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茨木のり子さんと、真島昌利の「チェインギャング」
茨木のり子さんの会報のようなもののために書いた文章です。ちょっと前から気になっていたことを書きました。
転勤する後輩や親しい友達に、本を贈ることがあります。その人に合いそうな本を考えながら本棚を眺めるのは楽しい時間です。詩を好きになってほしい人によく贈るのは「詩のこころを読む」たまに読み返そうと思ったら誰かに贈ってしまって本棚に無くて、また買い直してまた贈ったり。
自分が最初に読んだのは10代のころ。
石川逸子さんの「風」や、岸田衿子さんの「くるあさごとに」の詩に出会ったのもこの本でした。素敵な詩と、詩に対する茨木さんの考え方がわかりやすい言葉で綴られていて、読むたびに新しい発見があります。
(いま読み返してみたら『日本の詩歌には喜怒哀楽の「怒」が弱い』という言葉があり、はっとさせられました)
どこから読んでもいい本だから、ぱらぱらとめくって、何かひっかかる詩があればいいなと贈ります。
茨木さんの「花ゲリラ」ではないけれど、若者の柔らかな心に何かの詩や言葉が(リラパ!)と育ってくれれればいいなと、そんなことを考えて。
少し前に読み返していた時、ひとつの詩がひっかかりました。それは第2章「恋唄」の終わり。ラングストン・ヒューズの「助言」という詩
みんな、云っとくがな、
生きるってな、つらいし
死ぬってな、みすぼらしいよ
んだから、掴まえろよ
ちっとばかし、愛するってのを
その間にな。
あれ、この詩って・・・。
思い出したのは、ブルーハーツの「チェインギャング」でした。
生きているっていうことは、カッコ悪いかもしれない
死んでしまうという事は、とってもみじめなものだろう
だから親愛なる人よ その間にほんの少し
人を愛するってことを しっかりとつかまえるんだ
中原中也のTシャツを着る文学青年でもあった真島昌利。もしかしたら彼も若き日に「詩のこころを読む」を手に取っていたのかもしれない。もちろん、全然違うルートで知ったのかもしれないけれど、でも茨木さんの蒔いた種が真島昌利にも届いて、多くの人の心を震わせた名曲を生んでいたとしたら・・・。
それはとっても素敵な「花ゲリラ」ですよね。