どう書く一橋大国語1現代文2019

2019一橋大学 問題一現代文(評論・約3150字)35分
【筆者】なだ いなだ
1929~2013年。東京生まれ。慶大医学部卒。精神科医、作家。フランス留学後、東京武蔵野病院などを経て国立療養所久里浜病院のアルコール依存治療専門病棟に勤務。1965年『パパのおくりもの』で作家デビュー。著書に『TN君の伝記』『くるいきちがい考』『心の底をのぞいたら』『こころの底に見えたもの』『ふり返る勇気』などがある。本名は堀内 秀(ほりうち・しげる)。ペンネームは、スペイン語の nada y nada(何もなくて、何もない)に由来する。
【出典】『人間、この非人間的なもの』(ちくま文庫1985年)
日本と日本人をめぐる問題を具体例をあげながら問い、「非人間的」といわれる行為の中にひそむ人間性を探る、ユニークな日本人論。(出版社の紹介文より)
【解答例】
問い一(漢字)A=衝動 B=輪郭 C=相場 D=退廃 E=符丁
問い二「自分を人間であることから解放する」とはどういうことか。説明しなさい(三〇字以内)。
〈ポイント〉
・「善悪を越えて、人間のやることは何でも人間的であるとし、それに無限の敬意をはらい続ける」。
・「人間のやることに、人間的でないものは、悪をふくめて、なにもない」。
・「その時まで、私の頭の中には、どちらかといえば、人間を善悪の此岸に立たせようとしたところから出発した、センチメンタルなヒューマニズムしかありませんでした」。
・「私の人間は、そこで、善悪のひもで、がんじがらめにされて立っていた」。
・「人間的という言葉に呪縛されて」いた。
・「人間の悪を非人間的と呼んで、人間から切り離し、自分を人間的と呼んで、それとは無縁なものと見なしてはならない」。
★善悪を越えて、人間のやることは何でも人間的であるとすること。(30字)
問い三「人間とは何か、人間的では何か、という問に、限定的な答をあたえることは不能である。私たちに可能なことは、限りなく問い続けることであり、それに答えることは、新しい問を準備するためでしかない」とあるが、それはなぜか、答えなさい(三〇字以内)。
〈ポイント〉
・「人間は、人間的という言葉の外縁を、無限に拡げつつある」。
・「人間は、そのものが未完」で、「私が関心を持っている人間は完結していない」。
・「人間的という言葉の意味の境界も、閉じられていません」。
・「人間が完結した時、つまり滅亡した時、それを認識する人間も残っていない」。
★滅亡まで人間は未完で、人間的という意味も無限に拡大するから。(30字)
問い四 筆者は「人間、この非人間的なもの」という表現を通して何がいいたかったのか、全体をふまえて答えなさい(五〇字以内)。
・「人間が変化すれば、人間的という言葉の持つ意味も無限にふくらんでいく」から、「人間的という言葉」は「非限定的に」使うべきである。
・しかし、「人間的という言葉は、もはや人間とは切り離されてしまって」いる。
・「人間の悪を非人間的と呼んで、人間から切り離し、自分を人間的と呼んで、それ〔=悪〕とは無縁なものと見なして」いる。
・「人間的とよばれるものは、私たちを呪縛するためにあるのではなく、私たちが、人間の認識を高めるためにだけあるのです」。
・「人間に人間的なものを語らせること」が「人間とは何かを問いかける姿勢」なのである。
・「人間、この非人間的なもの、と私がいうのは、人間をして語らしめれば、私たちが人間的と呼んでいたものを越えて、非人間的と呼んでいたもの〔=たとえば悪〕を語りはじめるであろうことを予告したいからに、ほかなりません」。
・「私が、人間は非人間的だというのは、私たちの人間的という考えが、あまりにもせまく、制限されているものですから、人間のやることは、何でもそれ枠からとび出さざるをえないという意味です」。
★人間的という言葉を非限定的に使って人間の認識を高め、その存在を問いかけていく姿勢が大切だということ。(50字)

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