBOOWYの頃はあまり聴いてなくて吉川晃司と一緒にやったCOMPLEXで好きになった。その頃出たソロアルバムGUITARYTHMⅡのアルバム2曲目のBEAT EMOTIONにシビれるフレーズがある。3番のはじめにある  「まずまずの人生をこのまま送るか?   二度とない人生を求め続けるか?」  これをヘッドフォンで聴いていて耳に飛び込んできた時はドキッとしました。  もちろん二度と無い人生を求め続けたいですよね。  あ、あともちろん詩だけでなく曲もメチャク

          布袋寅泰「BEAT EMOTION」の歌詞が好きだ

          映画トルーマンショーと唯我論

          自分の死後も世界は続くのだろうか?などと言う人がいると今でこそ「何を感傷的なことを言ってるのだろう」などと思うが僕も20代後半までは自分以外の人間がもしかしたらロボットではないか?とか自分はこの世の中で特別な存在なのではないか?などという唯我論に取り憑かれていた。  映画、「トゥルーマン・ショー」は僕の描いていた唯我論の世界に近く、いたく感動したものだ。また「世にも奇妙な物語第242話」で放映された「 ロンドンは作られていない」もかなり自分の感覚に近く、清水義範の原作「唯我

          映画トルーマンショーと唯我論

          BLTサンドイッチの幸福

          時々とても食べたくなる。そして僕の場合、ベーコンの代わりにハムなのだ。そしてトマトは絶対に必須、無くてはならない。パンは普通の食パンでいい。その上にマーガリンを塗りさらにマヨネーズを薄く塗る。そしてレタス、ハム、トマトの順に重ねる。トマトは全体を覆うように3つ4つたっぷりと。  そしてカフェオレと共にいただく。がぶりと一口。レタスのシャキシャキとした食感の後にハムが続き最後にトマトが口の中で潰れて口の中に拡がる。うーん、幸福。  あっ、明日の朝食べたいなと思った時に冷蔵庫

          BLTサンドイッチの幸福

          なんのために表現するか?

          僕と大学時代の友人の彼は二人で都内一大きな公園を歩きながら色々なことを話した。 僕らは大学卒業後、共に就職し、彼は一度会社を辞めていた時期もあったが同じ頃に結婚し、共に子供が生まれ家を買い、ローン返済のために会社に通うサラリーマン同士だ。  彼は詩や脱力系マンガを書き、僕は写真を撮ったり文章を書くのが好きでお互い何か一緒にコラボしようという話になったが「何のために書くのか?」という話に及んだ。 「もし誰も読んでくれなかったら書かないでしょ?」と僕。  「日記ならともかく

          なんのために表現するか?

          芸術家より感性が鋭い人はたくさんいる

          若い時は感性が鋭いのかもしれないが、何分それはかなり一人よがりで自分中心な感性だと思う。まあだから尖ったものが表現できるのかもしれないし、歳を重ねると他人の気持ちはわかるが鋭いものは感じなくなるという二律背反なんだろう。  僕は若い時、モノを創る人こそが感性の鋭い人だと思っていた。ミュージシャンや詩人、小説家、絵描きとかアートに関わる人が感性が鋭くて逆にサラリーマンなんて感性の鈍い典型だと。  でも今はそうは思わない。モノを創る人は「表現欲求」は強いかもしれないが必ずしも

          芸術家より感性が鋭い人はたくさんいる

          頭の中で耳鳴りがする

          それは突然やって来て僕を襲う。最初にその感覚に取り込まれたのは19の時だった。感覚がものすごく鋭敏になり、誰が味方で誰が敵かが肌で感じられるようになる。  周囲の人は気づいているのだろうか?僕はまるで秘密警察に追われた指名手配者のような気分になる。この電車に乗るべきか?いや一本やり過ごそう。この信号を渡るべきか?えいっ、信号無視してあいつを巻いてやろう。  僕はパラレルワールドに興味があるが、こういう時はもう一つの世界からこの世界へ誰かが送り込まれているような錯覚にさへ陥

          頭の中で耳鳴りがする