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彼はさらに若い女性を、彼女は同年代に:新研究が語る“熟年”の愛のカタチ


以下の解説は、2025年1月31日付で PsyPost に掲載された
「Romantic age gaps evolve over time, new psychology research shows」
(執筆:Eric W. Dolan)の記事をもとに構成しています。実際の内容と若干の差異がある可能性がある点、ご了承ください。


1. 基本情報

1.1. タイトル

Romantic age gaps evolve over time, new psychology research shows

1.2. 著者

  • 記事執筆: Eric W. Dolan (PsyPost, 2025年1月31日付)

  • 引用元となる研究論文:
    - “Couples age discrepancies in a large-scale European sample: Evolutionary and sociocultural perspectives”
    - 著者: Jaroslav Gottfried, Anna Ševčíková, Lukas Blinka, Andrea Lambert South
    - 掲載誌: Personal Relationships

1.3. 記事

  • 本記事は学術論文「Couples age discrepancies in a large-scale European sample: Evolutionary and sociocultural perspectives」の内容を紹介。

  • 主題: パートナー間の年齢差が、交際開始のライフステージによってどのように変化するかを大規模国際データから検討。


2. 要約

2.1. 1行要約

欧州など29カ国の大規模調査で、男女とも年齢が高くなるにつれ「パートナー年齢差」が拡大・変化し、男性はより若い女性を、女性は同年代に近い男性を選ぶ傾向が強まるという研究結果を示した。

2.2. 3行要約

  1. 年齢差の傾向は男女で異なり、男性は高齢になるほど相手が若くなる傾向が顕著。

  2. 女性は若い頃は年上男性を選びがちだが、60歳前後になると同年代へとシフトする動きがみられた。

  3. この差異は進化心理学的要因と社会文化的要因が複合的に関与し、特に高齢期では医療やケア負担、余命の差など実際の生活要因も無視できない。

2.3. 400字要約

本記事は、「カップルの年齢差は固定的ではなく、人がどの年齢でパートナーを探すかによって変動する」という研究を紹介している。研究者は29カ国の50歳以上の男女36,000人超のデータから、交際開始時点の年齢を基準にパートナーとの年齢差を分析したところ、男性は年齢が上がるにつれてさらに若い女性との交際を選び、女性は若い時期ほど男性より数歳年上を好むが、60代頃には同年代へと移行する傾向が確認された。これには進化心理学(男性の生殖戦略や女性の資源重視)が影響する一方、社会文化的要因(高齢でのケア負担や性比アンバランス)も作用していると解釈される。記事では今後の研究として、収入や社会的ステータスなどが年齢差選好に与える影響の検討が挙げられている。


2.4. 800字要約

データと方法

  • 研究チームは、SHARE(Survey of Health, Ageing, and Retirement in Europe)から得た50歳以上を対象にした29カ国の大規模サンプル(約36,000人)を解析。

  • フォーカスはパートナーとの年齢差が「いつ交際を始めたか」の年齢とどう関連するか。

  • 長期間一緒にいるカップルでも、実際に交際開始した年齢を遡って算出することで「当時の好み・選好」が推測可能。

主な結果

  1. 男性の動向

    • 全体としては若い頃は3歳ほど下の女性と結ばれるが、中高年で再婚や新たなパートナーを探す場合、その年齢差が拡大していく。60代以降に10歳程度若い相手を選ぶ例が増加。

  2. 女性の動向

    • 若い頃は数歳上の男性を選ぶが、年齢が上がると同年代または少し年下との関係へシフト。60歳前後になると、ほぼ同年齢の男性との結婚や交際が多くなる。

  3. 補足要因

    • 「男性はより若い女性を好む」のみでは説明できない部分もあり、社会的地位や性比アンバランス(特に高齢になるほど男性が少ない)などが影響。女性が「同年代を選ぶ」傾向には、介護リスクや寿命差、再婚市場の実態も関わる。

解釈

  • 進化心理学的視点: 男性の若い女性選好は生殖適応として説明されるが、高齢でもこの傾向が続くのは必ずしも子孫を望むわけではなく、社会的ステータスや魅力を示す行動の可能性も。

  • 社会文化的視点: 女性は長期的に見て「頼れる相手(財政面・健康面)」を求めるが、高齢域に達すると「将来ケアも含め、同世代が安心」という実利的要素が強まる。

結論

年齢差に関わる研究は若年期中心のものが多かったが、中高年層に目を向けると、男女ともにライフステージによりパートナー年齢選好が変化する。既存の進化論的説明だけでなく、社会的・実際的条件(健康・介護・経済など)も絡み合って、実際の年齢差パターンが形成される。


2.5. 1,200字要約

1. 研究の狙いと背景

従来、男性が女性より年下を好む現象、女性が男性より年上を好む現象は進化心理学や社会的要因で説明されてきた。しかし多くの研究は若年サンプルに偏っていた。生涯を通して年齢差選好がどう変化するかは明らかでなかった。そこで本研究は、50歳以上で新たなパートナーを形成する際に生じる年齢差について、国際データから分析し、年齢差と年齢の関係をマクロに探ることを目的とする。

