なに劇場?#4
「うっさいな!なんなのよ!」
「は?で?私がみんな悪いんだ、
あーっそう!!わかった!!
はいはい、もうしらない!
さよーーなら!!」
今日は半年抱えていた仕事にケリが
ついて気分よく寄ったのに。
2杯目は何にしようか
棚の上の琥珀色の瓶をぼんやり眺めていたところだったのに。
カウンターの奥で
買ったばかりのi-phoneにむかって
香がぶちぎれている。
「賢ちゃん! いくよ!」
自分が怒鳴られたかのように
面食らっている 年下イケメンゲイの
賢ちゃん。
かわいそうに。
今日店に寄ったのがアンラッキーだったね。
声を掛ける間もなく飛び出していく香。
店のガラス越し
ヒールが折れるんじゃないかという勢
いで ガシガシと歩いてるのが見える。
駐車場の
車高の低い黒い車に乗り込んだと思ったら ブオンブオン鳴らし始めた。
それ、オーナーのだからね。
賢ちゃんは
店の入口まで行ってはみたものの
泣きそうな顔で私をみている。
前にも、パトカーに見つかれば間違いなく止められる香の憂さばらしドライブの助手席に座ってしまった、心やさしい賢ちゃんは半泣きで帰ってきたのだ。
「いいよ、かわるよ。
ここ、賢ちゃんのおごりね」
ハイチェアから飛び降りて店を出る。
助手席に乗り込むと
香は何も言わず すごい勢いでアクセルを踏んだ。
首都高からは
オレンジに光る東京タワーが見えたり消えたりしている。
この景色が大好きだ。
香の運転技術は間違いない。
慣れっこのスピードに、
ここにいる状況も忘れ
夜景を楽しんでいた。
ずっと黙ってた香が
大きく空気を吸い込んで言った。
「ねぇ。男なんて いらないよね」
吹き出して私は言った。
「ねぇー、そのセリフ何回目?」
「何回でも言うわ。
男なんて、ほんとうんざり!」
「でもさー、イタリア人のイケオジに声かけられたらどうするよ」
「イタリア人?
そりゃ1杯くらいはつきあうでしょうよ。」
「男はいらないんじゃなかったの?」
「イタリア人のイケオジは別でしょうよ!イタリア人は女にやさしいのよ。」
吹っ切れたように二人で大笑いしていると香のi-phoneが鳴った。
「ほっとけばいいよ。どうせあいつでしょ。」
「みせて。
知らない番号みたいよ。」
「え?誰?」
つづく……?