それは「対話」か「調整」か
東証の市場再編構想が話題になっています。
現在の東証は4つの市場で構成されています。
・東証1部
・東証2部
・マザーズ
・ジャスダック
これを、3つの市場に再編しようという話です。
・プライム市場(グローバル)
・スタンダード市場(中堅)
・グロース市場(スタートアップ)
いまの問題は、東証1部には2100社近くが上場しており、全体の60%を占めているということです。
これほど増えたのは、「東証1部」というブランド力の根強さと、形骸化している退出ルールの2点と言えるでしょう。
驚愕のデータがあります。
東証1部の4割にあたる500社近くは、PBRが1倍を割れているのです。
PBR1倍未満というのは、仮に企業が解散したら、株主には株価を上回るリターンがあるという状態です。
乱暴な言い方をあえてするならば、存在するより解散した方がいいんじゃないの?という企業です。
そんな企業が、トップの東証1部に4割いるというのは、明らかにおかしいわけです。
はい、すぐに再編してください、という話になると思うのですが、これが難しい。権威、プライド、建前、これらが渦巻く仕組みを変えるには時間と労力がかかります。
いまの東証の市場再編への動きをウォッチしていると、危機感しかありません。
時間と労力をかけてやっているのは、関係者との「対話」ではなく「調整」だからです。
「対話」とは、バックキャスティング思考があります。
「調整」とは、フォアキャスティング思考のみです。
バックキャスティングとは、あるべき姿になるために、何をすべきかを考えるというもの。
フォアキャスティングとは、いまの延長で何ができるかを積み上げるというもの。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券が作成した図がわかりやすいです。(写真自体は月刊資本市場より抜粋)
市場再編のあるべき姿は、
『海外の投資家に示せる日本代表』を明確にすることです。
それがどうでしょう?
いまの東証1部企業が希望する場合、一定の条件のもとでプライム市場への上場維持を認める案が示されているといいます。事実上の横滑りを容認する制度です。
これは、落とし所ありきの個々の痛みを最小限にするというファアキャスティングのみの思考です。
図に示されている通り、フォアキャスティングも大事なプロセスです。
バックキャスティングが優れており、フォアキャスティングが駄目という二極論ではありません。
図でいう、バックキャスティングとフォアキャスティングのギャップを埋めるのが「対話」ということです。
いまの市場再編プロセスでは、フォアキャスティングのみの結末しか見えません。
この代償は大きいです。
誰の傷も浅く済ませる日本的やり方は海外マネーを遠ざけ、ガラパゴス化を加速させます。勘違いしてはいけないのは、中国のガラパゴス化とはサイズ感がまったく違うということです。