2. デザイン・方法

  • サンプル: SHARE(欧州やイスラエル含む29カ国)の50歳以上の男女約36,000名。

  • 測定: 各自の年齢、パートナーの年齢、交際開始年を取得。

  • 分析: 交際開始時の年齢に注目することで、その年齢層でどの程度年齢差が生じるかを可視化。性別比較や国・地域差を考慮。

3. 主な結果

  1. 男性

    • 若年時は女性との年齢差約3歳ほどが一般的。しかし歳をとるにつれ、再婚や再パートナー形成の際にさらに若い女性と結ばれる割合が増加。60代以降では10歳以上離れたパートナーも珍しくない。

  2. 女性

    • 若いときは年上男性を選びがちだが、年齢を重ねると同年代に近づく。60歳以降では同年代か若干年下の男性との関係が増える。

  3. 背後要因

    • 進化生物学:男性の生殖潜在力や女性の資源重視といった要素

    • 社会文化:高齢になるほど男女の人口比が変化し、女性は選択肢や健康負担を考慮しやすい。

4. 解釈と意義

  • ライフステージ視点の重要性
    過去のパートナー年齢差研究は若年層が中心で、高齢者の実態が捉えきれていなかった。本研究で「男性はより若い相手を求め続ける」「女性は年齢差を縮める」傾向が検証された。

  • 応用: 高齢者向けマッチングサービスや社会福祉政策へのインプリケーションがある。介護負担や経済力、健康状態など複合的に影響し、単純に「男性=若い女性」「女性=年上男性」では説明しきれない多様性を示す。

5. 制限と今後

データは欧州・イスラエル中心で、他の文化圏への一般化は未確立。加えて、実際の選好(理想)ではなく「実際に形成された関係」を扱うため、経済状況や人口動態など外的制約も大きい。今後は縦断的研究や他文化比較、社会経済的地位を加味した分析が期待される。


2.6. 1,600字要約

1. テーマと背景

近年、寿命延伸や離婚・再婚の増加により、中高年層が新たにパートナーを求める機会が拡大。年齢差は恋愛・結婚のダイナミクスを示す重要要素だが、若年サンプル中心の研究が多く、高齢期の年齢差形成については知見不足だった。この記事は、Personal Relationships掲載の研究を紹介し、交際開始年齢がカップルの年齢差にどう影響するかを多国データから検証したものである。

2. 方法とデータ

  • データセット: SHARE(Survey of Health, Ageing, and Retirement in Europe)

    • ヨーロッパ各国+イスラエルの50歳以上36,000人超を対象

    • 現在パートナーありで、関係開始年が特定できるケースのみ採用

  • 分析視点: 現在の夫婦・カップルが「交際開始した時」に何歳だったかを再計算し、その際の二人の年齢差を測定。

  • 変数: 性別、国、健康状態、人口学的要因など制御しつつ、平均的な年齢差の推移を描出。

3. 主な結果

  1. 男性のパターン

    • 若い頃にパートナーを得る場合は数年程度の年齢差が一般的だが、年齢が進むとより若い女性と結ばれる傾向が強化。60代以降で再婚するケースなどでは10歳以上離れる例が増加。

  2. 女性のパターン

    • 若年期は男性より数歳年上を求める傾向があるが、40~50代を境に年齢差が減少し、60歳前後でほぼ同年代かやや年下と組む割合が上昇。

  3. 進化・社会文化両面の説明

    • 進化論:男性が若い女性を選ぶのは生殖適応に基づく一方、加齢しても大幅な年齢差が続くのは生殖以外の社会的地位やステータスが絡む可能性。

    • 社会文化:女性は財政・健康管理など実利要因から、自分と年齢が近い相手を中高年期以降に好むようシフトする。

    • 人口構造:女性が長命なため、同年代か若干年下の男性が比較的多いなど、マーケット要因もあり。

4. 意義と示唆

  1. 年齢差の柔軟性

    • 年齢差は固定的でなく、ライフステージに応じて変化する。特に再婚などでは傾向が顕著。

  2. 高齢者の恋愛観再評価

    • 本研究は高齢期・後期中年期でのパートナー選びを大規模データで明らかにし、単なる進化心理学だけでなく、社会経済や健康、介護負担などの要因が相互作用する複雑さを示す。

  3. 今後の研究課題

    • 本研究は欧州が中心であり、他文化への適用には追加検証が必要。

    • 理想的・空想的な好みより、「実際に形成されたカップル」をベースにしている点は現実的だが、収入・地位などが特定層で顕著な影響を持つ可能性は未解明。

5. 結論

年齢差は男女問わず同じパターンで固定されるわけではなく、高齢期の再婚や新パートナーとの関係において男女で異なる方向に変動する。男性はより若いパートナーを求める傾向が強化され、女性はむしろ同年代に近づく。これは進化論的要因に加え、社会構造(性比、介護、経済力、健康不安など)が密接に絡んだ結果である。高齢者の新たなパートナー選択を理解するうえで、社会政策やマッチングサービスなどへの応用が期待される。

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