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日本人サラリーマンも世界を食べる

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【スニーカー文庫《俺のラノベ》コンテスト「笑える話」特別賞入選】 しみじみと面白い。 趣味は料理。外食したものをキッチンで再現して細部を探るのが好き。 外資系サラリーマンだっ…
「日本人サラリーマンも世界を食べる」をマガジンにしました。ここからそれぞれの記事を単品で買うことも…
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2021年2月の記事一覧

微笑みの国の屋台ラーメン

微笑みの国の屋台ラーメン

 タイにダイビング旅行に行ったときのこと。
 プーケットで泊まった安宿の向かいに、いつも夜に店を出している屋台ラーメンの店があった。
 正直、しがない。
 子連れのおばさんが一人でやっている店なのだが、パラソルとかを一生懸命設置している割には客が少ない。
 向かいが大きな中華料理の市場だったのもまずかったのだろう。
 その屋台はいつも閑古鳥が泣いていた。
 子供は我関せずとその辺を走り回り、おばさ

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アメリカの殺人カクテルと絶品ステーキ

アメリカの殺人カクテルと絶品ステーキ

 二〇〇〇年の頃、僕は上司の命令でアメリカの某団体に所属していた。
 簡単にいうと、Windows-Intel支配を排除して、真に自由なPC開発を訴える団体だ。
 正直言って、主義主張に疑問があったし(僕は企業活動に於いては長いものには巻かれた方が安全と思ってる)、集まっているのも今は亡きコンパックとかの各社の暇人だったんだけど、お集まりは楽しかった。
 予算に関してはある程度裁量を認められていた

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フィンランドの車窓から

フィンランドの車窓から

 国際便が世界各地から到着するフィンランドのヘルシンキからタンペレという街までは距離にして二百キロくらいある。
 タンペレまでは国内便の飛行機もあるのだが、電車で移動することも可能だ。
 その時勤めていた北欧系携帯電話メーカーの開発部はタンペレにあったので、東京から飛行機でヘルシンキまで飛んだ後、タンペレまで移動しないといけない。
 いつもは飛行機で移動していたのだが、何しろ二百キロだ。ほとんど弾

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香港の銀糸湯麺

香港の銀糸湯麺

 それは香港返還直前の一九九六年の十一月。
 中国に返還されて香港がグッチャグチャになってしまう前に一度訪れておこうということになった。
 一緒に行ったのは大学の時の友達三人。キャンプ仲間でもあったので気心は知れている。
 羽田を出発して香港に向かう。
 当時はまだ香港の空港は啓徳空港だったから、着陸はめちゃくちゃスリリングだった。ジェット機でビルの谷間を縫うようにして飛ぶ。窓からは隣のビルで働い

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