どう書く一橋大国語3現代文2019
2019一橋大学 問題三現代文(評論・約2500字)30分
【筆者】山口裕之(やまぐち・ひろゆき)
1970年奈良県生まれ。東大文学部卒。徳島大教授。専門はフランス近代哲学(コンディヤック=18世紀の哲学者)、科学哲学、科学認識論(エピステモロジー)。現状の「倫理学」というものに納得できず、「どうして人は自分が正しいと思うことを普遍的な原理だと思い込んで他人にも押し付けたがるのか」という観点から考えている。
【出典】『「大学改革」という病―学問の自由・財政基盤・競争主義から検証する』(明石書店2017年)
「役に立つ学問」という幻想、「純粋な学問」という神話。大学改革における論点を整理し、改革を推進する側と批判する側の根拠や正当性を再考する。「大学とは何か・今後どうあるべきか」を考えるために知っておくべき手がかりがここに。(内容紹介文より)
【解答例】
右の文章を要約しなさい(二〇〇字以内)。
〈ポイント〉
・「ベーシック・サイエンス(基礎科学)」という用語が科学研究に資金をもたらし、今日の「科学」に対するイメージとなった経緯をまとめる。
・自発的に成立した自治的な組合組織に由来するヨーロッパの大学と異なり、アメリカの大学は教会や州政府、大富豪の寄付者によって人為的に設立されたものである。
・だから、アメリカの大学では経営陣にとって都合の悪いことを研究する自由は認められなかった。
・20世紀前半、直接的には社会の役に立つわけではない基礎研究こそが応用研究を準備するので、基礎研究を充実させることは、結局のところ社会のために役に立つという論理が生み出された。
・これは、自由な研究への資金を獲得したい科学者たちが考え出した「神話」であり、実際上の根拠は何もない。
・にもかかわらず、この論理は受け入れられ、われわれが「科学」に対して持つイメージそのものとなった。
★教会や州政府、大富豪の寄付者によって設立されたアメリカの大学では、経営陣に都合の悪い研究をする自由は認められなかった。20世紀前半に、「基礎科学―応用科学」という二分法のもと、基礎研究を充実させることが結局のところ社会のために役立つという論理が形成され、自由な研究への資金の投入を正当化する神話として機能した。これは実際上の根拠は何もないにもかかわらず、今日の科学のイメージとして受け入れられている。(200字)