2023年個人まとめ -- nouu 創業3ヶ月目
こんにちは、合同会社 nouu の代表をしている白川です。
今年の 10 月に合同会社 nouu を立ち上げ、3 ヶ月弱ほど経ちました。年納めも兼ね、創業周辺でやったことや感じたこと、これからやってみたことをまとめてみたいと思います。会社としてというより個人としての観点が多めです(とはいえ一人社長なのでほぼ会社 = 個人ですが)。
自分は何者か
これまで 15 年弱くらい、機械学習・数理最適化・アルゴリズム・自然言語処理・画像処理・データ分析・データ基盤構築などのデータ周辺の研究開発・技術開発の他、それを背景にしたコンサルティングやアドバイザリー、新規事業の立ち上げやその支援などをしてきました。データチーム・AIチームの立ち上げなどもしました。守備範囲が広く、事業のシードから立ち上げ、成長、研究まで垂直的(横断的?)な経験を持っているのが強みです。
なぜ法人化したのか?
こちらの記事では、法人で何をやるつもりなのかを書いたのですが、2023年の振り返りなので、個人的な観点も書いてみようと思います。
これまで会社に所属しながら様々な仕事をしてきました。いつかは独立してみたいと思っていたのですが、今回、タイミングもあって独立しました。自分の子供はいま 5 歳なのですが、本当は子供が小学校に入ってから独立しようと思っていました。色々あり少し早まった感じです。
これまで役職的には ML Engineer などの職種で仕事をすることが多かったのですが、期待される職務が職種に縛られれると感じることがしばしばありました。もちろん、「ML Engineer」に期待される職務は果たすのですが、それ外側の領域にも関わりたいという思いがあります。しかし、組織が大きくなればなるほど、職務領域をある程度限定させることが必要になるのも理解していて、その一つの解決策としてスタートアップや新規事業領域に身を寄せていました。解くべき課題を特定し、そこにビジョンをのせながらこれだというソリューションを見つけて戦略的に実現するのはこの上なくエキサイティングでとても楽しかったです。
一方、ML Engineer という職種についてまわる問題と思いますが、とくにプロダクトの一機能として ML を適用する際は、どの程度の レベルの ML 由来の機能が必要かというのはプロダクトの状況に左右されることがあります。自分としては、機能よりストーリーにコミットしたいという思いがいつもありました。ストーリーに対してはもっと干渉したいものの、「ML Engineer」としてはアクセルを踏み切れない(と自分が判断している)状況は非常にもどかしいです。また、ビジネスとエンジニアリングの間の乖離も度々課題に感じました。
(ML) PdM にジョブチェンジするというのもあり得たのですが、なるべく大きなストーリーに関わり続けていたいのと、変化にキャッチアップし続けるためには常に手を動かしていたいという欲もあり、結局全部やりたいのであれば独立してみるのが良いのかなと考えました。1 ヶ月ほど個人事業主として活動していたのですが、やはりストーリーを作るならストーリーが収まるハコが必要だなというので法人化しました。自分よりストーリーが偉くなるようなストーリーを作りたいです。合同会社にしたのは初期的にコストが抑えられるからというだけで、そのうち株式会社化したりするかもしれません。ストーリーが偉い。
当初法人化するためには何をすればよいのかわからないことも多く、色々試行錯誤しました。その詳細もいつかまとめようと思っていたのですが、ABEJA 時代の同僚で同時期に創業された岩田さんが下記でかなり詳細にまとめられていたので、私の方では割愛します。
役所とマイナンバーカードと仲良くなれました。Windows 偏重で Mac 向けに環境が整備されておらず、色々苦しみました(現在進行系)。
税金は喜んで払うので、なんとか整備されると良いなと思います(事情もあって簡単ではないと思うのですが)。
あと、適格請求書発行業者の申請から登録までの手続きはもう少し早めるか途中経過の発信などしていただけると嬉しかったです。1.5 ヶ月音沙汰なしはドキドキしました。今月半ばにやっと登録完了しました。
税金は喜んで払うので、…略
