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セリューションの次は培養幹細胞へ

こんにちは。
いつも、僕のnoteを読んでいただき
ありがとうございます。
前回は、聖心美容クリニックでも
積極的に行っているセリューションを使った
豊胸術についてお話ししました。

自分の脂肪組織から幹細胞を分離して抽出し、
注入する脂肪に混ぜて乳房に移植する豊胸術は
脂肪の定着率や安全性の面からも画期的なものだといえます。

本来の乳房のようにやわらかく自然な仕上がりで
効果が持続するといったメリットも多く、
インプラントなどの異物を体内に入れることに
抵抗がある方に適しているといえるのでは
ないでしょうか。

しかし、従来のセリューションの豊胸術には
ひとつ課題がありました。
今回はその課題を克服する「培養幹細胞」を
使った豊胸術についてお話しします。

■少量の脂肪で幹細胞を培養

セリューションで抽出した幹細胞群
(SVF:間質血管細胞群)を使った豊胸術は
脂肪の定着率が高いメリットがあります。

しかし、乳房に注入する脂肪とは別に、
十分な幹細胞を取り出すための脂肪も吸引する
必要があり、その量100cc以上と、
決して少なくありませんでした。

余分な脂肪がたっぷりある女性であれば
よいのですが、胸を大きくしたい方は、
多くの場合、瘦せ型。
幹細胞を抽出する分の脂肪を採取することが
難しく大きな課題でした。

そこに登場したのが、
幹細胞を培養する技術です。
採取した脂肪を専門の培養施設に送り
そこで1ヶ月ほどかけて幹細胞を培養するのです。

施設で培養する過程では
幹細胞だけを増殖します。
そのため、幹細胞を抽出するために必要な
脂肪量はわずか20cc程度。
これであれば、痩せ型の人でも
脂肪由来幹細胞を使った豊胸術が可能になります。

■セリューションか培養幹細胞か

ここまでお話しをすると、
「結局、セリューションがいいの?
それとも培養幹細胞?」と
わからなくなってしまいますよね。

これは、ずっと議論されていたことなのですが、
結論からいえば
僕はどちらでも良いと思っています。

セリューションが培養幹細胞より
優れているわけではないし
劣っているわけでもありません。

セリューションで抽出した幹細胞は、
正確にいえば間質血管細胞群(SVF)です。
皮下脂肪組織から脂肪細胞を取り除いたもので
幹細胞のほか、血管内皮細胞やマクロファージ、
好中球や脂肪前駆細胞などが含まれます。
SVF には抗炎症作用、抗酸化作用、血管新生、
組織修復作用などが備わっており
再生医療に応用されています。
 
一方で、培養幹細胞の場合、
純粋に「幹細胞だけ」です。

では、いろいろなものが含まれているSVFを
入れたほうが脂肪の定着率がよくなるのか?
といったら、一概にそうとはいえません。

世界最高峰の形成外科雑誌PRSでは、
幹細胞は多ければ多いほどいいわけではなく
ある程度以上いったら、生着率は一定になる
という論文を発表しています。

つまり、SVFにせよ幹細胞にせよ、
量がないよりはある方が良いが一定の量があれば
結果は変わらないということです。

このことからも
僕はどちらでもいいと思っていますし、
当院では、どちらも扱っています。

こうして、脂肪由来の幹細胞を使った豊胸手術の
全容は明らかになりつつあり
現在のやり方に落ち着いてきたように思います。

■成長因子やエクソソーム

幹細胞の研究が進むつれ、
さらに明らかになってきたことがあります。

それは、脂肪の生着率を高めるためには、
幹細胞そのものの存在が必ずしも重要
なのではなく、幹細胞から分泌される
様々な成長因子が働くことによる、
ということです。

もうひとつ、幹細胞から分泌されるもので
注目されているのが「エクソソーム」です。
エクソソームとは、細胞から細胞へ
メッセージを伝える機能を持つ
コミュニケーションツールのようなもの。

エクソソームには成長因子も含まれますが、
メッセンジャーRNAやマイクロRNAという
遺伝子情報も内包されており
遺伝情報を細胞に届けてくれます。

このたんぱく質や各種成長因子、エクソソーム
などを多数含む幹細胞を培養した際に生じる
上澄み液のことを、「幹細胞培養上清液」といい
手に入るようになっているのです。
 
そして、この脂肪幹細胞上清液を
乳房に脂肪注入する際に加えることで、
セリューションや培養幹細胞などと
同等の効果が得られるのではないか?
という試みが今、始まっています!

セリューションにせよ、培養幹細胞にせよ、
細胞に幹細胞を混ぜる施術であり
細胞を扱う以上、再生医療法に基づいて、
再生医療等提供計画を提出し
再生医療等委員会の審査をうけ
承認を得なければなりません。
それが、なかなか手間なのです。

しかし、脂肪幹細胞上清液に含まれる成長因子は
たんぱく質ですし、エクソソームは顆粒状の物質
でどちらも細胞を含みません。そのため、
面倒な再生医療法の提供計画は不要です。

そんなところも、
医師にとってはメリットですね。

■幹細胞培養上清液の可能性

幹細胞培養上清液には、
もうひとつメリットがあります。
それは、他人(ドナー)由来の脂肪でも
よいということ。
そのため、幹細胞抽出のために、
余分な脂肪の確保が必要ないのです。
 
脂肪注入しても生着率が悪かった人たちに、
脂肪幹細胞上清液を使用すれば
一定の効果が得られるのではないかと
期待されています。


今回も、ここまでお読みいただき、
ありがとうございます。

病気を治す治療とは違って、美容医療は
健康な人がコンプレックスを解消したり、
クオリティをあげたりするために行う医療です。

ですから、僕は、身体と親和性があり、
できる限り負担が少なく、副作用や合併症が
より少ないものがよいと思っています。

今では、「再生医療」という言葉を
耳にする機会が増え
期待も大きくなっています。

よりよい成果を出すのが医師のつとめです。
これからも、真摯に再生医療に
取り組んでいきたいと思っています。

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