紫式部はなぜ源氏物語を書いたのか
「えっ?」
「その、先生はどうして源氏物語を書いたのですか?」
「そうねえ」
紫式部は持っていた筆を止めてしばし考え込んだ。
「まあ、色々あるけど、やっぱり、旦那さんが死んじゃったからかな。」
「え」
飲み込めない弟子が紫式部を覗き込む。
「ん、まあ、話せば長くなるけどね。私のひいお爺さん、結構偉い人だったんよ。学者肌でね。で、だいぶ羽ぶりが良くて、要するにお金持ちだったわけ。でもね、おじいちゃんの代で、その、んふふ、落ち目っていうか、まあ、お金なくなってきちゃったわけね。そ