人間の生まれる前と死んだ後の世界
揚子江はチベット高原を水源地とし、
中国大陸を流れ、東シナ海へと注ぐ全長6300kmの大河で、
アジアで最長、世界でも第3位を誇ります。
先日、この揚子江での釣りの様子がテレビで紹介されていました。
揚子江を泳ぐ魚は、自分が大河の中を泳いでいる自覚は毛頭ないですが、
私たち人間もこの揚子江の魚のようなものといえます。
私たちが生まれてから死ぬまでの「人生」を、
仏教では『現在世(現世)』といいます。
それは長くても100年足らずの短い間です。
私たちが認識しているのはこの間だけですが、
お釈迦さまは『現世』に生まれる前、
限りなく生死を繰り返してきた『過去世(前世)』があり、
死んだ後も永遠に生死を続ける『未来世(来世)』があるのだよ、
と説かれており、これを仏教では『三世』といいます。
『三世』とは、『過去世(前世)・現在世(現世)・未来世(来世)』です。
この三世を貫く永遠の生命が、本当の「私」であり、
「私」の歴史は、何億年×何億年よりも永い、無始無終の生命です。
その永遠の生命にあって、今、こうして生を受けている『現世』とは、
ほんのはかなき一瞬であり、
それを浄土真宗の蓮如上人は
『人間はただ電光朝露の、夢幻の間』といわれています。
パッと光って消える稲光、瞬く間に消える朝露のような人生、
ということです。
「そんな前世や来世なんてあるもんか、信じられない」とはねつける人もあるでしょうが、
それはこの世のことしか知らないからです。
前世や来世を知る智恵を持たないからわからないだけです。
滔々と流れる大河に泳ぐ魚に河は見えないように、
この世のことしか分からぬ私たちには自覚はなくとも、
私たちは無限に死に、無限に生まれて来た悠久な生命を持った存在なのです。