いま何をしているか
パラレルワーカー
ML Engineer をしている頃から、1 社にとどまって仕事をするのはもったいないなと感じていました。同じような課題に直面し、同じようなソリューションを求めている会社には本業の外で何度も出会いました。また、自分のスキルを 1 社に費やそうとすると、事業とのフィットでどうしても使えないスキルが出てきて、それももったいないなと感じていました。そのため、自然な流れとして副業をしたりもしていました。スキルを陳腐化させないためにもスキルを使い続けるのは重要です。自分は筋トレと呼んでいます。困っている相手に貢献できる筋トレ、いいですよね。
また、いわゆる社会関係資本の重要さは感じており、いま自分があるのもいろんな領域のすごい方々が身近にいて、それらの方々の考え方や実践などを直接見たり聞いたりできたおかげだと思っています。
そもそも前職に入社するときも、パラレルワーカーとして独立しようと考えていて、散々迷った末、前職に入っていました。それもあり、法人化してからもひとまずはパラレルワーカー的に複数の企業にコミットしています。現実的なことを言えば、身を立てるにはそれが一番手っ取り早いというのもありました。下記の記事に書かれている内容には共感する部分もあります。
現状、下記の 2 種類の形式で主にスタートアップや新規事業のお手伝いをしています。
プロダクト開発の伴走者/アドバイザリー
こちらは半分趣味的なものなので法人の事業にしようか個人事業主として続けようか悩んだのですが、法人として続けています。
向き合いたい課題:
プロダクト開発(AIもそれ以外も)のプラクティスがわからない
アドバイスや回答があれば進捗するケースでそれがなく事業が進捗しない
なぜか事業が進捗しないしどうすればいいかもわからない
組織外の第三者の意見を聞きたい
経験のある誰かに背中を押してもらいたい
自分にとってのメリット:
ぜひ伸びてほしいと思えるような複数事業への関与
クイックな人助け・知見の社会還元
担当領域の情報に敏感になれる
共通課題の括りだし
人繋ぎができる
筋トレ
実務内容:
課題探し、ソリューション探し、ストラテジーの構築、人繋ぎ、実践の支援などなんでもします
基本、月〜10時間程度の稼働で、週一、隔週のMTGなど
Slack 常駐で質問に回答したり情報共有したり
気をつけていること:
最終的な意思決定者にはならないようにしています。あくまで外部の人間として振る舞うことを意識しています
一方、課題に対しては当事者と可能な限り同じ目線・距離感で接していたいと考えています
スタートアップ/新規事業向けの技術支援
基本、最大週 1-2 日程度の稼働で ML モデルの開発やロードマップの作成、最近だと LLM を用いた各種研究開発などを行っています。
向き合いたい課題:
AIスキルのある人材がいなくて、ビジネスが推進できない
テクノロジーにベッドした事業を立ち上げたいが、価値検証をできる人材がいない
1 人目 AI 人材、リード人材不在で開発の推進自体ができない
短期のチャレンジングな課題なので、正社員採用などで対応しづらい
自分にとってのメリット:
スタートアップ/新規事業の立ち上げプロセス(好き)に関われる
ビジネスに直結した実践的な最新技術の知見蓄積
筋トレ
実務内容:
最大週 1-2 日程度の分量の稼働提供。稼働料・日にちは基本的には厳密には決めないでよしなに作業をします。モデルの学習は稼働日外でも回しています
気をつけていること:
アウトカムベースで仕事をしています。理想的には、アウトカムを増やしつつなるべく自分の稼働を減らせると最高。とにかく相手にとっても自分にとっても短期で品質の良いものを作れるようにします。
共通テーマのリサーチ
パラレルワーカー業(や SNS 監視笑)を通じて、見つけた共通課題を自社で調査したり深掘りしています。ただし、直接的なソリューションもそうですが、テクノロジーの行く末を考えた際に、短中期で必要になりそうなテーマを優先的に調査しています。
たとえば、法人化直後に X でインターンを募ってみたら即時反応してくれたヤマダくんにお願いして、「LLM Programs」の調査を依頼したりしました。
