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ごめんね、キャシー

僕は今、休暇でドイツにきている。

大学生のころ、5年程前に留学していたので、懐古旅行だ。

当時、ブレーメンに住んでいた僕は、街中を歩いていると、たまに声をかけられた。

「ニハオマ、コニチワ、アニョハセヨ」

1度や2度ではない。

最初のうちは良かったのだが、だんだんイライラしてきた。

ウゼエ、ウザすぎる。


ダークな感情が僕を包み込む

ふと、さらに5年前の記憶を思い出した。

それは、同じ高校にいたキャシー(仮名)という女の子のことだ。

キャシーは、カナダ人の両親(たしか)の元に生まれ、日本で育った。見た目は白人であるが、日本語ネイティブだ。

キャシーと僕は、そんなにめっちゃ仲が良かった訳ではなく、廊下でおはようとか言い合うくらいの関係だった。

キャシーとなかよしの、共通の友人がいた。ユリ(仮名)だ。

ユリと僕は仲良しで、よく遊んでいた。

ある日ユリは僕にこんな話をした

ユリ「キャシーめっちゃオモロイ、めっちゃ日本語ネイティブやのに、結構な頻度で小中学生からハローって言われるらしいwww」

たつを「オモロイなwwwwww」

当時、僕らにとっては、キャシーは「超日本語ペラペラ」とかっていう言葉すらおかしく思えるくらいに、ネイティブかつめっちゃ面白い子なのに、何も知らない小中学生から、ハローと言われてるのは、オモロイことだったのである。

そんな高校時代の記憶がふと蘇ってきて、キャシーに土下座したくなった。

キャシー、笑ってごめんよ…

僕はたった1年間だけ、ケバブ屋のオッサンとか、酔っ払い集団とかからニハオマって言われてイライラしてたけど、

キャシーはずっと日本で過ごして、いろんな阿呆からハローって言われたんだろうなと思うと、いかにannoyingかよく分かる。

同じ状況になって初めて、人の痛みを知るんだなと、5年前の僕は思った。

さて、5年経った今、ドイツに来て10日ほど経つ。

ケバブ屋にも行ったし、酔っ払いにもめちゃくちゃたくさん会ったが、

今のところニハオマもコニチワもアニョハセヨも言われてない。

あと7日ほど、なにも言われず過ごせたなら、あの頃に比べてドイツが進んだと考えても良いかもしれない。

日本は、10年前と比べてどうだろうか。

キャシーが今もハローと言われていないことを切に願う。


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