雷雨の夜に
天気は確か晴れ予報だったが、ここ最近は2日に1回はゲリラ豪雨が発生、まるで東南アジアにいるみたいな気分になる。気づいたら外が暗くなっていき、やがて大量の雨粒を降らし、悪いことしちゃったねと開き直ってすかさず虹をかけていく。それを見て人々はたちまち喜んでしまう、単純な生き物だ。かく言う自分もその一人で、写真のフォルダを見てみると気づかないうちに虹の写真や豪雨のあとの晴れ空の写真で埋まっている。
そんなこんなで8月半ばに差し掛かっているのだけれども、夏の暑さに惨敗している。おかげで仕事もなにもかもやる気が出ない。そんな毎日がつづく。
その日は、確かにイライラしていた。汗臭いおじさんと背中合わせで電車に乗り、会社の最寄り駅についても人に押しつぶされて電車を降りれず一駅先まで運ばれてしまった。そして無事に会社に遅刻してきたのだが、パソコンを起動すると、頑張って作った今日締め切りのパワポのデータが消失していたことに気付く。ここで我慢できずに精一杯叫んでしまった。数秒後、取り返しのつかないことをしてしまったと気づく。上司と周りの同僚が今まで見たことないものを見てしまったといわんばかりの顔で自分を見てくる。
その数秒後、上司に会議室に呼ばれる。会議室では、その叫びに至るまでの経緯を細かく聞かれた後、「もう社会人なんだから、その辺はしっかりしなさい。」とお母さんみたいな一言をかけられた。会議室の窓に映る夏の快晴がとても憎かった。
思えば、直近は自分の思い通りにならないことばかりだ。やっと付き合えた彼女にも別れを告げられて、会社の都合で行きたくない部署への異動を強いられてこのザマである。
「ぜんぶ思い通りにならねぇかな~」
こう願っていい権利すら持てるほど努力していない自分にさらに落胆。
会社帰り、案の定怪しい雲で空が暗くなっていた。この際、思いっきり雨を降らしてくれ、その後で虹を見せてくれ、と思った。数分もしないうちに雷と大雨が降ってきた。
急いでタクシーで帰ってきた。
こんな嫌なことがあって天気が悪い日には、UberEatsをしてしまおう。
雷雨が激しいなかお家までお食事を届けてくれる配達員には、感謝してもしきれないという思いで「注文を確定」ボタンを押した。何を頼んだかは覚えていないが、とてもお腹が減っていたので早くきて欲しいと思っていた。
数分後、近くで大きな雷が鳴った。
数分後にサイレン。
頼んだチャーハンと餃子は届かなかった。
あーあ全部思い通りにいかないな。