LLM Programs は LLM をコンポーネントとするアルゴリズム(昔でいうとMapReduce のような)で LLM 単体以上の精度を出そうというようなフレームワークです。広い意味では RAG も含まれると思います。調査する前から薄々わかってはいましたが、まだまだ話題が散逸していてまとめるのが難しかったのですが、2 ヶ月の成果として下記のブログにまとめてもらいました。下記のブログの内容の他にも色々調べてもらっています。
調べてもらうことで自然とこちらもその話題に敏感になるのはメリットかなと思います。また、外部の第三者としてアドバイザリーや技術支援をする際、自分が関与し続けられるという前提は置くべきではないと考えているのですが、その際に重要なのは先を見越した上で足元の議論・実践をすることだと思っています。その意味でもちょっと背伸びした調査・検証はこれからも続けていきたいです。
基本的には、調べてもらった内容は全部公開するつもりです。自分の実績を作ってみたいインターン希望の方がいればどうぞ!自分で良ければ人生相談までのります笑
インターンなどを通じて、次世代の育成もしていきたいです。
プロダクトづくり
とはいえ、自分自身はやはりプロダクトづくりをしたいなと思っています。冷静になって考えたとき、いまのパラレルワーカー業を 20 年続けているイメージは全く湧きません。
なにかを研究することが好きなのもあり、始終考え続けられるメインテーマを持っていたいと思っています。できれば死ぬまで考え続けられるテーマが理想です。
もともと自社(nouu)の名前もそのドメイン(nouu.me)も
know … 知りたい!
now … 新しいものにコミットしたい!
know u … 対象/相手のことを深く理解したい!
know me … 自分が何を好きなのか知りたい!
脳 … やっぱりAIでしょ!
という想いからつけたのですが、そこに早くも原点回帰するようなプロダクトを作りたいなという思いが高まってきました。2024 年はプロダクトづくりを本格的にしていけるようになればと思っています。
2024年はどうなるか
2023 年は AI の年でした。この流れは止まらないと思っています。GPT-4 を超えるモデルもすぐ出ると思いますし、マルチモーダルモデルは標準になると思います。もう 5 年もしたらロボットがマルチモーダル LLM で動いて、Web Service の UI/UX の最適化も AI エージェントを通じたシミュレーションで行われるのが常識化するではないかなとか想像します。
テクノロジー的に不可避な流れ(「既定路線」)だと思うので、それを前提としたとき何が起きるか。また、その流れを正しく加速するにはなにができるか。
XR 領域(個人的には AR)は伸びるしかないと思っています。すでに一部起きていますが、サイエンスの AI 化なども加速するでしょうし、AI 化の反動として人間への回帰も起きると思っています。物理的に接触できる対象や物理的な場所への価値が高まってきたりもしそうです。
一方、パフォーマンスの圧倒的な向上に対して、計算環境の肥大化や実行速度の不足は問題になると思います。UX 面での改善はありつつ、本質的にはテクノロジーで解決しないといけない課題なので、この領域にも大きなポテンシャルはあると思います。とにかく超高性能で超軽量で超高速な AI がほしい。
そういう世界観になったときには当然存在していないといけないものや、それらの登場を加速することに加担できたらいいなと思っています(もちろん、安全性やリスクは重々考慮した上で!)。
2024年になにをするか
基本的には2023年と大きく変わらず、下記の 3 本柱は継続していきたいと思います。
パラレルワーク … 短期間での最大成果。自分が関与しなくても済むようにになるのが理想。
共通テーマのリサーチ … ちょっとした背伸び。インターンお待ちしています!
プロダクトづくり … いくつかアイデアがあるので追求したい
明らかに自分の時間が足りなくなるので、何かを減らしたりしないといけないかもしれないのですが、楽しく頑張っていきたいです。
さいごに
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